――― 輝くひととき 53  ――― PDFファイル53-54

 

人生を変えたひとこと

 

  看護婦が祖母の病室まで案内してくれた。ベッドに横たわる祖母はとても小さく見えた。眠っているようだったので、私は静かにその脇に座った。

  私は、神学校に入学する予定だったが、それが正しい決断なのかどうか全く自信がなかった。医大に奨学生として入学するチャンスを棒に振ってのことだったので、皆は、「何と愚かな事を…」と思っていた。祖母の意見がどうしても聞きたかったが、看護婦は、祖母はかなり弱っているのであまり話せないと言った。30分たっても祖母は目を閉じたままだったので、ただ話しかけはじめた。すると突然目を覚まし、「ダニー、お前かい?」と言ったのだった。

  そして、信仰が祖母の人生をずっと支えてきてくれたことを話してくれた。数分もすると穏やかな平安が私たちを包んだ。それから、さよならのキスをして立ち去ろうとすると、祖母が何かをささやいた。口元に耳を近づけると、祖母は「お前のことを信じているよ」と言っていた。

  その夜、祖母は亡くなった。これまで20年以上クリスチャン心理学者としてやってきたが、何度あの祖母の言葉で人を励ましたことだろう。たった一言でも、人の一生を変えることができるのだ。

―ダン・モンゴメリー

 

 

  部下たちのやる気を引き出すコツを知っていること、それが自分の何よりの取り柄だと思う。人の能力を最大限に引き出すのは、感謝と励ましである。

  上司からの批判ほど、部下のやる気をくじくものはない。私は決して人を批判しない。意欲をかきたてる方がよいと信じる。だからほめる所は一生懸命探すが、あら探しはしたくない。何か気に入った所があれば、心の底から、大いにほめることにしている。

―チャールズ・シュワッブ(アメリカの企業家、1862-1939)

 

 

  誰かのほめ言葉が大いなる結果をもたらす。

―サミュエル・ジョンソン(イギリスの作家、1709-1784)

 

 

  誰もが心の底で切望しているもの、それは感謝されることである。

―ウィリアム・ジェームズ(アメリカの哲学者、1842-1920)

 

 

ほめるテクニック

  助けてくれた人に謝意を表す事は、どんな人間関係にもあてはまる最低の礼儀ではないでしょうか。私の友人、マイク・ソムダルはその達人です。彼のビジネスが成功しているのも、いつも顧客に感謝の言葉を述べて、相手の気分を良くさせるコツを心得ているからです。マイクは、先週の注文のお礼、お客さんを紹介してくれたお礼、または昼食のお礼など、何かにつけてはお礼の電話をします。そして、受話器を置く頃には、もう次の注文を受けていることがよくあります。もちろん、そういう下心をもって電話すれば、相手もそれと気づいて構えてしまうでしょう。しかし、感謝の気持ちを表すことはマイクの昔からの習慣なので、彼と仕事をする我々はとても満足しており、自然とそれに応えるのです。

 

  ほめるテクニックは、現代心理学では「正の強化」と呼ばれ、管理職や教師が[そして誰もが]、まず身につけるべきテクニックです。「仕事で間違いをした時くらいしか、上司は話しかけてくれない」というのが、会社などでよく聞く不満です。そして、カウンセリングに来るティーンエージャーからよく聞く言葉は、「親父は、僕が学校で何かへまをするとカンカンに怒るくせに、いい成績とっても無関心。『それで当たり前』って感じなんだ。」 ここで、考えてみてください。最近、子供や部下や同僚を、良い事をしたと言って、最低60秒間ほめたことがありますか?

 

  心から自分に感謝してくれる人が現れたなら、私たちはその人にずっとついて行くでしょう。

                             ―アラン・ロイ・マクギニス