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ダニエル7章  DFO

 

ダニエル7章

 

  ネブカデネザルが、B.C.561年頃に死んだ後、3人のあまり重要でないバビロン人の王が短期間支配した。(「歴史:バビロン・タイムライン」参照) 6年後のB.C.555年に、ネプカデネサルの息子ナボニダスが即位した。しかしながら、ナボニダスは引退して、バビロンの外、北アラビアのオアシスにほとんどの時住んでいた。そして、彼の最初に生まれた息子ベルシャザルこそ、実際に政府と軍隊を動かしていた者であり、父の代わりに帝国を治めた。

  ダニエルは、ネプカデネザルの統治の間、非常に高い地位に就いていたものの、その後に続くバビロンの王たちの統治の時代には、自分の影響力と権力の多くを失い、ベルシャザルの統治の間もなおベルシャザルのために働いていたものの、それほど有力ではなかったようだ。(ダニエル8:1,27) B.C.538年のベルシャザルは、自分の統治の終わりに、彼が生きていたことさえ、他の者から思い起こされなくてはならないほどであった。(ダニエル5:10−13)

  ダニエルがこの驚くべき夢を見たのは、ベルシャザルの統治の最初の年であり、それは554年頃であった。

  ダニエル7章は非常に重要な章である。それには、過去の帝国だけではなく、たった今起こっていることや、今ほとんど起こりかけている事に関する預言が含まれている。だからあなたは、この章全部、ほとんどすべての言葉を理解する必要がある。

 

  1.バビロンの王ベルシャザルの元年に、ダニエルは床にあって夢を見、また脳中に幻を得たので、彼はその夢をしるして、その事の大意を述べた。

 

  ダニエル2章で、神は、美しい像としての人間の世界の諸政府のビジョンを与えられた。神は、ダニエルの身の安全のために、そのようにネプカデネサルに表されたのである。彼に、全真相を告げることを必ずしも望んでおられなかったからである! しかしながらダニエルは、人間の政府に対する神の見方を明らかにされるのに、信頼に値する者だったので、神が人間の政府のビジョンをご自分の預言者ダニエルに与えられた時、それを残酷で飢えきった恐ろしい獣として描かれた!

 

  2.ダニエルは述べて言った、「わたしは、夜の幻のうちに見た。見よ、天の四方からの風が大海をかきたてると、  「四方からの風」は、神が目に見える世界を操作して、ご自分の御心を行うために使われる天の霊的軍勢らしい。「いと高き者が人間の国を治めて、自分の意のままに、これを人に与えられる」(ダニエル4:25)

  「海」は、大衆つまり世界の人々の集まりを現している。「あなたの見た水‥‥は、あらゆる民族、群衆、国民、国語である。」(黙示録17:15)

 

  3.四つの大きな獣が、海からあがってきた。その形は、おのおの異なり、

 

  ダニエル7:17にこう説明されている、「この4つの大きな獣は、地に起こらんとする4人の王である。」そして23節には、「第四の獣は、地上の第四の国である。」とある。これらの節でわかるように、ここに述べられている獣は、王と王国、またはそのどちらかの象徴である。

  これらの4つの大きな獣とそれに加えて10本の角(7節を参照)は、ダニエル2章の像で描かれた5つの大きな帝国と一致している。

  2章と同じように、このビジョンは当時、支配権を握っていた世界帝国バビロンから始まっている。このビジョンがその前に存在した2つの帝国(エジプトとアッシリア)を含んでいたなら、ダニエルは合計6つの帝国を見たであろう。−−そして、この章の7,8,20,24節が説明しているように、10本の角は、終わりの時に団結して最終的なアンチキリストの帝国を形成する10人の王であり、合計7つの大きな世界帝国があると説明している。(黙示録13:1、17:9,10も参照)

 

  4.第一のものはししのようで、わしの翼をもっていたが、わたしが見ているとその翼は抜き取られ、また地から起こされて、人のように2本の足で立たせられ、人の心が与えられた。

 

  ダニエルのビジョンで最初に起こった獣(王国)は、ライオンである。エレミヤ4:7には、パビロンは、神がご自分の民の罪のゆえに彼らを裁くために使われるライオンとして描かれている。(エレミヤ19:15と21:7も参照)もしあなたが帝国を獣として表すなら、ライオンは最も堂々としていて、百獣の王である!

  その「翼は抜き取られ」とは、高ぶったネプカデネザルが低くされ、7年間獣として卑しいものとされたということを表している。(ダニエル4:29−33参照) また、「人の心が与えられた」とは、後に彼が救われたことを示している。(ダニエル4:34-37、エゼキエル36:26)

 

  5.見よ、第二の獣は熊のようであった。これは、そのからだの一方をあげ、その口の歯の間に、3本の肋骨(ろっこつ)をくわえていたが、これに向かって、「起き上がって、多くの肉を食らえ」と言う声があった。

 

  ダニエル2章のように、このビジョンの成就は、世界史の中にある。私たちは、バビロンに続く王国がメデア・ペルシャであったことを歴史から知っているので、この熊がメデア・ペルシャを表していることがわかる。

  「これは、そのからだの一方を上げ」: この熊のからだの一方の側がもう一方の側よりも少しばかり高かった。なぜなら、ペルシャ人は、メデア人よりも強かったからである。ダリヨス王のもとでメデア人はパビロンを征服したが、そのしばらく後に支配したのは、ペルシャ王クロスであり、ペルシャは最も強力であった。これはまた、ダニエル2:32の像の両腕として描かれている。そして、ペルシャが二重王国の内で強い方の腕である。(「歴史:メデア・ベルシャ」参照)(ダニエル8:3,20も参照)

  熊が口にくわえていた「3本の肋骨」は、メデア・ペルシャによって征服された(食い尽くされた)、以前の3つの世界帝国、すなわちエジプト、アッシリア、バビロン帝国の残存であった。

 

  6.その後、わたしが見たのは、ひょうのような獣で、その背には、鳥の翼が4つあった。またこの獣には、4つの頭があり、主権が与えられた。

 

  「ひょう」は、メデア・ベルシャに続く王国を表していて、アレキサンダー大王のギリシャ帝国の事である。そして、「翼が4つあった」は、ギリシャがわずか10年の内に、文明世界をほとんど奇跡的に、素早く支配したことを表している。この獣が「4つの頭」を持っていたのは、アレキサンダーが死んだ後、指導的立場にあった彼の4人の将軍の間で、彼の帝国が4つに分裂したからである。これらの分裂した4つの王国は、主にエジプト、アッシリア、マケドニア(ギリシャ)、トルコであった.(ダニエル8:8,21,22)

  「主権が与えられた」: 神は、ギリシャ人の戦いや世界征服の背後におられた。「いと高き者が人間の国を治めて、自分の意のままに、これを人に与えられる。」(ダニエル4:25)(ダニエル8:21も参照)

 

  7.その後、わたしが夜のまぼろしの内に見た第4の獣は、おそろしく、ものすごい、非常に強いもので、大きな鉄の歯があり、食らい、かつ噛み砕いて、その残りを足で踏みつけた。これは、その前に出たすべての獣と違って十の角を持っていた。

 

  「大きな鉄の歯」を持ったこの獣は、ダニエル2章の像の鉄のすね(足)と一致する。そしてそれは、勿論ローマである。4つのすべての獣の中でどれが最悪の獣だったか?−−4番目の獣である。この獣はとても異なっていたので、ダニエルはその獣の名前を思いつくことができなかった。彼は、この獣をこの地上の特定の獣と比べることもできなかった。それは、世界にかつて存在してきたどんな獣とも異なっていて、真の怪物であった!

  「食らい、かっ噛み砕いて、その残りを足で踏みつけた」−−つまり、この非常に恐ろしくひどい顔つきをした獣が、このビジョンの前に出てくる3つの帝国の残留を食い尽くしたという意味である!−−ローマは、地上を支配した帝国の内で最も恐ろしく、ひどく、強力だった! そして非常に残酷だった! それは、鉄の(きぴしい)支配によって世界を治め、すべての国々や、ローマに反対しようとするどんな者をも滅ぽした。

  「これは、その前に出たすペての獣と違って」ローマは異なっていた! ローマ帝国ほど強力で、広い領土を治めた世界帝国は他になかった。それは、また最も冷酷であった。以前の古代の帝国で、ローマが迫害したほど、神の民を多数迫害した帝国は一つもなかった。ローマは、確かに反キリストであった!(「歴史:ローマ」参照)

  「十の角を持っていた」十の角は、最後の十の王国(諸国または強国)である。この十の王国は、ローマ帝国が分裂したものから発展したのであり、あの像の10本の足の指と全く同じである。ダニエル2章は、アンチキリストとアンチキリストの王国がローマのすねから出てくる10本の足の指(王国)だということを示す以外には、それらのことについて述べることを省いている。ダニエル7章でもまた、10本の角をもったアンチキリストの王国は、ローマの獣からそのまま出ていて、終わりの時のこれらの10人の王たちは、もともと、古代ローマ帝国の跡であるヨーロッパから出ていることを示している。だからこの獣は、古代ローマの描写であるだけではなくて、アンチキリストの王国がどのようなものになるかについての描写でもある。

  この章において、主は、古代ローマと10本の角が頭にはえている獣(アンチキリスト帝国)を、2つの異なる獣としては描いておらず、アンチキリスト帝国がローマの獣の一部であるとして描いている。言い替えると、その獣から生えている10本の角は、かなりの時がたった後の、古いローマ帝国の文字通りの復興だということである。(「歴史:アンチキリスト帝国」参照)

 

  8.わたしが、その角を注意して見ていると、その中にまた一つの小さい角が出てきたが、この小さい角のために、さきの角のうち3つがその根から抜け落ちた。見よ、この小さい角には、人の目のような目があり、また大きな事を語る口があった。

 

  この10本の後から出てきた11番目の「小さい角」は、終わりの時に起こる若い世界的勢力を表している。そしてそれは、今日の共産主義帝国の他にはあり得ない。共産主義は、1917年にロシアで力を握った。そして今、世界の大きな部分を支配している!(24節参照)  しかしながら、11番目の角は王国としてだけではなくて、特定の王または独裁者として語られている。他の角は、国々や大国や政府や諸国の象徴であったが、この角は明らかにその指導者である男の性格を持っている。

  「小さい角」は、ロシアの共産主義であり、アンチキリスト帝国の始まりである。−−しかし、「人の目のような目」と「大きな事を語る口」は、この小さな角の究極の成就は、人間であることを示している。−−すなわちアンチキリスト、または黙示録で呼ばれている「獣」である。(黙示録13:3−5、ダニエル7:11,20,25,11:36)

  「その根から抜け落ちた」:11番目の角(アンチキリスト)は、ヨーロッパの10の重要な国の間から出てきて、その内の3つの国を打ち倒した。それによって明らかに、それらの国すべてに対して権力を得るのである。(20節参照)(「歴史:アンチキリストの帝国」参照)

 

  9.わたしが見ていると、もろもろのみ座が★投げ出されて、日の老いたる者が座しておられた。その衣は、雪のように白く、頭の毛は、混じりもののない羊の毛のようであった。そのみ座は、火の炎であり、その車輪は燃える火であった。

(★‥‥日本語聖書とは異なっています.)

 

  「日の老いたる者が座しておられた」: これは、神が天国で、み座に座っておられる姿の描写である。(エゼキエル1:26,27、黙示録4:2,3も参照)神は、「その車輪は燃える火」であるものを持っておられ、預言者エゼキエルもそれを見た。(エゼキエル1:15,16、10:2参照)これらの「車輪」は、神の宇宙の乗り物であり、最も高き方の戦車であり、「空飛ぶ円盤」である。そして神は、これに乗って宇宙のあちこちへ行かれるのである。

  「もろもろのみ座が投げ出されて」: ここでは、もろもろのみ座(10人の王だけではなく、地上のすべての様々な政府や王座や支配者)が投げ出され(滅ぽされ)、神が裁きを行うために座っておられるのがわかる。

 

  10.彼の前から、ひと筋の火の流れが出てきた。彼に仕える者は千々、彼の前にはべる者は万々、審判を行う者はその席に着き、数々の書き物が開かれた。

 

  「ひと筋の火の流れ」: 私は、それがただ、神の偉大な力と神の威厳と、凄まじさを見せるためだと思う!(エゼキエル1:27とヘブル12:29も参照)

  「万々」(1万の1万倍): そこには文字通り何十億人もの人々がいることだろう。だが、多分100.000.000ぐらいが親愛なる預言者に思いつくことのできる、あるいは表現することのできる最大の数字だったのだろう。

  「彼の前にはべる」(英語では、「彼の前に立っている」とある): 彼は座っておられた(9節) 彼らは立っていた! 私たちは、王のいる前では座ってはいけないことになっているのだ。

 

  「審判を行う者はその席につき」: これは、至福千年の終わりに行なわれる大いなる白い御座の裁きのように聞こえるが、そうではない!−−なぜならこの裁きは、獣(アンチキリスト)と10人の王が打ち倒され、神の王国の聖徒たちが世界と神の王国を支配し始める時に、起こるからである! その時には、いくつかの裁きが行なわれ、いくつかの書き物もその時に開かれる! 誰が書き物を開いて」人々を裁くのか?−−聖徒たちである! 神と聖徒である!−−あなたや私である!(22節を参照)

  これは、聖徒たちがイエスによって裁かれる、キリストの裁きのみ座のように聞こえるか?(2コリント5:10参照)いや違う!−−なぜならそれは、ラブチャーの後の小羊の婚宴の時に起こるからである。だからその裁きは、至福千年の終わりに、救われていない者たちのために行なわれる大いなる白い御座の裁きでも、またラプチャーのすぐ後で聖徒たちが裁かれる、キリストの裁きの御座でもない。この裁きはいつ起こるのか?−−ハルマゲドンの後、つまり至福千年が始まる時である。私たちは、これを聖徒の裁きのみ座と呼んでいる。−−聖徒たちが、世界を裁くためにその席につく時である!

 

  11.わたしは、その角の語る大いなる言葉の声がするので見ていたが、わたしが見ている間にその獣は殺され、そのからだは損なわれて、燃える火に投げ入れられた。

 

  獣は滅ぼされ、「燃える火に投げ入れられた。」(2テサロニケ1:7,8、2:8、イザヤ66:16参照) この裁きは、至福千年の終わりの大いなる白い御座の裁きが起こるずっと前に起こっているのである。これは、至福千年の始まりの時に聖徒たちが、患難期の生存者たちを裁いているところである。(「命を助けられた者たち」を参照)生き延びて、神の王国においても生きている人々は、裁かれ、以前の行いに従って至福千年における彼らの場所が決められるであろう。神の王国には、裁きの本や人々の経歴の記録があり、裁きを行うであろう。また、裁きつかさや王たちがいるであろう!(「記録の書」は、黙示録20:12を参照。黙示録1:6、2:26,27、5:10、20:4も参照)

  アンチキリストや偽預言者などのように生き残らなかった者たちの中にさえ、この時に、すなわち至福千年が始まったばかりの時に裁きを受ける者がいる。そして私たちは、彼らと彼らの軍勢をどうするかに関して、決断を下すであろう。

 「その獣」、アンチキリストは、ハルマゲドンの戦いの終わりで殺され、彼は、「燃える火」すなわち火の池に投げ込まれるであろう。それは、私たちが世界を裁くために席につく、聖徒の裁きの御座の時である。私たちは、恐怖の統治の期間に、私たちをむごく迫害し、殺したこの獣を裁くであろう。そして彼は、ついに当然の報いを受けるのである!−−そして、まっすぐ地獄の火に送られる! 彼の体は、滅ぼされるのである。(2ベテロ2:12参照)

 

  12.その他の獣は、その主権を奪われたが、その命は、時と季節の来るまで延ばされた。

 

  「その他の獣」: 最も重要な獣は、世界の諸帝国である。より重要ではない獣は、国々の政府である。世界のほとんどすべての人間の政府は、何かの種類の獣であった。

  「その命は‥‥延ばされた」神は、王国や政府を一掃されたが、それらの国々の人々は一掃されていなかった。人々はなお、そこにいる。地の表には、なお国々が存在するであろう。(「命を助けられた者たち」参照) しかし彼ら自身の「主権」、彼ら自身の支配する力は、彼らから「奪われる」であろう。(14節参照)

 

  13.わたしはまた、夜の幻のうちに見ていると、見よ、人の子のような者が天の雲に乗ってきて、日の老いたる者のもとに来るとその前に導かれた。

 

  この節を、マルコ13:26.27、ルカ21:27、黙示録1:7で述べられているラブチャーで、「人の子」が「天の雲に乗って」来るのと混同させないように気をつけなさい。ラプチャーは、この節に描かれている光景の75日前に起こるからである。ラプチャーの時、イエスは「雲に乗って」地上にやって来るが、ここでは、彼は天国で神のみ座の前に導かれる。

  これは2つの別個の人格である:「人の子」はイエス・キリストでしかあり得ない。そして、「日の老いたる者」は父なる神である。(詩篇90:2.93:2.102:24参照)これは、神が息子をもっておられるという旧約聖書の中で最も目立った証拠の一つである!−−そして新約聖書で、頻繁に「人の子」としてあげられているイエスが、その方なのである!(箴言30:4も参照)

 

  14.彼に主権と光栄と国とを賜い、諸民、諸族、諸国語の者を彼に仕えさせた。その主権は、永遠の主権であって、なくなることがなく、その国は滅びることがない。

 

  父なる神は、息子イエスに、「主権」を、つまり権威を与えられた!−−そして「国」を与えられた:「この世の国は、われらの主とそのキリストとの国となった。主は、世々限りなく支配なさるであろう!」(黙示録11:15)(ダニエル2:44も参照)

 「諸民、諸族、諸国語の者を、彼に仕えさせた。」 至福千年においても、なお国々や異なった国民や言語が存在するであろう。しかし、彼ら自身の独立した政府としての権力は取り去られるだろう。神とイエス・キリストとあなたと私、すなわち救われた聖徒たちが彼らの支配者、かつ王となるのである!

 

  15.そこで、われダニエル、わがうちなる霊は憂え、わが悩中の幻はわたしを悩ましたので、

 

  あなたは、このすべてを理解しようとするのは骨が折れると思うかね? ダニエルは、彼の霊と体と頭が、悩みで満ちたのだ! 聖書の中には、預言者が強力な霊的経験のゆえに、倒れたり、気を失ったりしたことが沢山書いてある!(ダニエル8:27.10:8.9.27参照)

 

  16.わたしは、そこに立っている者のひとりに近寄って、このすべての事の真意を尋ねた。するとその者は、わたしにこの事の解き明かしを告げ知らせた。

 

 「そこに立っている者」で、彼にそれを説明する権威をもっていた者は誰か? 疑いもなく天使か、この世を去った聖徒、つまり神の天のメッセンジャーのひとりである。(黙示録22:8,9参照)さて、以下がそのビジョンに対するこの天使、または聖徒の解き明かしである。

 

  17.この4つの大きな獣は、地に起こらんとする4人の王である。

 

  これらの節は、ここで述べられている獣が、王の象徴であることを示している。−−あるいは、文字通り王国のことである。(23節も参照)これらの獣は、世界の超大国である−−今日の超大国はど大きくはないが、その時代の状況からすると、それらの国は超大国であり、地上において最も力があり、その時代の文明世界を支配していたのである!

 

  18.しかしついには、いと高き者の聖徒が国を受け、永遠にその国を保って、世々限りなく続く!

 

  私たち神の聖徒は、ハルマゲドンの戦いでアンチキリストとその軍隊を超自然的に打ち負かすであろう!(黙示録19:11-15,19参照) 私たちがただ座って、楽々と世界を受け取るというのではない。私たちは戦いによって、それを手に入れなければならないだろう! 私たちは戦って、腕力と暴力によって王国を、悪魔とアンチキリストとそのすべての悪人たちから奪わなければならないのである!(ダニエル2:34,45も参照)

 

 19.そこでわたしは、さらに第四の獣の真意を知ろうとした。この獣は、他の獣と異なって、はなはだ恐ろしく、その歯は鉄、その爪は青桐であって、食らい、かつ噛み砕いて、その残りを足で踏みつけた。

 

  彼は、このビジョン全体を2節から14節までですでに説明したが、再び17節から22節で、実際に、繰り返し説明している。それから天使または聖徒(16節参照)が、23節から27節まで、彼にそれを説明している。あなたが必ず正しく理解し、誤って理解しないようにするために、神はこれを3度繰り返しておられるのである!−−だから、それは重要であるに違いない!

  ダニエルにとって、本当に訳が分からず、それでいて興味をそそられた、最も困難で、複雑な部分は第4の獣の事であった。(7節に解釈あり)

 

  20.この獣の頭には、十の角があったが、その他に一つの角が出てきたので、この角のために三つの角が抜け落ちた。この角には目があり、また大きな事を語る口があって、その形はその同類のものよりも大きく見えた。

 

  「大きく」(「stout」):これは、古い英語の言葉で、当時非常に強いということを意味したのである。つまり他のものよりもはるかに強いということだ。その角は、初め小さな角だったが、小さい角のままではいなかった。大きくなっていって、同類のものよりも大きく、強くなったのだ。

  その角は出てきて、どんどん大きくなっていって、とうとう非常に重要な角となったのだ。11番目の角であるロシアは、他の10本のどの角よりも、はるかに強い。事実、ヨーロッパの主要な10カ国を全部合わせたよりも強く、容易に彼らを征服することができるのだ。

  現在、もしロシアがヨーロッパを侵略するなら、それはアメリカとの核戦争にエスカレートする可能性がかなりある。だが多くのNATO(北大西洋条約機構)の国々は今、社会主義国であるか、あるいは強い社会主義の野党があるかのどちらかであり、NATOから手を引いて、アメリカの基地やミサイルを追い出すことを真剣に考慮している。−−この同盟諸国はまた、ヨーロッパに対するアメリカの最近の貿易戦争によって、アメリカとの関係にひずみが生じている!−−また同様に、狂気の核軍備競争を減らすことに関して、アメリカがロシアと真面目に協議することをけんか腰で拒否することによっても、ひずみが生じている。このAC(アンチキリスト)と共産主義の征服は、ACの統治の一番最後まで起こらないという可能性がある。その頃には、ヨーロッパは非常に反アメリカになっていることもありうる。そしてACによって、たくらまれ、おそらく外からロシアの勢力に助力を受けた社会主義革命が、合衆国に支配された現在のヨーロッパの政府を打ち倒すであろう。それは諸政府が自ら進んでACに加わるためである。(黙示録17:12,13参照)

  「この角のために、3つの角が抜けた」:(24節参照)

  「十の角があったが」:(7節の解釈を参照)(注:ダニエル2章は、アンチキリストの王国に関する詳細には触れていないが、私たちは、像の10本の足の指が、ダニエル7章と黙示録17章にある10本の角とぴったり同じであることを知っている。)

 

  21.私が見ていると、この角は聖徒と戦って、彼らに勝ったが

 

  ここでアンチキリストが戦争を行い、「日の老いたる者が来る」まで(22節参照)聖徒に「勝つ」のがわかる。これでわかるように、キリストの来臨はアンチキリストの統治の後に起こり、神の教会は今日の多くの教会が信じていることに反して、大いなる患難を通るのである。(「ラプチャー:患難期後」参照)

  これらの「聖徒」はユダヤ人ではない。聖書の教師の中にはそう信じさせる者たちもいるがそうではないのだ。これらの聖徒は、真の教会、クリスチャンであり、18節、22節、27節で神の王国を支配し治める「聖徒」と同じである。旧約聖書のヘブル語の「聖徒」という言葉は、「別に取っておかれたもの、別のもの、聖なるもの」という意味であり、新約聖書のギリシャ語の「聖徒」の意味とぴったり同じである。またそれは、はっきりと救われたクリスチャン、真の教会のことを言っている。教会(「エクレシア」)というのは、「呼び出された者、別に分けられた者」という意味である。(「ユダヤ人:選ばれた民?」参照)

 

  22.ついに日の老いたる者が来て、いと高き者の聖徒のために審判をおこなった。そしてその時がきて、この聖徒たちは国を受けた。

 

  明確に「聖徒のために審判をおこなった。」注:(ここでは「聖徒に審判が任された」という意味)と天使は言っている! 聖徒たちが裁きつかさになるのか?−−そうだ! 神の言葉には、「わたしたちは御使たちを裁く者である」と語っている!(1コリント6:3) 聖徒による世界の裁きは、至福千年の初めに始まる。その時から、私たちは裁きつかさになる。

  「そしてその時がきて、この聖徒たちは国を受けた!」 これもまた、至福千年の初めに起こるのだ。しかしながら、それは実際にはハルマゲドンの戦いによって始まるのである。なぜなら敵軍の王国の軍隊をまず先に滅ぼさないと、その王国を所有することができないからだ。(18節参照)

 

  23.彼はこう言った、F第4の獣は、地上の第四の国である。これはすべての国と異なって、全世界を併合し、これを踏みつけ、かっ打ち砕く。

 

  この節で天使は、この時に説明するつもりだった分だけ、ダニエルに説明した。これは、ダニエルの時代のためではなかったからである。だから彼は、それ以上知る必要はなかったのである。ダニエルは、チャンネルにすぎず、預言者にすぎなかったのである。そして彼は、たとえ理解できなくとも、それを記録し、紙に書くことになっていた。

  今彼は、ここで第4の獣と呼ばれている最後の獣(ローマ)のことを語っている。第4と呼ばれているのは、実際には歴史においてエジプトから数えて第6の獣であるものの、パビロンから数えて4番目だったからだ。(3節参照)

  それは、「全世界を併合し、これを踏みつけ、かつ打ち砕く」−−全世界である! さて、覚えておきなさい。彼は昔のローマのことだけではなく、終わりの時の復興したローマ帝国、すなわちアンチキリストの帝国のことをも語っているのだ。そしてそれは、古代ローマよりもはるかに大きな世界帝国を支配するであろう!(黙示録13:7参照)

 

  24.十の角は、この国から起こる十人の王である。その後にまたひとりの王が起こる。彼は、先の者と異なり、かつ三人の王を倒す。

 

  「その後にまたひとりの王が起こる。」「小さな角」は明白に、ヨーロッパの10の王国がすでに存在している時に、ひとつの国として起こる! ヨーロッパで起こった最も新しい国、または政府の種類は実際には何だろうか? 共産主義ロシアである! 勿論ロシアそのものはずっと前から存在しているが、共産主義のソビエト連邦は、新しい政府、新しい角である!−−そしてそれは、アンチキリスト政府の始まりである!

 「彼は、先の者と異なり」−−先の者というのは、最初の10の国である。ロシアは、その国々と異なっているか? それは、ヨーロッパの10の政府と異なったタイプの政府があるだろうか?−−完全に異なっている! 共産主義は、新しいものであり、完全に新しいタイプの政府である。

 「かつ、その三人の王を倒す」: イギリス、ドイツ、フランスは、ヨーロッパの中で親米派で最強の3つの王国(国)である。もし彼が、力づくで彼らを従わせる(「倒す」)なら、ヨーロッパの他の角(国)は、彼に低抗することもできず、おそらくこれらの国々もまた服従し、自分たちの権力を彼に渡すだろう!(20節と「アンチキリストの王国」参照)

 

  25.彼は、いと高き者に敵して言葉を出し、かつ、いと高き者の聖徒を悩ます。彼はまた、時と律法とを変えようと望む。聖徒は、ひと時とふた時と半時の間、彼の手に渡される。

 

 「彼は、いと高き者に敵して言葉を出し」(ダニエル7:8参照)

 「聖徒を悩ます」:(ダニユル12:7c参照)

 「時と律法とを変えようと望む」共産主義者が最初、ロシアを手に入れた時、彼らは1週間7日制を捨てることを望んだ。それは、明らかに時を規定し、はかるための宗教の律法的習慣だったからである。彼らは、即座に1週間13日制を設定したが、人々は一日の休みも取らないで、それはど多くの日数を続けて働くことができなかった。そして彼らは、国民から1週間7日制に戻す事を余儀なくされた。そこにも、アンチキリストが成功したとは書いていない。ただ、「時と律法とを変えようと望む」とあるだけである。

 「ひと時とふた時と半年の間」: 私たちが引き続き、学習を進めるにつれ、あなたはこれが、大いなる患難の期間の長さの描写だというのがわかるだろう。すなわちそれは、3年半(ダニエル9:27)、42ヵ月(黙示録11:2;13:5)、1260日(黙示録11:3,12:6)、黙示録12:14 にもまた「ひと時」(1年)「とふた時」(2年)「と半時」(半年)とあり、それを足すと3年半になる。

 

  26.しかし審判が行なわれ、彼の主権は奪われて、永遠に滅び、絶やされ、

 

  「しかし審判が行なわれ!」−−誰がする審判か?−−私たち、つまり聖徒の行うさばきの御座である!「彼の主権は奪われて」(英語では、「彼らは(神の子供たち)は彼の主権を奪い」とある)−−アンチキリストの主権、すなわち彼の世界帝国の主権が奪われるのである。−−「永遠に滅び、絶やされ」(ダニエル2:35参照)

  私たちは、悪鬼的で堕落した、アンチキリストの絶対的な崇拝者を一人残らず、くまなく探し出して見つけ、彼らを滅ぼすであろう。彼らは、全く救いがたい者たちだからである!(黙示録19:21参照)

 

  27.国と主権と全天下の国々の権威とは、いと高き者の聖徒たる民に与えられる。彼らの国は、永遠の国であって、諸国の者は皆彼らに仕え、かつ従う。

 

  「いと高き者の聖徒たる民」 これには3つの解釈がある。最初は、これは同じことを言っていて、「民」が聖徒だという解釈である。

  あるいは、「聖徒の内の、かの人々」、すなわち黙示録7:4−8と14:1−5の14万4千人、つまり勝者であるエリート階級、完全に征服した者のことを言っているのかもしれない。−−彼らが救われた唯一の者というのではなく、偉大な権威をもつ、特別の投人、特に主に従わず、仕事を行わなかった他の教会クリスチャンとは別の者、彼らよりも地位の高い者ということかもしれない。(「14万4千人」参照)

  だが、また多分それを、聖徒の友人にも当てはめることができるだろう。つまり私たちと友達になり、私たちを助け、かくまい、食物を与え、患難期の間、アンチキリストと戦った反アンチキリストたちである。(「反アンチキリストたち」と「命を助けられた者」参照)

  私たちは、おそらく毎月の管理や、世界を運営していくのに必要なすべての小さな仕事を、私たちの友人、すなわち、「聖徒の民」に与えたいと思うだろう!−−聖徒たちを助ける友好的な人々である! さて、あなたはこれを受け入れなくてもよい。これは、理論上の解釈だが、彼らは、私たちの民である!

 

  28.その事は、ここで終わった。われダニエルは、これを思いまわして、非常に悩み、顔色も変わった。しかしわたしは、この事を心に留めた。」

 

  「これを思いまわして、非常に悩み」: 思い回すというのは、あれこれ考えることである。だからダニエルがあれこれ考えることで、深く悩んだのだ。彼が明らかにそのビジョンを理解しなかったからである。(23節の解釈を参照)

  何百年もの間、教会人は、これらの獣やいろいろな事柄が一体何のことなのか、理解できなかった。だがついに、今の終末の時にあって、主はそれを私たちに明らかにして下さったのだ! 今、私たちは知っている! そしてそれは、私たちが終末に住んでいるというもう一つの証拠である!(ダニエル12:9参照)

  「わたしは、この事を心にとめた」ダニエルは、このビジョンを個人的に自分の心の中に留めておいた。彼は、ダニエル2章の像の時にしたようには、このビジョンを王にあえて話さなかった。なぜなら、王はそれが好きではなかっただろうからである!−−だが私たちは、好きだ!

 

以下は、このクラスで使われているML引用句の参照箇所です:

lNTRO (2175:105) VS.1 (346:1; 2172:42,44; 346:2; 1486:5) VS.2 (346:7,8) VS.3 (346:6,3; 1486:13) VS.4 (346:9; 1486:7) VS.5 (346:11-13; 2172:5) VS.6 (346;15; 693:95) VS.7 (346:17; 2172:45,47; 1486;14; 2172:45-47, 52,28; 346:18; 1520:24; 2176; 346:22; 2172:50) VS.8 (346:23,25; 1486:23; 346:25; 2172:117; 2174:120,121,123) VS.9 (2175:1,5; 2172:120; 79:3; 346:37; 2174:122) VS.10 (2172:120,121; 2175:51,8,47; 2172:122; 2175:6,7) VS.11 (346:31,37,38; 2172:123; 2175:53,55; 2176:49)  VS.12 (BOF pg.427; 2175:57; FT223:57; 2172;124) VS.13 (346:42) VS.14 (2175;62,57,58; 2172;124) VS.15 (2175:84) VS.16 (2175:91) VS.17 (2175;95; 346:6; 2174:5) VS.18 (2175:96; 2176:54) VS.19  (1486:11; BOF pg.367; 2176:2,4) VS.20 (2018:2; 1486:20; 346;26,27; 2176:42,43; 2172:31) VS.22 (346:30; 2175:52,54;2176:45) VS.23 (2175:50; 2176:3,55) VS.24(2174:107; 2176:56,57; 1904:24) VS.25 (2176:60,61) VS.26 (346:44; 2176:64,65) VS.27 (64;13,17,20; 2176:77,78) VS.28 (346:30,53; 1486:5)