クリスチャン・ダイジェスト

提 供

1巻9号−−1993年4月 DFO

 

優れた仕事への情熱

−−良きリーダーシップの鍵

トム・ピータースとナンシー・オースティン共著の本からの抜粋

(ニューヨーク:ランダムハウス社、1985年)

 

 

本書はリーダーシップとその役割について書かれています。この中で模範として挙げている、ビジネス界の一流リーダー達は、自己の経営哲学を頑固なまでに貫き、それに関しては一歩も譲りませんが、同時に部下のことを深く気にかけ、尊重しています。

  官営・民営、あるいは企業の大小に拘らず、際立った業績を上げ、しかもそれを長期間に渡って維持するには二つの方法しかないと、私達は考えています。顧客への並々ならぬ心づかいと、絶えずイノベート(刷新または革新)していくことです。

 

MBWA:歩き回る経営法

  あらゆる類の会社や企業と共に働く際に、私達は繰り返し、次のポイントを強調してきました。それは簡単に言うと、経営不振の第一因は、単純に、経営陣が社員や顧客とのつながりを失うことにあるということです。しかし、「つながり」というのは、コンピューターのプリントアウトや、全国のあらゆる都市で見られるような、暗い会議室で延々とオーバーヘッド・プロジェクターで映し出されるものを通して生まれるのではありません。つながりを持つというのは、実際に心に感じられる形で情報を得ることです。

 

「日々現実に接する」

  病院の滅菌装置や手術用品の製造会社キャッスルでは、週に3回、重役全員のデスクに、朝、縦13cm、横18cmほどの黄色い紙が届きます。「日々現実に接する」というタイトルの下には、過去6週間に同社から新しい器具を購入した顧客の名前と電話番号のリストがあります。(さらに良いことに電話番号は、その器具を実際に使用している人の番号です。) やるべき事はその社内メモにすべて書いてあります。「顧客に、当社の製品に満足してもらっているかどうか尋ねること。」

  この目的は3つあります。顧客が自分達にとって大切な存在であるのを知ってもらうため、問題が大きくなって顧客に苛立たしい思いをさせる前に発見するため、経営陣に、販売員と顧客に接することこそ、現実の世界であることを日々思い起こさせるためです。

 

イノベーション

  イノベーション(革新)とは、新しいアイディアに関心を寄せることです。

  「ナイーブリスニング」とは、私達の造語で、先入観や弁解がましい態度を持たずに自社製品のユーザー、つまり顧客に耳を傾けるという意味です。この事について、様々な研究が続けられていますが、ほとんど誰もが口を揃えて、「ユーザーの意見から、成功する新しいアイデアが生まれる」と言っています。(3M社はこれを少しひねって重要なポイントを付け加えています。つまり、彼らのアイデアは、ユーザーの苦情に対応するために考え出されたものも少なくないということです。) あなたは、これらの新しいアイデアに直接(MBWAを通して)耳を傾け、それについて行動を開始するでしょうか?何の偏見も持たずに聞いているでしょうか?(例えば、自社のサービスや製品について、自分は顧客よりも十分精通していると思っていても、顧客の意見のほうをより重視しているかということです。)

 

苦情は、絶好の機会になり得る

  会社には2種類あります。一つは、最も典型的なもので、苦情を何とか乗り越えなくてはならない病気と考え、その痛みを素早く忘却の彼方に捨ててしまおうとする会社で、もう一つは、IBMがその顕著な例ですが、苦情を魅力的な絶好の機会と見ている会社です。「苦情を楽しむ」というIBMの考え方の裏にある理論は、この小売部門の重役の言葉によく表われています。「1件の苦情を受ける毎に覚えておくべきことがある。それは、怒っていてもわざわざ苦情を言ってこない客が他に50人はいるということだ。」

  苦情に対する、不注意な反応の仕方をさらにあげてみましょう。それは、「これは、例外的な問題だ。」と決めつけることです。確かに、苦情はどれも、特異なケースのように思えますが、その反面、この分野に関して様々な企業と共に取り組み、自分達でもささやかな事業を営んでいる私達の経験からすれば、例外的な苦情などというものは、存在しません。電話でぞんざいに応対していたという苦情が来れば、その日は「たぐい稀なほど忙しい日」だったからだとさっさと言い訳をすることもできますが、「たぐい稀なほど忙しい日」が沢山ある確率は非常に高く(おそらく99%)、一見例外ケースと思えるこの苦情も、氷山の一角に過ぎないのです。

  いつも驚かされるのですが、苦情が来た後、こちらから誠実なおわびの電話を1本かけるだけで、苦情の主は、自分が大切に扱われていると感じるのです。そんな時だけ大切に扱われているように感じさせるべきではありませんが(常にそうであるべきなのです)、確かにその効果があります。

 

聞いてよかった!

  トッド・フレイザー[仮名]は、ごく平凡な事業を営んでいます。配管業です。支店は40店ほどで、市場は停滞気味にもかかわらず、ここ数年で利益が5割も増加しました。割増し料金さえ課せるのす。その秘密は何でしょうか?

  数年前、トッドは、「この業界で最高のサービスを誇る会社になる」決意をし、最高のサービスとは何かを探ろうと、40人の支店長達に助言を求めました。賢明な考えです。少なくとも、当時はそう思いました。支店長達が提出した意見はどれもなかなか良いアイデアだと思ったので、トッドはすべて実行しました。しかし、長いこと待てど暮らせど、何事も起こりません。

  2年後、ついにトッドは我慢の限界に達しました。その時、あるアイデアが浮かび、彼はありったけのエネルギーを使ってそれを実行し始めました。顧客回りをして、顧客の要望や不満を尋ねたのです。忍耐強く、まる一年間、すべての支店の顧客を回りました。「良い」客も、「悪い」客も一人残らずです。(今ではトッドは、そんな当り前の事を、前に一度もやらなかったことが信じられないくらいだと言っています。)

  トッドが助言を求めた支店長達は、顧客とあまり接触がなかったことがわかりました。中には5年間も、一人として顧客を訪ねたことのない支店長もいたのです! 結果は、画期的でした。トッド・フレイザーは、顧客の要望を「何の先入観もなく」聞くという希にみる礼儀を見せました。そこで、顧客は自分の要望を告げ、トッドはそれに対して行動に出たのです。その結果、彼の事業に大変革が起こりました。トッドはその過程について、こう語っています。「顧客から見た最高のサービスこそ、重要なんだ。どうしてこの事に長いこと気づかなかったのだろう。」

 

クリーチの原則

  1984年秋、クリーチ将軍は、米空軍戦術司令部の司令官を退任する際に、以下にあげる15項目の組織原則を出版しました。

  1.一連の原則や方針を持つこと。全体的な分割禁止テーマと目的を持つ。

  2.統一目標を掲げる。それは、乗組員から士官まで、どの階級においても言えることである。目標の数は少数にとどめ、明らかに達成可能なもの、すなわち大半の者が達成者となるものにすること。

  3.様々なランクや部門での生産性を測る。但し、その統計報告書の作成に追われるようになってはいけない。

  4.様々なランクや部門でリーダーを養成する。同時に、以下を求めること。つまり、「最も活発な所にリーダーを立てよ。リーダー達は部下を支え、導くべきであって、その逆であってはならない。」

  5.責任に釣り合う権威を与えて、責任感を植え付けること。将軍いわく、「権威が伴うなら、分割禁止99%は責任を引き受ける。権威がない仕事を引き受けるのに私自身が消極的なのに、部下にそれをどうして要求できようか?」

  6.可能な場合は、部内コンテストを行なう。「成功には手柄」が鍵である。その結果、熱意はかなり高まる。「自分の部隊が、何ヵ月も何ヵ月もビリだと報告したい者はいない。」

  7.各人に誇りを持たせる。チャレンジと機会を各自に提供すること。

  8.プロ意識をもって働く環境を作る。

  9.頻繁な訓練とカウンセル、質疑応答などを使って、教育、教育、教育あるのみ。

  10.絶えずコミュニケーションし続けること。形式的な階級組織に依存してはならない。幾つか下のランクの人々とコミュニケーションすること。それも頻繁に。

  11.組織的訓練と忠誠心を創り出すこと。これは極めて重大だが、率先性をくじくことになるので、率先性に報いるため、具体的な手段を使う必要がある。

  12.達成したら、全員が報酬に預かるようにする。すべての仕事を有意義なものとすること。どの分野でも、優れた仕事には報酬を与える。

  13.改善する。個人及び組織としての価値に目覚めさせる。楽観的な組織にすること。絶え間なく変化している環境を提供する。何よりも、「リーダーとは単なる記録係でも執事でもない。新しく、より良いものを創り出す責任がある。」

  14.実現させる。どの階級においても、活発なリーダーシップが鍵となる。ダイナミックな火花を起こすと同時に、詳細に取り組んで実現に至らせるのもリーダーの責任である。

  15.長続きさせること。

 

楽しみと賞賛

  私達には秘密の仮説があると何度か述べてきました。その仮説とは、経営学大学院(あるいは、ビジネススクール、実務学校、何でもその類のもの)は、まるでその入口に、「ここに入る者は誰も、二度と微笑むことはない。ビジネスや教育などは、恐ろしく真剣なものである!」という言葉が、大きく太い字で刻まれた巨大な石の門柱がそびえたっているかのようだ、ということです。これに反して、実際に成功した人々は楽しむ人達であり、熱意が素晴らしい結果を生んだのを、私達は幾度となく見てきました。

  小さな電子技術会社で、15人の部下がいる経理部の部長が言いました。「大騒ぎするに限ります。少なくとも毎週1回は、何かを祝う理由を見つける習慣がつきました。誰かの誕生日でもいいですが、出来れば、仕事で何か達成できたと言うのがいいですね。そういう機会を探すのが私達もうまくなりました。別に、祝いに、高級レストランで食事をしなくてもいいのです。1箱のドーナツでもいい。するとうまくいくんですよ! 職場の士気が3カ月でぐっと向上しました。」

  一体、賞品として何が妥当でしょうか? ボーナスはどんな役割を果たすでしょうか? コンテストが有意義で、主催者が誠実であれば、人はTシャツ1枚の為にさえ、何ヵ月も1日18時間働き続ける事ができるのです。その反面、多額の賞金がかかると、ひどい分裂をもたらします。ささやかな賞品や、少額のお金、しかもチーム全員に同じ(現金であれ、何であれ)賞品を出す事が、最も効果的なようです。

 

思いやり

  昔、思いやるとはどんな事かについて、素晴らしいスピーチをした人がいました。それは、陸軍第101空挺部隊の元司令官、故メルビン・ザイス中将です。以下は、その軍幕僚養成大学でのスピーチであり、私達はこれがこの話題について最も優れたスピーチだと考えています。

  「私は諸君に訓戒の言葉を長々と述べるのはやめよう。ただ一つの忠告について詳しく述べたい。この忠告は、私が与えることのできる他のいかなる忠告よりも、諸君を立派なリーダー及び司令官とすることにより役に立ち、また諸君により大きな満足と自信をもたらし、しかも出世に導くことができる。際立った人格も、高度なテクニックもいらない。諸君の誰もが出来ることだ。その忠告とは、思いやりを持つことである。

  自分に思いやりがあるかどうか、どうやってわかるだろうか? 一つには、諸君が気にかけているなら、下級士官や兵士達に耳を傾けるだろう。さて、耳を傾けるとは、大勢の士官がやって来たように、兵士に向かって、『年は幾つか? どこの出身だ?何年所属しているのか? よろしい、次。』などと言った、偉そうなたわ言ではない。そんなものはたわ言である。私が言っているのはそんな事ではない。私は耳を傾けることについて話している…耳を傾けることである。下級の兵士達はわざわざ君の前に出て来て、すべてがおかしいなどと告げることはしないからだ。きっとためらうことだろう。その兵士にうまくいっているかと尋ねて、相手が肩をすくめるようなら、うまくいってはいない。返事に熱がこもっていないなら、何かがおかしいのだ。その場合、もう少し深く掘り下げてみるべきである。」

 

  委員会やスタッフ、報告書や規則などに頼っていては、企業経営はやっていけません。何が何でも、人とのつながりに戻らなくてはいけないのです。もっと人に頼り始める必要があります。すなわち、人の確固たる決意や率先性、気迫、強い関心、熱意、賞賛、そして愛に頼るのです。

  たった今、自分のカレンダーを見て下さい。人や品質、イノベーション、サービスといった面において、あなたは自分の公言した優先順序に従って生活していますか? 何か皆で祝いましたか? 不必要な規則や書類を少なくとも一つは削除しましたか? 顧客の苦情や問い合わせに応じましたか? 夜中の2時に積荷作業をしている従業員に差入れを持って行きましたか? 以上のどれもしていないなら、あなたはつながりを失っています。

 

まず自分を客観的に見る

  自分の語る価値観や信条にそぐわない行動を取るリスクを減らすにはどうしたらいいでしょうか?最初のステップ(常にこれが最初のステップです)は、自分の時間の過ごし方を正直かつ批判的に評価することです。この主題は、この本のすべての章に出てくる大切なものです。ここで再度述べているのも、コーチすること(シェパディング)は、言葉ではなく、行動だからです。あなたの行動は自分のチームに確実に影響しています。あなたにとって本当に大切なものは何かが彼らにはわかるのです。自分の言動が一致しない事柄で、最もささいな事を探してみましょう。(一番ささいな事が、実は最も大切なのです。) 例えば、会社で品質について話しておきながら、工場に出向いた時には、在庫の量を 調べることに大半の時間を割いてはいませんか? 自分の日程表を見て、何が自分にとって大切な事なのかをしっかり判断して下さい。好むと好まざるとにかかわらず、それこそ最も偽らざる唯一の判断の基準なのです。理由(改めて言いますが、これは、リーダーシップに関する事全体において絶対に必要不可欠です)は、人々はあなたが「言う」事よりも「する」事を信じ、まねるのであって、あなたの行動が自分のチームや部下に影響するのです。と言うのも、彼らは皆、あなたを観察しているからです。

 

コーチの役目

  (編集者注:以下のセクションには、「コーチ」または「コーチする」という言葉がよく使われていますが、私達にとってより意味をなすように、それらの言葉を、「シェパード」や「シェパディング」に変えて読んで下さい。)

 

  あなたの会社にはリーダーがいますか? 「Further Up the Organisation」の著者、ロバート・タウンセンドは、「フォーチュン誌の会社ランキング上位1000社に入らないすべての会社の重役」にあてた手紙で、このような質問をしています。「自分の会社の取締役はリーダーだろうか、と自問して下さい。」 あなたの会社には、真の意味での「リーダー」がいるでしょうか?(5ページ参照)

 

リーダーとリーダーでない人

  リーダー:一人一人の能力を最大限に引き出そうとする。問題を解決し、アドバイスを与える。応援団長的存在。

  リーダーでない人:隠れた存在−−スタッフに命令を下し、彼らがそれを遂行することを期待する。

 

  リーダー:MBWA(歩き回っての経営法)をしている。

  リーダーでない人:MBWAをしない。

 

  リーダー:つきあいやすい。

  リーダーでない人:ブルーカラー族(生産現場の労働者)といると居心地悪く感じる。

 

  リーダー:よく耳を傾ける。

  リーダーでない人:よく話す。

 

  リーダー:公平。

  リーダーでない人:経営陣には公平だが、あとの人間は搾取する。

 

  リーダー:謙虚。

  リーダーでない人:横柄。

 

  リーダー:反対意見を出されても怒らない。

  リーダーでない人:反対意見を出されると怒る。

 

  リーダー:部下の名前を覚えている。

  リーダーでない人:部下の名前を知らない。

 

  リーダー:しばしば自分で責めを負う。

  リーダーでない人:その反対。

 

  リーダー:業績を他人の手柄とする。

  リーダーでない人:業績を自分の手柄とし、優れた人間が不足しているとこぼす。

 

  リーダー:仕事のことや、従業員のことをよく知っている。

  リーダーでない人:彼らと一度も会ったこともない。

 

  リーダー:自分の間違いをいさぎよく認める。他の人がその間違いを認めた時には慰める。

  リーダーでない人:絶対に間違いを犯さない。他人を責め、間違いの張本人を発見しようと魔女狩りをする。

 

  リーダー:失敗は学ぶ為の良い機会と考える。

  リーダーでない人:失敗を罰すべき罪と考える。

 

  これで読者の皆さんは、西欧諸国のビジネススクール卒業者よりもリーダーやリーダーとしての態度についてよく知っているわけです。

 

 

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良いコーチの特徴

  私達は、セミナーの参加者から、コーチすることについて学びました。以下は参加者の皆さんが述べた、良いコーチ、良いリーダーの特徴です。

 

》部下が全力を尽くすように駆り立ててくれる。

》自ら良き手本となってくれる。

》指示や手順だけでなく、その理由も説明する。

》他の人達に話す前に、意見に磨きをかけるのを助けてくれる。

》物事に目的意識を持っている。

》決断を任してくれる。

》気遣ってくれる。

》脚光を浴びることを求めない。

》あきらめ、投げ出すことを許さない。

》特に自分達が新しい事を学んでいる時、直接指示や助言をくれる。

》共感を持ち、理解してくれる。

》断固としているが、公平である。

》自分自身の問題や困難な状況はたいてい自分で解決させ、しかも自分を支えてくれる。

》自分の状態を知らせてくれる。

》熱心に耳を傾けてくれる。

》部下の意見を勝手に解釈しない。

》話しやすい。

》必ず約束を守る。

》目標達成に集中させてくれる。

》他の誰にも劣らず、または誰よりも懸命に働く。

》謙虚である。

》育て上げた管理職を誇りに思っている。

》功績を与えるべき人に与える。

》MBWAを実践している。

》「だから言っただろう。」とは決して言わない。

》こちらの間違いを皆のいない所で正してくれる。

》絶対に権力をひけらかすことがない。

》いつも率直である。

》少なくとも2回はチャンスをくれる。

》誰でも喜んで話に行ける雰囲気がある。

》わかりやすい言葉を使ってくれる。

》過去の不和を水に流してくれる。

》忠誠心を駆り立ててくれる。

》こちらのアイデアを心から聞きたがり、それを実行してくれる。

》本人に期限を決めさせてくれる。

》成功したら祝ってくれる。

》偏見がなく、正直である。

》悪い知らせも隠さない。

》討議に備える十分な時間をくれる。

》熱意がある。

》最後までやり遂げる。

》忍耐がある。

》部下の技術を「伸ばす」ことを望んでいる。

》話し合いの場で、うわの空にならず、しっかり自分に関心を向けてくれる。

》ユーモアのセンスがある。

》意見の相違は、皆の前ではなく、個別に解決する。

》安心感を与える。

》自信を持たせてくれる。

》「私は」ではなく、「我々は」と言う。

》懸命に働く甲斐があるようにしてくれる。

》嫌なことでも、穏やかに話してくれる。

》勇気がある。

》訓練に力を入れてくれる。

》重大局面に直面しても、どんと構えている。

》全員が関わるようにしてくれる。

》部下が成功することを期待してくれる。

》楽観的。

》プレッシャーがかかったり、目まぐるしい変化があってもうまく仕事を進めてくれる。

》その仕事ぶりについて、職場の人々から良い評判がある。

》仕事に精通している。

》タフだが優しい。

》自分達に出来ると確信してくれる。

》達成可能な目標を定めてくれる。

》自身の理念や方針について話してくれる。

》強い切迫感を持っている。

》部下達の個性を大切にしてくれる。

》こちらの期待を上回るレベルで考え、運営してくれる。

》業界一の会社にしたいと思っている。

》必要な時に必ずいてくれる。

》仕事を楽しんでいる。

》部下達と一緒に過ごすことが好きである。

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リーダーの役割

  優秀なコーチは、メンバー自身も知らなかった程、最大限にその人の能力を引き伸ばし、それでいて、その限界以上のものまで求めることはしません。と言うのも、コーチは、そのメンバーを成功させることを最大の関心事としており、一旦能力を伸ばして、沢山の成功を収めるようになれば、その勢いと情熱にのって、さらに多くの業績を収めることができると知っているからです。

  ある一流会社の重役が私に言いました。「リーダーの役割とはビジョンを提示する事であって、仕事をしろとせきたてる事ではありません。リーダーはしもべとしての役割を負っています。部下達を支え、しっかりガードしてやらないといけない。それには理解と信用、そして愛ある環境が不可欠です。」

  ダグラス・マッカーサー将軍の父は、アメリカ南北戦争の英雄であり、将軍に劣らぬ栄誉を受けた人ですが、ダグラス将軍は、その父から学んだ中でも最も際立った事は、「部下が遂行できないような命令は絶対に出すな。」だったと言っています。最大の損失は、部下の能力以上のものを押しつけることです。ビジネス界の典型的な「むちゃな目標」(あまりにも高すぎ、非現実的で、到達不可能な目標)を立てると、人々はたいてい、ぎょっとしてしまうものです。ただ盲目的に目標を高くしてしまうのは、かえって「あきらめムード」を引き起こします。

 

カウンセリング

  最高の成果をあげられない原因を人々が理解し、それを克服するように導くのが、カウンセリングです。大切なのは、そのために時間を取り、それも、すぐに時間を取ることです。

 

準 備

  カウンセリングのための準備はおもに、自分自身の目から見た主な問題点を明確にすることです。例えば、仕事上の人間関係を改善する、うまくいっていないプロジェクトを軌道にのせる、顧客サービス記録を改善する、など。個人の努力によって向上できるような客観的行動や実質的成果などに焦点をあてて下さい。あいまいな解釈は常に誤解のもとであって、助けになることはほとんどありません。

 

ミーティングの日時を決める

  カウンセリングはいつでも良いわけではなく、よりふさわしい時というものがあります。カウンセリングの約束は絶対に守らなくてはいけません。ミーティングとミーティングの合間に無理に詰め込まないこと。最初の2回は絶対にキャンセルしないこと。自分と相手が何の中断もなしに集中して話し合える時間を選ぶこと。

 

問題点を述べる

  カウンセリングは、まずそれをしたかった理由を手短にかつ率直に述べることで始めます。この時には、ただ話し合いたい事柄があると言うだけで、何が問題かについて同意する必要はありません。また、自分の意見を強く語る時ではありません。一旦話し合いを開始したら、まず耳を傾けましょう。

耳を傾ける

  カウンセリングで最も重要なのは、耳を傾けることです。熱心に聞き入ることにまさるものはありません。いろいろ学ぶことができます。問題の原因は何でしょうか?

 

問題の指摘

  問題に我慢してはいけません。正直に直視し、正すのです。お粗末な仕事を指摘するのは、辛い任務であり、それをしないでおく事がよくありますが、黙って我慢しても、結果はさらに悪くなるだけです。言わないでいると、長くつきまとう深刻な問題のせいで組織全体の意欲が低下するだけでなく、うまくいっていない当人の自信喪失につながり、立ち直ることも不可能同然になるでしょう。行動に出ないこと、迅速に行動しないことの悪い点は、これです。

  (極めて単純なことですが、問題が誰の目にも明らかなのに、それに取り組もうとしないことほど、管理職者の信用を失墜させるものはありません。周囲から、一体あの人[上司]は何を待っているのだろう?」と思うのも当然です。)

 

問題を指摘する目的

  問題を指摘するからと言って、熾烈な争いや衝突、個人攻撃、図らずも敵意むき出しの議論や脅しになる必要は全くありません。この目的は、誰かに冷たく対処したり、いらだったリーダーが誰かにうっぷんを晴らすことではないからです。問題を指摘するのも一種のカウンセリングです。相手があなたの求めていることを理解するなら、解決策や結果は明確であって、解決に近づくわけです。

 

話し合い

  行動に出ると決意したなら、自分の思うところを単刀直入に述べましょう。「時折」、「もしかしたら」、「まあいわゆる」、「ちょっと」という言葉は混乱を招きます。言葉に尊敬と明確さが表われていなくてはならないのです。相手の目をじっと見て、相手の立場になって考えてみましょう。「自分だったら、どのように接してもらいたいだろうか」と。

 

MBWAを行なう

  自分の方針を人々に浸透させるのと、プロジェクトを「管理」することの違いは微妙であり、その区別をつけ、混同せずにやっていくのは楽ではありません。なぜなら、下位の管理職者であろうと会長であろうと、ただ質問しただけで、それが命令、それも絶対命令になってしまうのはいとも簡単だからです。

  以下は、MBWAを成功させるために役立つポイントです。

  (a) 最初にではなく、最後に口を開くこと。

  (b) 「君はどう思うかね?」という質問を意識的に使い、「これやあれをやってみたらどうだ?」と言う言い方は避ける。

  (c) 人々に詳しく話してもらう。そして、話の合間に、「その時にどうしてこれやあれをしなかったんだ?」といった言い方はせず、「それで、君は何をやってみたのかね?」などと言って、話し手が自らの行動を客観的にふり返れるようにする。

  (d) 「購買課は、君の指定した期限通りに部品を揃えたのかい?」などと言って、誰かに対する非難を促すようなことをしない。

  (e) 遠回しに、相手が次のステップを考えつくように導く。例えば、「その場合、試験的に、何をしたらいいと思うかね。」と尋ねる。

  (f) 一旦次のステップが実行された場合、それが管理職者として役に立つと思うなら、何を試したかを自分のところに来て話すか、電話してくれるように頼む。このようにすれば、手早く処理される必要があることを、圧力を与えずに認識させることができる。

 

  結局、要点は、一歩先を行き、自分が出す典型的な質問がどのように聞こえるかをあらかじめ頭に描いてみることです。その質問は純粋な質問であって、相手に考えてもらうのが狙いなのか、それとも、断固とした「忠告」なのか、という具合いにです。これを考えておくだけでも、最初のステップとして非常に役に立ちます。常にこれを心がけている人はあまりいません。たとえそうしても、何気ない質問が、10年キャリアが浅いか、2ランク下の部下達にはどんな度合の響きを持つかを簡単に忘れてしまうのです。

 

頻 度

  MBWAについて心がけるべき最も単純なポイントで、同時に最も実行が難しいのは、頻繁に行うということです。歩き回る習慣がないのなら、それを始めるのは、自分にとっても、また自分が接する人々にとってもある意味で、「恐ろしい」ことでしょう。(これは、下位の管理職者にも、中小企業の経営者にも、フォーチュン誌の上位500社ランキングに入っている会社の会長にもあてはまることです。) 歩き回ることのない人がまれに社員の職場に入り込んで来るのは、たいてい「公式視察」となり、何か月も前から「側近」が準備したもので、経営者が見るのはありのままの状態とは全くかけ離れているのです。MBWAは決して「公式視察」ではありません。じかの接触を通して実情を見極め、戦術を強化することです。耳を傾けるという、分割禁止MBWAで最も必要不可欠な務めは、「公式視察」や「良い顧客だけを選んで訪問」しても、たいした効果はありません。

  文字どおり、「頻繁に」やるべきです。サム・ウォルトンは、合計700店舗以上のウォルマート・デパートを一つ残らず、少なくとも年に1回は訪問するため、週に最低まる3日はその行脚に費やしました。また、それ以外の日も、ウォルマート社のトラックに便乗して、配送センターを回ったり、仕入れ先を訪問することを怠りませんでした。アクロ社のロバート・O・アンダーソンも、代表取締役時代の15年間に、平均で1日に最低800キロ渡り歩いていました。

  率直に言って、私達は、役職につく者は誰でも、(部下の働く場所があちこちに多数あるのなら)少なくとも勤務時間の半分は自分のオフィスから出て、現場にいるべきだと信じています。

 

指令系統を維持する

  率直に言って、目的が何であれ、役職者が歩き回って、2段階か5段階、もしかしたら10段階の役職ランクを通り越して従業員や顧客とじかに接するのは、指令系統を無視することになります。しかし、それをするのは、彼らからじかに話を聞き、彼らをじかに指導するためであり、それが唯一の目的です。ただ、方法は色々あります。

  では、ユナイテッド航空の元会長エド・カールソンの例をあげましょう。経営不振に陥った同航空会社の経営者となったカールソンは、現場回りを始め、詳細に渡って、率直な質問を社員にぶつけました。彼の目標は、前の経営陣が残したお粗末な官僚的経営構造を改革することでした。たいていは、社員達と話しては紙切れにメモを書きつづり、それをポケットにつっこんでいましたが、そのメモは膨大な量になりました。そして、その場で指図することはせず、何を改善しろとも言わず、自分が気に入らないやり方を改めさせることもありませんでした。(安全性にかかわっている場合は例外です。) しかし、彼がしたのは、非常に重要なことでした。すぐに(長くても勤務日5日間の後に)その人達に返答する、それも何かの措置を必ず講じることを約束したのです。向こう6カ月間、対策委員会や研究班を設置して取り組むと言い渡したのではありません。本社の自分のオフィスに戻ると、直ちに行動に出ました。自分が発見したことを、指令系統に知らせたのです。

  カールソンの堂々たる目標とは、指令系統を飛び越えて、じかに、かつ迅速に官僚主義的経営構造の改革に取り組み、自らが皆の間に入っていくことでその意図を明らかにすることでした。(彼はこれを、「視覚に訴える経営法」と呼んでいます) しかし、その改革の実行については、どちらかと言えば従来の、しかし、かなり迅速なやり方で行なったのでした。

  MBWAが効果をあげるには、早急な措置を取る事を約束し、それから、当初約束した期間内にそれが必ずなされるようにしなくてはなりません。しかし、だからと言って、自分がその場で下位の管理職者あるいは従業員に衝動的に命令を下すのは本来の目的から外れており、またすべきではありません。

  改めて言いますが、頻繁にやることが重要です。最初は、指令系統を乱したという非難の声が出ることも覚悟しておかなくてはいけません。あなたの職場での存在(たとえあなたが中級の管理職者であっても)が、最初は非常に違和感を与えるからです。人々はあなたが言っていることに耳をそばだて、その声の抑揚までいろいろ解釈することでしょう。実際にそうなるのです。しかし、自然の成行きとして、訪問を重ねるにつれ、それも少なくなります。じかにあなたと会って話すことで、どんな人物かがわかってくるからです。何度かあなたがやって来た後で、部下の管理職者達も、あなたが指令系統を空洞化しようとしているのではないと悟るのです。

  情熱は、派手に表わす必要はありません。ごく普通の、日々の情熱こそ、優秀なリーダーの要因です。歩き回ることによって経営していくつもりなら、確かにこれが必要です。皆の前に出るのは勇気がいります。ごく普通の人間である自分が、安全なオフィスから出てくるのですから。外に出ることは、勇気を出してわざわざするだけの価値があることだと信じなければなりません。

  優れた仕事をしたいという純粋な情熱を抱いていて、それに基づいて行動しているなら、堂々と立てるものです。人々の目をまっすぐ見つめることができ、また、実情をしっかりと見ることでしょう。そして、英雄達が育ち、アイデアが生まれ、それが実現されるのを目にします。足取りも軽くなるでしょう。奮闘し、気づかい、そして、他の人達とも分かち合えるものがあるからです。

"A PASSION FOR EXCELLENCE--The Leadership Difference"--JAPANESE.

 

 

 

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