Mountain Streams

水晶の流れ 16

明日への希望を与え、心を新たにする、現代人へのメッセージ

 

 

ドン・キホーテ

−−気違い十字軍戦士

ファーザー・ダビデ

 

  ラ・マンチャのドン・キホーテ、滑稽な気違い十字軍ヒーローは、ユーモアとペーソスにあふれた風刺的人物だった。放浪を続けるこの時代錯誤の騎士は、まだ騎士道時代にいるものと信じ込んでいた。鍋のかぶとを頭にかぶり、つぎはぎだらけのよろいを身にまとうドン・キホーテは、老いぼれ馬にさっそうとまたがって旅をした。おかしなロバに乗りながら、ぶつぶつ抗議する小太りの「従者」サンチョ・パンサを従えて。風車を巨人と思い込んで決闘したり、古い宿屋を城だと錯覚し、そこの「不幸な貴婦人」を救おうとするという具合に、馬鹿馬鹿しい「偉業」に熱中する主人の身の安全を、サンチョ・パンサは真剣に案じていた! この愛すべきドン・キホーテは、痴呆症と誇大妄想により少々風変わりではあったが、非常に高潔で心の優しい善人だったのだ。

  ドン・キホーテは、その生みの親であるセルバンテスの波乱に満ちた人生から生まれた架空の人物とも言える。スペイン人で、若い頃から理想に燃えていたセルバンテスだが、姉妹や姪、妻、愛人、娘など、女たちを扶養するため、職を転々とし、戦争から戦争へと渡り歩き、戦争や夫婦間の問題により家計は苦しくなるばかりであった。借金が払えず何度も投獄され、「ドン・キホーテ」も1603年53才の時に牢獄で書かれたのである。セルバンテスはこの作品によって名声を博することもなく、ほとんど不面目とも言える人生を送って、貧困の内に死んだのだ!

  しかしながら、セルバンテスは落ちこぼれた聖徒のような人物であったに違いない。アルジェリアで5年間捕虜になった時、アルジェの統治者はセルバンテスが共にいる限り、自分は不死身であり、町々も安全だと公言したのだった! 名誉をかけての違法の決闘を行なったことがもとで、法王の枢機卿の秘書としてローマで何年間か亡命生活も味わった。当時の権力組織とはしばしば衝突したものの、彼は敬虔なカトリック教徒だと考えられていた! まるでドン・キホーテのようだ!

  今、この本は、最初でしかも最高の現代文学とされており、聖書を除けば、他のどの本よりも多くの言語に翻訳されている! 事実、最初の英訳版が出版されたのが1612年で、有名な欽定英訳聖書が出版されたわずか一年後である! 十字軍遠征はずっと昔に終わっていたが、セルバンテスの故国スペインを皮切りに、「ドン・キホーテ」は、人生の意味と目的、真理の本質とその現実性、判断の相対性、人格の価値と深さを求める十字軍精神をよみがえらせたのだ。それは全編を通じて、表面的な外見や経験を超えて、より深い意味と、あらゆる面での人間の弱さを探究している。

  「ドン・キホーテ」は映画化さえされた。「ラ・マンチャの男」や「アドベンチャー・オブ・ドン・キホーテ」などである。後者をテレビで見ていたのだが、映画が終わりに近づいた頃、私達は正気に戻って死の床にいるドン・キホーテに対する、彼を慕う人達の反応に、突然はっとさせられた。哀れな若い女性が悲しげに、ドン・キホーテにこう尋ねるのである。「あなたはあんなに素晴らしくって、善人で、詩的であるというのに、気が狂っていたなんて信じられないわ。」 ドン・キホーテは弱々しく、「賢い狂気は、愚かな正気にまさるからだろう!」と答えた。私達は突然、この主題がいかに知恵にあふれているかの裏付けを主から受け取った。今から紹介する詩の最初の数連を受け取ったのだ。その夜に、主はその残り全部も与えて下さった。

  私達はまた「アドルフ・ヒトラーの死」というひどい映画も見た。それによって、二人の狂人の人生の大きな違いを思わずにはいられなかった。善人と悪人、愛された者と憎まれた者の違いである。しかし、悪人の方は世間の人々からは正気の人間だと長く考えられていたが、善人の方はいつも気が狂っていると思われていた!わかるだろうか。それは、誰が誰のことを気が狂っていると言っているかによるのである!

  しかし、ドン・キホーテ、ハメルンの笛吹き、ラスプーチン、モーゼ、まぬけのサイモン(英国の伝承童謡の主人公)、ドストエフスキーの「白痴」、イエス、使徒パウロ、そしてあなたと私達のように、良い事をしようとした風変わりな人間は、とても正直で、思いやりある狂人なのだ!

 

彼は空想の世界に生きていた

彼以外のすべてが狂っている世界に

彼は狂気の世界に生きていた

彼だけが自由な世界に!

 

彼は狂気の世界に生きていた

彼だけが正気の世界に

人に喜びと嬉しさもたらしたのに

人は彼に苦悩ばかり与えた!

 

彼は狂気の世界に生きていた

彼だけが賢い世界に

人は悲しみの世界に生きてたが

その悲しみは、実は愚かなことだった!

 

狂っていることで幸せなら

実は狂気は知恵あること

正気でいて悲しいなら

賢いことは愚かなこと!

 

ああ、狂気の世界を私におくれ

喜んでいるのが、狂っていることなら!

ただ正気で悲しいだけよりも

私は狂って、幸せでいたい

 

愚かなことが、喜びなら

賢いことは愚かなことだ!

正気でいて、悲しいなら

私の頭は混乱してしまう!

 

知恵が無駄なものなら

ああ、私に喜びと共に苦しみをおくれ

悲しく、正気でいるよりは

やはりその方がずっといい

雨の中で歌うように

歌うことで、喜びをもたらすなら

そして知恵が悲しみをもたらすだけなら

私は正気でいるより、狂っていたい!

 

人は私達の善は悪だと言う

歌っても無駄だと

しかし私は、人の知恵は狂気だと言おう

私は愚痴るよりも、歌っていたい!

 

人は私達の善は狂気だと言う

私達は富と名声を求めるべきだと!

しかし、彼らの正気とは悲しんでいること

とても多くの苦悩をもたらす!

 

ああ、私に狂気の世界をおくれ!

雨の中で歌う歌をおくれ!

人は正気と悲しみにしがみついていればいい!

私は狂っていても、喜んでいたい!

 

狂っているのは、彼らの世界!

異常なのは、彼らのほう!

正気で悲しみ、悩むより

私は陽気で喜んでいたい

 

狂っているのは、彼らの世界!

異常なのは、彼らのほう!

ドン・キホーテの希望、愛、喜び、陽気さは

人の悲しみや苦悩よりもずっと良い

 

だから狂気が喜びであり

正気が、悲しみと苦悩なら

それなら、ああ、私の喜びが狂気となり

私が再び、狂人となるように!

 

ダビデの言葉は何と狂っていることか!

彼は狂っていると人は言う!

だが私は正気で闇に迷うより

狂って救われるほうがいい!

 

だから私にドン・キホーテの喜びをおくれ!

正気でいるより喜びがほしいから!

だが私は、狂っているのはそっちだと言おう

悲しみと苦悩を望むなんて

 

人は狂気に満ちた世界に生きている

ドン・キホーテこそ正気だった!

ドン・キホーテには喜びがあった

人の悲しみや苦悩にもかかわらず

桁世界は暴力と狂気で満ちている

残虐、異常、狂ったことばかり

私の喜びとこの世の悲しみ、どちらを望むのか?

私の至福か、この世の苦悩か?

 

だから夢を見ているなら、このまま見させてくれ!

ああ、私を夢の内に漂わせよ!

悲鳴をあげているより、夢見ていたい!

この世の悲鳴よりも、夢がほしい!

 

私達に喜びの内にダンスさせよ!

ああ、雨の中で踊らせておくれ!

私は悲しむよりも狂っていたい

狂っていても、喜んでいたい!

 

うぬぼれた賢い正気のスペイン王よりは

私は年老いたドン・キホーテでいたい!

ドン・キホーテは少しボケていたものの

幸せだった。そいつは確かだ!

 

彼は自分が牧場に住んでいて

立派な騎士だと思っていた!

忠実なお供のサンチョがいてくれたので

緊張も重圧も彼には無縁だった

 

だからドン・キホーテの狂気の世界をおくれ!

狂っていた彼の世界を!

悲しみよりも狂っているほうがいい

正気であるよりも、喜んでいたいから!

 

この狂気には終わりがないと人は言う!

だが私は、人の苦しみには終わりがないと言おう!

私は楽しく喜んでいたい

正気であっても、悲しんでいるよりは

 

狂っている時間はないと言うのか?

急がないと電車に乗れないから?

あなたが奴隷のようにあくせく働いている間

私は自由で楽しんでいたい!

 

だから、このラ・マンチャの男を私におくれ

彼の幸せな歌を歌っておくれ!

ああ、これがわかるだろうか?

実は正気だったのは彼だということを!

 

もう、勉強には飽き飽きだ!

本を読んでもきりがない!

彼らは頭が混乱しているのがわからないのか?

いかれているのは、そっちの方だ!

人は金儲けをして、信心深いふりをしたがる

そして残酷な戦争を果てしなく続ける!

その腐りきった考えで私を汚さないでくれ!

人をいやすほうがいい。

 

ハメルンの笛吹きと、人は私を呼ぶ

「やつはただのドン・キホーテさ」と!

自分達は互いに地獄をぶちまけているというのに

私が天国をただ夢見ていると、人は非難する!

 

だからドン・キホーテのために歌おう!

自由のために歌おう!

多少ボケていても、歌を歌おう

私達は永遠に至るのだから!

 

ハメルンの笛吹きのために歌おう

自由になった子供達のために歌おう!

軍人であるよりは、狂人でいたい

悲嘆をもたらすだけだから

 

気違いラスプーチンのために歌おう!

愛し、酔っ払い、癒し、皇帝も左右した怪僧のために!

人が狂ったように口論している間に

彼は彼らの持ち物を全部持って逃げ去った!

 

アリスの気違い帽子屋に乾杯!

セイウチの「キャベツと王達」にも!

子供達に、幸せをもたらすなら

気が狂っているのは、悪いことだろうか?

 

だから「広場の輝き」に乾杯!

歌う狂気に乾杯!

指輪をもらって喜んでいる女の子よりも

ガザの撃ち合いを選ぶのか?

 

私達に、気違いドン・キホーテをおくれ!

歌わせてくれるハメルンの笛吹きも!

狂気がもたらす喜びによって

私達を狂気に熱中させておくれ!

 

だから私は、イエスにあって幸せでいたい

悪魔のように正気で、邪悪であるよりは

御霊の狂気で自由になれるなら

私は狂って、喜んでいたい!

 

私達は狂気に満ちた世界に生きている

私達以外はみんな狂っている!

私は喜びでいっぱいの私の世界を取ろう

たとえ、それは空想だと言われても

あなた達の世界は正気かもしれぬが、つかの間だ

私の世界は目に見えないが、本物だ!

この快活な狂気のゆえに

あなた達は、私が狂っていて不道徳だと言う

 

だが、狂っているのはあなた達の方で

現実の世界に生きているのは私なのだ!

狂っていて、私を驚かせているのはあなた達の方だ

私の世界は永遠なのだから!

 

ただ霊の世界でだけ

天国の光景が楽しめる

天のサウンドが聞こえるだろうか?

そのエクスタシーの意味がわかるだろうか?

 

いや、あなた達は狂っていて、気づいてもいない!

夢の世界に生きているのはあなた達の方だ!

私こそ喜んでいて、証明もできる!

あなた達がわめこうとも、私は踊り続ける

 

狂気の中に生きているのはあなた達の方だ!

あなた達こそ、狂っているのだ!

私達は、イエスと喜びを持っている

そして、何度も何度もそれを持つ!

 

だから親愛なるドン・キホーテに乾杯!

ハメルンの笛吹きとラスプーチンとモーにも!

あなた達の悲しい狂った世界を持つよりは

彼らの祝福を受けた信者になりたい!

 

私に奔放で幸せな子供達をおくれ

子供達は自由に歌い踊る!

あなた達は地獄と狂気をもたらし

人を殺す異常な心を持っていればよい!

 

パイ作りのパイを味わった

まぬけのサイモンを選びたい

あるいは愛と真理と憐れみによって

人に公然と反抗した「白痴」を!

 

アリスやドン・キホーテやハメルンの笛吹き

ラスプーチンやモーのような人をおくれ!

苦しみでいっぱいのあなた達の世界全部よりも

この変人達の方がいい!

 

ぞくぞくする御霊の旅に出させておくれ

神のビジョンで我を忘れさせてくれ!

殺人だらけのあなた達の世界に、私はぞっとする!

何でも自由な世界に住みたいものだ!

だから親愛なるドン・キホーテに乾杯!

そしてすべての天国への旅にも!

あなた達のように頭がいかれているよりは

食い物さえあればよい!

 

これで、ちょうど49連

7かける7である

さもないと、あなた達は私を呪い始め

私の狂気が終わればよいのにと願うだろう!

 

追伸

ちょっとした知恵の言葉が

私のペンからまた出てきた

たとえ私の狂気は

もう十分だとあなた達が考えたとしても!

 

なぜなら神の愚かさは

人よりも賢い!

この世の知恵は

神の前では愚かなものだから!

−−(1コリント1章25節と3章19節を参照)

 

 

  * * *

 

  御子イエスと、その救いという贈り物を受け入れて、神の御霊の自由をまだ経験していないなら、今日、たった今、そうして下さい! この簡単な祈りを祈るだけです。

 

  イエス様、私は罪やみじめさ、悲しみ、この世の苦痛から解放されたいです! 天国の霊の御国に生まれ変わりたいのです。あなたが神の御子(みこ)で、私のために死んで下さったと信じます。私のすべての罪をゆるして下さい。今、心の扉を開き、あなたをお招きします。永遠の命を与えて下さい。あなたの聖霊で私を満たし、御言葉を読むのを助けて下さい。それによって、あなたのことを伝えるための信仰と御霊の自由を私が持ち、他の人もあなた達を見いだせますように。アァメン。

 

 

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「ドン・キホーテ」初版は、1973年1月に発行されました。

第一巻16号 C1993, Mountain Streams, Postfach 241,8021 Zurich, Switzerland