輝くひととき 92 PDFファイル91-94

 

うつわ

 

B・V・コーンウォール

 

主人がうつわを探していた

目の前には数多くのうつわがあるが、

選ばれるのはどれだろうか?

「どうぞ私を」と、金のうつわが声をあげた。

「私は輝き、光っています。

とても高価ですから、ご期待に沿えるでしょう。

この美しさとつやは、他のどれにも勝っています。

あなたのような方にふさわしいのは、やっぱり金です。」

 

主人は何も言わず、その前を通り過ぎた。

そして、細くて背の高い、豪華な銀の壺に目をやった。

「ご主人さま、私があなたにお仕えします。

ワインをグラスに注ぎましょう。

あなたが食事をなさる時には、いつでもテーブルにおります。

私のシルエットはとても優雅で、彫りも正確です。

銀なら必ず、ご満足いただけるでしょう。」

 

その言葉に耳も貸さず、主人は真鍮のところに行った。

口が大きく、底が浅くて、ガラスのようにぴかぴかだ。

「ここです! ここです!」と、そのうつわは叫んだ。

「ほら、こうしましょう。

誰もが私を見られるよう、テーブルの上に置いてください。」

すると、澄み切ったクリスタルのゴブレットが言った。

「私を見て。この透明度は、飲み物をとてもきれいに見せます。

壊れやすいですが、誇りをもってあなたにお仕えします。

あなたのおうちに留まれるなら、光栄です。」

それから、主人は木のうつわのところに行った。

磨かれ、削られ、堂々としていた。

「ご主人さま、どうぞ私を。でもパンではなく、

フルーツにお使いくださいませんか。」

 

それから主人が下を見ると、そこには粘土のうつわがあった。

空っぽで壊れたうつわは、ただそこにころがっていた。

主人に選ばれるなど、夢のまた夢。

きれいにされ、直され、満たされ、使われるなんて…。

「ああ、こんなうつわを探していたんだ!

わたしが直して使い、自分のものとしよう。

わたしには、自分を誇るうつわや

細長くて狭量のもの、

大口で深みがなく、うるさいものや

中身を誇示するもの、

自分で何でも正しくできると思うものなどいらない。

だから、この素朴な土のうつわを、わたしの力で満たすとしよう。」

 

それから、主人は土のうつわをそっと持ち上げ

作り直し、きれいにし、満たした。

それから、優しくこう言った。「さあ、これがお前の仕事だ。

わたしが注ぎ込んだように、お前も他の人に注ぎ込みなさい。」

 

  最も偉大な人物は、ほとんどの場合、非常に謙虚である。英国のアイザック・ニュートン卿(1642-1727)は、リンゴが落ちるのを見て、引力の法則を発見したという。数学者であり物理学者でもあるニュートンは、他にも、どうして虹があのような色になるかなど、様々な発見をした。ニュートンは後に国会議員となり、王立鋳貨局の局長も務めた。だが、宇宙のしくみについて幾つも明らかにしたことで、ある友人がニュートンをほめると、ニュートンは静かにこう言った。「私はただ、真理という大海の砂浜で小石を拾っている子供のようなものだ。」

 

 

  偉大な作曲家フランツ・ヨセフ・ハイドン(1732-1809)は、76歳の時、自作のオラトリオ「天地創造」の特別演奏会に出席した。最も感動的な楽章の一つの終わりに、観客は大喝采をした。最初、ハイドンはそれがオラトリオに対してだと思ったが、突然、自分に対してであることに気づいた。すぐさま彼は立ち上がって、手振りで観客を静まらせると、「これは私が自分で作ったのではなく、神から授かっただけなのです」と答えたのだった。

 

  主は、業績や才能、どれだけ知識があるか、どれだけ善人かよって人を判断されたりはしない。主は心によって判断される。中でも最高の評価を受けるのが、愛と謙虚さだ。たとえささいなことでも、愛と謙虚さがあれば、あなたの行動すべてが祝福となる。

 

  歴史上の偉大な聖徒とは、人々の目にとまるかどうかなど関係なく、ただ自分がすべきだと思ったことをした普通の人たちだった! 彼らは必要とされる時にはいつでもそこにいて、必要に気づき、そのために何かしようとするのだった。私たちに主と他の人々に対する本物の愛があるなら、すべきことは何だってするだろう! それは、私たちが謙虚であるかどうかにかかっている。謙虚であることは、愛があるという意味であり、それがあって初めて、人は、主を喜ばせ、皆を助けるために、いつでもどこにでも行き、人のために何でもしようとし、名もない存在となるのもいとわないのだ!

−デービッド・ブラント・バーグ