輝くひととき 43−44 PDFファイル41-44

 

天使が歌った夜!

 

子供たちのためのクリスマス・ストーリー

 

ロシア、シベリア地方在住、ロレイン・ローズ作

 

 

  やあ、ぼくの名前はダビデ! ずっと昔、砂ぼこりのまう乾いた地の国に住んでいたんだよ。ぼくの家は土でこねたレンガでできていた。そして、お父さんとお母さんは機織をしていて、お兄さんはその手伝いをしていた。

  でも、だんだん生活が苦しくなってきて、ある日、夕はんの時にお父さんがこう言った。

「ダビデ、今、家にお金がなくてたいへんなのはわかっているね。となりの人が、おまえが夜、羊の番を手伝うなら、羊毛をわけてくれると言ってくれたんだが…」

  ぼくはまだ7才だったけど、ぼくなりに家を助けたいという気持ちはあった。そういうわけで、羊の番を始めたんだ。

  荒おりの服を何まいもきこんで、大人の羊飼いたちが起こした火にあたりながら、ちぢこまって、いく晩も丘の上ですごした。ほっぺに冷たい夜風を感じながらね。たいていの夜は何事もなくすぎさり、野原にいる羊たちと同じように、ねむりにつくことができたけれど、群にしのびよってきたオオカミやジャッカルを追いはらった夜もある。でも羊は一ぴきもとられなかった。神さまが、ぼくたちと羊を守ってくれたんだ。

  羊飼いの中で、ぼくは一番年下だった。そして夜、火にあたりながら陽気に古い歌を歌う時間が大好きだった。ゼカリヤという、おじいさんの羊飼いがいて、時々、まちこがれるように救世主の話をした。ぼくは一生けんめい、その話に聞き入ったものだ。ゼカリヤじいさんは、しゃがれた声で、ぼくたちに命と愛と自由をもたらしに来て下さる方の話をした。その方は、ぼくたちの羊飼いになり、ぼくたちを世話し、まよい出た羊を群に連れもどしてくれるんだって。

  ゼカリヤじいさんは言った。

「救世主はまずしい人たちに福音をつたえるために来るんじゃ。そして心のくだけた人をいやし、囚われ人に放免をつげ、目の見えない人に光を与え、しいたげられている人に休息を与えるためにな。ああ、その日が来るのを見たいものじゃ!」

  じいさんの話が終わっても、その声はまだぼくの耳に何度もなりひびいていた。ぼくは神様にいのった。ぼくにも、愛の救世主がこの地上に来るその日を見せて下さいと。

  ぼくが羊番になってから何ヶ月かたった。その夜は、いちだんと寒かった。たき火のもえさしをかき起こして火が消えないようにし、羊たちがねむりにつくと、ぼくたちもかたまって横になり、うとうとし始めた。(なんてきれいな星! とても大きくて明るい。まるで手がとどきそうだ!)と思いながら。

  ぼくは夢を見た。光と愛とぬくもりの夢だった。すると、とつぜんハッと目がさめた! 目をあけると、まぶしいほどに明るい光が目に入った。でも、その光をじっと見つめても、なぜか目はいたまなかった。美しい天使が、金色の長いかみを風になびかせながら、空にうかんでいた。初めはこわかったけれど、その天使が話し出すと、もうこわくはなくなった。天使はこう言った。

「おそれるな。すべての民に与えられる大きな喜びを、あなたがたにつたえる。 きょうダビデの町に、あなたがたのために救い主がお生れになった。このかたこそ主なるキリストである。あなたがたは、幼な子が布にくるまって飼葉おけの中にねかしてあるのを見るであろう!」

  その意味を理解する間もなく、上空一面に荘厳な光があらわれた! 大勢の美しい天使たちが歌っていた。「いと高きところでは、神に栄光があるように、地の上では、み心にかなう人々に平和があるように!」

  あたりに歌と音楽がひびきわたり、とてもきれいなハーモニーをかなでていた。ぼくたちは、このおどろきに目を見開き、心は喜びにみちていた! ぼくたちの魂まで、空中に躍り出さんばかりだった。

  天使の美しいハーモニーが夜空に消えていくと、ゼカリヤじいさんはひざまずいて大声でさけんだ。

「主をほめよ! 主は大いなる愛をしめしてくださった! ベツレヘムに行って、救い主、愛の王であるその子供をさがそう!」

  町に向かいながら、ぼくはこう考えた。(主に会ったら何をあげよう? ぼくは何も持っていない。まだ子供だし、まずしいし。) 気がつくと、古い馬小屋の前に立っていた。戸をたたくと、やさしそうな男の人が出てきた。その粗末でくさい馬小屋から、まばゆいかがやきと共に、愛とぬくもりがあふれ出ていた。それで、(ああ、ここにイエスさまがいる)とわかった!

  イエスさまがねている飼い葉桶に歩みよって、ぼくは愛と平安にかがやくみどりごの御顔を拝した。そしてひざまずき、小さなおでこにキスをした。目から涙があふれてきた。飼い葉桶のとなりで休んでいたイエスさまのお母さんがぼくをだきしめ、ぼさぼさの頭をなでてくれた。その時、ぼくの人生は永遠にかわったんだ!

  ぼくたちは、このおどろくべき出来事にすっかりこうふんしてしまい、それについてじっくり考えられるようになったのは、しばらくたってからだった。また丘の上にもどって、こしを下ろし、ぼくたちの上に広がる星空を見上げていると、こんな思いが頭をかすめた。(一体どうして、世界で最もすばらしい聖なる夜に、天使がよりによって、ぼくたちの所にあらわれて、良き知らせをつげたんだろう…)

  そして、気がついた。神さまはぼくたちみんなを愛してくださっている、たとえどんなに取るにたらない人であっても。世界中の子供を一人のこらず、神さまはわけへだてなく愛してくださる。まずしく小さな羊の番のこのぼくでさえも。そう、イエスさまにあげるプレゼントを何にするか決めた! 物は何も持っていないけれど、イエスさまがくれた愛が心にいっぱいみちている。その愛でもってイエスさまを愛し、ほかの人たちにもイエスさまの愛と光をあげたい。それが、ぼくのイエスさまへのプレゼント。

 

 

        クリスマスの祈り

 

クリスマスが心にないなら

  せっかくのクリスマスも意味がない。

まず自分から始めないなら、

  与えることも意味がない。

ああ、イエスよ。あなたの愛が本当に必要!

  わたしが与えるとき、

それがあなたでありますように、

  あなたの愛でありますように。

 

                ―リー・アンダーソン