輝くひととき 10

 

自分を与えること…

 

    どこを標的としていたのかわかりませんが、ベトナムのある小さな村の孤児院に、迫撃砲が何発も落ちました。そこは、宣教団体によって運営されていて、宣教師達と一人か二人の子供が即死し、数人の子供達が負傷しました。

  近くに米軍と無線で交信している町があったので、村の住民は、そこから医療援助を求めました。やがて、米国海軍の医師と看護婦が手持ちの医療器具だけ持ってジープで駆けつけました。そこにいる8歳くらいの女の子が最も重傷で、一刻も早く治療しなければ、ショックと出血多量で死んでしまうとわかりました。

  輸血が即必要で、同じ血液型の献血者を見つけなければいけません。素早く検査したところ、同じ血液型のアメリカ人はいませんでしたが、負傷していない孤児達の中にその血液型の子供が数人いました。

  医師はつたないベトナム語とフランス語を話し、看護婦は高校でフランス語をかじった程度だったので、身振り手振りを交えて、おびえた表情の子供達に、失った血を輸血しないとこの女の子は死んでしまうと説明したのです。それから、この子を助けるために、自分の血をあげたい人はいないかと尋ねました。

  子供達は驚いて静まり返りました。長い沈黙が続いた後で、小さな手が恐る恐るゆっくり上がっては下がり、また上がりました。

  「ああ、ありがとう。名前は何というの?」 看護婦がフランス語で言いました。

  「ヘン。」

  ヘンが素早くござの上に横になると、看護婦がアルコールで注射する箇所を消毒し、注射器の針が血管に入りました。この苦難の間、ヘンは体を堅くして、押し黙っていました。

  しばらくして、彼は身震いして泣き出すと、針の刺さっていない方の手でさっと顔を覆いました。

  「ヘン、痛いのかい?」 医師が尋ねると、ヘンは首を振りました。ところが少しするとまた泣き出して、もう一度泣いているのを隠そうとしたのです。針が痛いのかと再び尋ねられても、ヘンは首を振るのでした。

  けれども、時折泣いていただけだったのが、今や静かなむせび泣きになりました。目をぎゅっと閉じ、泣き止もうと、握りこぶしを口の中に入れていました。

  医師も看護婦も心配になりました。確かに何かが変です。この時、ベトナム人の看護婦が到着しました。泣いている男の子に、早口のベトナム語で話しかけると、その答えに耳を傾け、それからなだめるような声で答えていました。

  やがて、ヘンは泣き止み、何事か尋ねるかのようにベトナム人看護婦の方を見ました。看護婦がうなずくと、ほっとした表情をしたのです。

  それから看護婦はアメリカ人達に静かに話し始めました。「この子は、自分が死ぬと思ったんです。誤解したんですよ。女の子が助かるように、自分の血を全部与えてくれと言われたと思ったんです。」

  「でも、どうしてそうしようと思ったのかしら?」海軍の看護婦が尋ねました。

  ベトナム人の看護婦がベトナム語で尋ねると、男の子はこう答えたのです。「だって、あの子は僕の友達だもん。」

  「人がその友のために自分の命を捨てること、これよりも大きな愛はない。」(ヨハネ15章13節)

 

     ◇ ◇ ◇

 

誰かがあなたを

 

誰かがあなたを必要としている

今日、あなたの微笑みを

抱きしめてもらい、話を聞いてもらうこと

励ましや慰めに満ちた優しい言葉を

 

誰かがあなたの助けを必要としている

手紙か、それ以上のもの

あなたの快活さによって

元気づけてもらうのを

 

誰かが愛情を必要としている

心が沈んでいる時に。

聞いてごらん、誰かが呼んでいる

あなたのような特別な友を求めて

      −−ジャクリーン・スキフ

 

     ◇ ◇ ◇

 

  自分を愛するように隣り人を愛するなら、相手の立場になって、自分がその人ならどんな気持ちがするかや、充実感を得るためには何を求め、何を必要とするかを考えるだろう。

 

  すべての心を開く鍵がほしいなら、愛を試してごらんなさい! 必ずうまくいくから! なぜなら、神は愛であり、神が失敗されることなど、あり得ないから!−−ファーザー・ダビデ