トータル・マン

 

−−自信と満足を得る方法

−−ダン・ベンソン

 

父親は本当に必要か?

  あなたの一番大切な役割とは、会社員、あるいは印刷業者、熔接工、会計士、牧師、会社の重役としての役割でしょうか? それとも父親としての役割でしょうか?

  最近、ある調査で300人の中学校の男子生徒に、2週間の内にどれだけ父親と時間を過ごしたかを記録するように尋ねたところ、ほとんどの生徒が、父親を見たのは夕食の時だけだったと報告しました。中には、何日も続けて父親の姿を全然見なかったという生徒も数人いました。これは、父親が出張していたか、家族が寝た後、夜遅く帰宅していたためです。結局、父親が息子とだけ過ごした時間の平均は、週にわずか7分半でした!

  父親が姿を見せないことの影響をもろにかぶるのは子供です。男の子にとって、一人前の男性とはどんなものかを学ぶには、父親が身近にいなければなりません。娘にも、より女らしく成長していくため、また、男性とは何かを知るために、父親が必要です。

  「父親消失」には、少なくとも三つのタイプがあります。一つは、父親がしょっちゅう遅くまで残業し、週末も仕事というタイプです。二つめのタイプは、出張が多く、国中あちこち飛び回って商談をしたり、会議に出席したりというもので、三つめは、8時間労働しかしないものの、疲れ、あれこれで忙しく、無頓着か、または、「大人の自分が子供と一緒になって遊んでなんかいられない」というタイプです。あなたがこの三つのタイプのどれかにあてはまるかどうかはわかりません。それはただ、あなたと神のみぞ知ることです。(そして、きっと奥さんと子供も。) 

けれども、ほんの少し時間を割いて、幾つかのとても大切な質問について考えていただけるでしょうか? あなたは、きっとお子さんにとって最善のことを望んでいらっしゃることでしょう。また、立派な父親でありたいとも。けれども、もしかしたら、あなたも他の何万人という現代の父親のように、社会の影響とやらのせいで家庭への関心が薄れてしまっているのかもしれません。

  ここにある質問を自分に尋ねてみましょう。少しの間、目を閉じて、あなたの家庭の状況についてじっくり考え、そして正直に答えて下さい。

  1.私は子供のことをよく知っているだろうか? 

  一人一人の名前と年令を思い浮かべて下さい。彼らの将来の希望は何でしょうか? 一人一人どんなふうに違うでしょうか? あなたとはどんな所が違っているでしょうか? 彼らは成長に伴ってどんな悩みを味わっているでしょうか? 子供はあなたに対して、何でも気兼ねなく打ち明けたり、質問したりできるでしょうか?

  2.子供は私のことをどう思っているだろうか?

  あなたは、ただ夜に帰宅してため息をつくだけの人ですか? 叱るだけの人ですか? 子供は人間としてのあなたをどれくらい知っているでしょうか? あなたの仕事について何を知っているでしょうか? 仕事が、あなたや子供にとってどうして大切かも知っているでしょうか? 子供はあなたのことを粗大ゴミ同然に思っていますか? あるいは独裁者だと? それとも一家の優しいリーダーだと思っているでしょうか? あなたをリーダーとして尊敬しているでしょうか?

  3.子供がそう思うようになったのは、私のどんな態度や行動が原因なのだろうか?

  あなたは忙しすぎるとか、家にいないということが頻繁にありますか? 「今はだめ」とか、「新聞を読んでいるから邪魔しないでくれ」というのが口癖になっていますか? 子供と話したり、遊んだりするよりも、叱っている時間のほうが多いと思いますか? バランスのとれた生活をするよう子供に言っておきながら、実は自分は非常に偏った生活をしていますか?

  4.子供は私から愛されていることを、どのように知るだろうか?

  まず、子供はあなたから愛されていると知っていますか? 言葉で言うだけで十分でしょうか? あなたは愛を示すために、物を買ってやったりお金をあげたりするのでしょうか? あなたが家にいる時間は、子供にとって楽しい時間ですか、それとも、あなたに怒られないように神経を使う時間ですか? 

  5.父親である私が持つ限られた時間で、子供の成長のためにしてやるべき最善のこととは何だろうか?

 

   ―――――――――――――――

  神と人間との関係をわかりやすく示すために、神はご自身を父親にたとえておられることを考えると、非常に厳粛な気持ちになる。

   ―――――――――――――――

 

  以下は、自分の子供のために、父親が出来る最も重要な三つの事柄であると私は確信しています。

 

第一条 妻を愛する

  父親が帰宅すると、幼い息子と娘が互いにわめき合っていました。取っ組み合いの喧嘩になってはいかんと考えた父親はこう尋ねました。「一体どうしたんだ? 何があったんだ?」

  すると、不機嫌そのものの顔をしていた子供達が急ににっこり笑ってこう言ったのです。「何でもないよ。ただパパとママごっこをしていたんだ。」

  異性との接し方について子供が抱くイメージは、おもに、あなたと奥さんの毎日の生活を見守ることから生まれます。互いにけなし合うなら、子供は、あなた達のことも、他の誰のことも尊敬する必要性を感じません。あなたと奥さんが愛し合うなら、子供はそこから大切な事を学びます。つまり、愛は良いもので、優しくすると気分も良くなる、また異性には尊敬を持って接するべきであるということを。

  ジョン・M・ドレッシャーは、「永遠」という雑誌の中でこう書いています。「両親が愛し合っていると知ることで、子供は安心感を覚え、精神的に安定し、また人生の尊さを学ぶ。子供がそれを学ぶ方法は他にない。」

  だから、あなたが奥さんを愛していることを子供の前で示して下さい。

 

第二条 子供の成長を促す

  子供の成長を促す良い方法とは何でしょうか?

  1.子供の言うことに耳を傾ける。幼い子供であれば、子供のレベルにまで降りてあげなさい。文字通りそうするのです! 8年も9年も大人のひざに向かって話すなんて、考えられますか? 子供と同じ目の高さで会話をするなら、(子供にとっても、あなたにとっても)コミュニケーションは楽しくなるでしょう。

  お父さんはいつでも子供の話を聞いてあげられるし、関心を抱いているということを知らせてあげなさい。幼い頃から信頼関係が続いていれば、いつか、親子共ども、「親子の断絶なんて、あった?」と言うことでしょう。

  2.子供を一人の人間として受け入れること。受け入れるというのは、子供の間違った行いを大目に見るということではありません。子供を認めるというのは、子供があなたに抵抗する時や、機嫌が悪い時でも、子供を愛してあげるということです。自分の価値は、美しさや頭の良さや行儀の良さによるものではなく、ただ自分が神によって創造されたという単純な事実に基づいているということを、子供は知る必要があります。

  子供っぽい振るまいにも、成長の過程にある人として敬意を払ってやること。そこで質問があります。あなたは親友と接する時に、子供と接するのと同じ態度で接しますか? (「ハリエット、テーブルにひじをつかないで! ジョージ、音を立ててミルクを飲むのはやめなさい!」) 子供もあなたの親友であるべきなのだから、子供にも友達に対するのと同じ話し方をすべきです。そうすれば、「がみがみ」が「指示」に変わるでしょう。

  3.子供をほめる。子供は「だめ」ずくめの世界に生きています。子供の世界には、まだ多くの「してはいけない」ことがあり、子供が試してみたいと思うことはほとんどがなお禁じられています。ニュースも暗いニュースばかりです。先生にとって(たぶん親にとっても)、励ましの言葉より、非難の言葉を言うほうがはるかに簡単です。

  子供の進歩をほめてあげましょう。けれども進歩を遂げたから受け入れてもらえるのだという印象を与えてはいけません。子供が努力し、ベストを尽くしたという事実をほめてあげるのです。

  4.子供と価値ある時を過ごす。家族そろって一緒に過ごすファミリー・ナイトを始めて大成功している父親を、私は何人か知っています。週に一晩はゲームをしたり、家族で工作をしたり、ジェスチャーゲームをしたり、ポップコーンを作ったりなどしましょう。(TVは見ません!) そして、最後に、お気に入りの本を読んであげます。ファミリー・ナイトが最もうまくいくのは、誰かに夕食に招待されたり、仕事上の会合に出たり、つきあいで何かの催しに参加するために、子供と過ごす夜をお流れにしたりしない場合であるということを、彼らは知りました。

  けれども、価値ある時を過ごすために、わざわざ特別な夜の時間を設けなくてはいけないというわけではありません。帰宅してから夕食までの30分間はどうでしょうか? 「ほら、20分あるぞ。ちょっとバスケでもしないか?」というふうに、あいた時間があれば、短くともその時間を有効に利用することを学びましょう。

  5.何か責任を任せる。子供の成長に応じた仕事を与えて下さい。子供は皆、毎日決まった仕事を受け持っているべきです。そうすれば、家庭の運営には何が必要かを知ることができます。しかし、最も大切なのは、家族全員が共に努力することで身につける、「共同体精神」です。

  6.子供を教える。子供が成長している間は、いつも「授業中」です。(でも子供にはそう言わないで下さい。)価値観や実用的な技能を教える機会があればいつでもそれを利用して下さい。

  けれども、実際、子供はあなたを見守ることで最も大切な訓練を受けているのです。あなたと奥さんはどのように意見の対立を解消するでしょうか? 他の人に対して正直で公平に接しているでしょうか? ゲームをする時、ただ楽しむためにしているでしょうか、それとも、どんな手段を使ってでも勝とうとするのでしょうか?

  一方、単刀直入に教えなくてはいけない場合もあります。

 

第三条 罰を与える

  罰を与える目的は、怒りをぶちまけることではありません。あなたの子供は、今まで親に対して尊敬の念を抱いていなかったかも知れませんが、あなたはまず、愛のこもった親子関係を築くことによって尊敬心をかき立てなければなりません。子供と遊んでやるような親でなければ、子供を罰する権利はありません。なぜでしょうか? 効果的にしつけをするには、規則ばかり重視するのではなく、愛のこもった関係がなくてはならないからです。

  子供に合った罰を与えて下さい。幼い子供には、「愛のムチ」をふるうこともできるでしょうが、17歳の子供にお仕置きをしようとするなら、怒りを招くことでしょう。目的は教えることであって、屈辱を与えることではありません。子供の性格をよく心得ておくことです。繊細な子供なら、強く叱るだけで、3回たたくのと同じ効果があるでしょうし、頑固な子供だったら、3発では足りないかもしれません。

  それから、罰した後には、愛を示し、よく説明してあげることを忘れないで下さい。

  父親は必要です。あなたの家に子供がいるのなら、あなたは絶対的に必要とされています!

 

チームワーク!

  週末にオイル交換をする予定はありますか? それならティーンエージャーの子供にやり方を教える良いチャンスかもしれません。または、今までずっとやろうと思っていたアンティークの食器棚の表面をリフォームする予定ですか? それなら、奥さんと一緒にそれをする予定を立ててはどうでしょうか?

  家の仕事に取り組むのは、なかなか楽しいものです。一家揃ってワークデーを設けて、素晴らしい成果をあげている父親を私は知っています。子供一人一人が、落ち葉を集めたり、窓の掃除をしたり、花壇の草取りをする間、父親はそれぞれの持ち場を回り、一人につき30分くらい一緒に仕事するのです。その時に、それぞれの子供と、学校のこと、スポーツのこと、ボーイフレンドやガールフレンドのことなど、いろいろなことを話します。そして、次の子供の所に行く前に、こう言うのです。「本当に愛しているよ。おまえのような息子(または娘)を持てて嬉しい。今日はよく手伝ってくれてありがとう。」 一日が終わって、仕事が完了した時に、家族投票でどんなスペシャル・イベントをするかを決めます。一日の仕事を立派にやったお祝いとして、ソーダ・フロートを飲んだり、ミニゴルフ、水泳などをするのはどうでしょう。

  そうすれば、一人の父親が同時に三つのことを成し遂げることになります。家の仕事を終わらせ、子供に責任を教え、何よりも大切なことに、コミュニケーションとチームワークを通して、家族の絆を強めるのです。

 

 ―――――――――――

ただの父親

毎日の生存競争が終わって家に着いても

大金や名誉など持ち帰らず

試合を立派に戦ったという証もない

けれども、子供は

父親が帰ってきて、

その声を聞くのが何よりも楽しみ

 

4人の子供を抱えた父親

他の父親たちと共に

毎日、悪戦苦闘する

叱責やあざけりにも堪え

苦悩や憎悪も口には出さない

家ではかわいい子供達が

待っているのだから

 

金持ちでもなく偉くもないただの父親

大勢の群衆の一人にすぎない

毎日毎日、あくせく働き

何が起ころうとも

辛らつな非難を浴びせられても

すべて、愛する家族のためにじっと堪える!

 

ただの父親だが、すべてを捧げる

小さな子供たちの人生の道を

容易にしてやるために

勇気ある厳格さと笑顔をもって

自分の父親がしてくれたことを行う

この言葉を父親に捧げよう

「ただの父親だが、彼こそ男の中の男!」

      −−エドガー・A・ゲスト