輝くひととき 24

 

天国の栄誉殿堂

 

  アルブレヒト・デューラー(ドイツ人芸術家、1471-1528)は幼少の頃から絵描きにあこがれ、やがて家を離れて偉大な先生の下で学び始めました。そこで、同じ志しを持つ友人と出会い、二人はルームメイトになりました。貧乏暮らしをしながら学業に励むのは並大抵の事ではありませんでした。

  アルブレヒトの友人は、君が学ぶ間、ぼくが働こうと申し出ました。アルブレヒトの絵が売れ始めたら、今度は自分が学ぶ番にすればいいと。アルブレヒトは、友人の強い説得に負けてそうすることに決めました。それから、友人が二人のために長時間働いて生活費を稼ぎ、アルブレヒトは熱心に芸術の勉強に打ち込みました。

  ついにアルブレヒトの木製の彫像が売れて、友も絵画に戻れる日が来ました。ところが、重労働のゆえに友の指は硬くねじれ、思うように動かなくなってしまっていたのです。アルブレヒトは、友の身の上に起きたことを思い、悲しみに沈みました。

  ある日、いつもより早く帰宅すると、友の声がしました。のぞいてみると、友は疲れ切ってねじれた手を合わせて祈っていました。

  「祈りのために合わされたその手を描くことで、全世界に僕の感謝を示そう。」 友が、かつてのような巧みな芸術的タッチを二度と取り戻せないことを悟ったアルブレヒト・デューラーに、そんな思いがわきました。

  友への感謝にあふれるその素晴らしい絵は、世界的に有名になりました。ですから、私達は、その美しい絵と共に、感謝と兄弟愛についての美しい実話という恵みにあずかっているのです。

 

     ◇ ◇ ◇

 

  「あなたがたの内でいちばん偉い者は、仕える人でなければならない。」−−マタイ23章11節

 

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  「よくよくあなたがたに言っておく。一粒の麦が地に落ちて死ななければ、それはただ一粒のままである。しかし、もし死んだなら、豊かに実を結ぶようになる。」−−ヨハネ12章24節

 

 

 

祈りの手

 

  「祈りの手」 これはただの絵画ではない

  深い感謝の心から出た魂の産物

  愛だけが描ける

  この上もなく貴重な傑作  

  自らを犠牲にした無名の聖徒がここにある

  ふしくれだった傷だらけの指が物語る

  神の計画にそって

  自らの才能を犠牲にした人のことを。

 

  神の計画には

  人には理解できぬ事柄が数々ある

  しかし神の判断を信じ

  御手によって導かれなさい

  幸せになる夢を 

  神が「捨てよ」とおっしゃる時もある

  幸運と成功への望みを

  断ち切らねばならない時もある

  誰もが勝利を手にするのではなく

  名声をつかむのでもない

  自分のものと思った栄誉が

  他の人の手に渡ることが幾度あることか

 

  だが、他の人が成功するよう

  犠牲を払う人こそ

  救い主の教えに従うまことの弟子

  愛と犠牲をもって自らを捧げるなら

  天の御国に宝が蓄えられる

  ねじれて疲れ切った手に隠されているのは

  最も純粋なる生命の芸術

  それを手にするのは

  ただ与えることの勝利をきわめた者だけ

 

  愛する主の御名によって

  地上で犠牲を払った人は

  天の栄誉殿堂入りする

  天の父の目に

  誰が最も偉大であるか

  また最も偉大な才能とは何かなど

  誰に決められようか!

    ――ヘレン・スタイナー・ライス

 

     ◇ ◇ ◇

 

  最良の贈り物は、心の糸で結んである。

 

     ◇ ◇ ◇

 

  愛なしに与えることはできても、与えることなしに愛することはできない。

 

     ◇ ◇ ◇

 

  同情は見て言う。「かわいそうに。」

  憐れみは心から感じてささやく。「助けましょう。」