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ティーンが耳を傾ける話し方

−−ポール・W・スェッツ

 

ティーンとコミュニケーションを持つ

 

  子供に良い自己イメージを持たせる。息子のジャドソンが赤ん坊の頃、私は彼のことを、今にも爆発せんばかりのエネルギーの固まりか、まだ製作段階にある芸術の傑作品のように思ったことを覚えています。その結果、私は、沢山の思いやりと尊敬をもって彼を扱ったのでした。彼がティーンエイジャーになった今、私が息子に対して抱いているイメージが、私の言う事やその言い方に影響を与えているのがわかります。それはまた、彼の抱く自己イメージにも影響を及ぼします。私が彼を敗者と呼べば、彼は敗者のように振る舞うことでしょう。勝者のように扱えば、彼はもっと勝者らしく振る舞うことでしょう。ティーンというのは、自己形成という非常に傷つきやすい段階にあるので、私達が彼らについて思うことや、彼らに話すことというのは、彼らの人格形成に影響を及ぼすのです。

  責めるのではなく、訓練する。文法や語いや作文に加えて、中には、人前での話し方のクラスを受けた人達もいることでしょう。しかし、耳を傾けるというテクニックを養う訓練を受けた人が一体どれだけいるでしょうか? 

  スペリー・コーポレーションは、耳を傾ける能力を伸ばす訓練を従業員に与える事によって、コミュニケーション上の手違いを減らし、何百万ドルも節約できることを発見しました。調査によれば、耳を傾ける訓練を受けた人々は、訓練を受けなかった人々よりも、ずっとやる気を示し、間違いも少なく、自分の仕事をもっと楽しむという事です。私達は皆、責めるよりも、訓練を施す事によって、その報いに預かる事ができるのです。

 

より良いコミュニケーションを持つための5つのステップ

 

  私達はわずかな調整をしたらいいでしょう。ティーンとのコミュニケーションがうまく行かなかったら、(それは必ず起こることですが)、過去の出来事を振り返ってみて、変える必要のある事柄を変えていくことができます。声の調子、言葉の選択、顔の表情、あるいは私達の耳の傾け方を少し変えるだけでも、ティーンの私達に対する見方や反応が変わるものです。

  コミュニケーションのゴールを定めると良いでしょう。次に挙げるのは私の助けになっている幾つかのポイントです。

  −−話す前に考える

  −−口をはさまずに耳を傾ける

  −−相手を非難するような声の調子を避ける

  −−声を荒立てずに穏やかに話す

  −−興味深い会話を引き出す様な質問をする

  −−自分に対してティーンに話してもらいたいのと同じ方法で話す

  私達は言葉を選ぶことができる。

 

選択1

  娘:私の靴どこだか知ってる?

  親:いつもちゃんと片付けないから、すぐなくなっちゃうのよ!

  娘:そう? じゃあ、ママはどうしていつも鍵をなくしてばかりいるの?

 

選択2

  娘:私の靴どこだか知ってる?

  親:青い椅子のそばに置いてあったと思うわよ。

  娘:ありがとう、ママ。

 

  選択1では、親は娘の質問に対して、非難するような口調で返事をし、娘の行いを正そうとしていますが、口論になっています。選択2では、親は非難することなしに応対しており、娘に感謝の気持ちを起こさせています。

  じかに体験して得た知識を利用すると良い。自分の記憶をたどって、大人が自分に尊敬の念をもって話してくれた時、あるいは愛想を尽かして怒鳴りつけてきた時、大人に自分の意見を求められた時、仕事をして良くやったとほめられた時に、どう感じたかを思い出したらいいでしょう。その記憶と、大人になって得た洞察力とコミュニケーションの技術とを組み合わせて使うなら、ティーンと意志の疎通をはかるという新しいチャレンジに取り組む助けとなることでしょう。

  最善の自分を最大限に引き出すという断固とした決意をする。私達一人一人の内にはより良い自己というものがあり、そのより良い自己を引き出すことができるなら、ティーンともより良い意志の疎通を持つことができると私は信じています。では、どうしたら、より良い自分を引き出すことができるのでしょう? 最善の自分を最大限に引き出そうという固い決意をすることによってです。そういった決意がないと、失敗したら、すぐあきらめてしまいますが、そういった決意があるなら、失敗しても(必ず時には失敗します)、私達は問題を解決し、再び試み、やがては成功するのです。

 

より良いコミュニケーションを持つ上で、考えてみるべきポイント

 

  1.いかなる決意をするにしても、どんな動機からするかが一番大切です。では、あなたはどうして、ティーンとのより良いコミュニケーションを望むのでしょう?

  2.経験から言って、良いコミュニケーションを持つ上で障害になるものは何でしょうか?

  3.障害が現れた時、それを克服するために何ができるでしょうか?

 

青春期をかいま見る

 

  青春期とは何でしょうか? 抱き合いながら、「ティーンエージャーがほしいね!」と言う夫婦はいません。初めから子供がティーンエージャーになった時のことなど考えるなら、世界はこれ程多くの人口を抱えてはいないことでしょう!

  青春期とはどんな時期でしょうか? それは変遷の時であって、大まかに言えばティーンエージャー(13−19才)に相当しますが、たいていは、もう少し年若い年令からもう少し上の年令までをさします。青春期を定義すると、思春期の始まりから、完全に大人になるまでの時期で、それは、肉体的にも、社会的にも、精神的にも、情緒的にも、道徳的にも、霊的にも、大きく発達する時期であって、一つの段階から別の段階へ移る劇的な過渡期です。ティーンに関することはすべて、心奪われるほどに素晴らしく、しかも困惑をもたらすものです−−私達にとっても、彼ら自身にとっても。

  肉体的な発達。セックスについての正確な知識と、その明確な意義を教える準備をしていて下さい。身長や体重など肉体的なことについて決して冗談を言ってはいけません。親の中には、皮肉や冷やかしによって、子供を頑張ろうという気持ちにさせようとする人もいます。そういった親達は、太り過ぎや、だらしのなさについてからかったり、プレシャーをかけるなら、子供は良い方向に変わらざるをえないと考えているのです。しかし、こういったプレッシャーをかけるやり方は、憤りや強い反抗心を起こさせるだけです。

  病気についてではなく、健康について考えたり、話したりしましょう。ティーンが気分の悪い時にだけ、彼らに関心や愛情をどっさり与えたり、一緒に過ごしたりするのは間違いです。私達は娘達に、生理が始まったからといってこの世の終わりではないことを教えなければなりません。また、息子達が、擦り傷や打ち傷なんてたいしたことがないと気づくのを助けてやらなければなりません。すぐに良くなるということを強調してあげて下さい。

  社会的発達。ティーンはよく、世界が自分を中心にして回っているかのような印象を人に与えるものです。そして、他の人がその事実に気づかないでいると意外に思うようです。息子の机のところの壁にはこんなマンガが貼ってあります。

 

  子供達は普通、友達をだいたいあるがままに受け入れます−−いぼでも何でも。ところが思春期になると、互いを理想化し始めるのです。子供の頃は、男の子と女の子は互いに軽蔑していたかもしれませんが、この時期になると、異性に興味を持ち始め、異性と一緒にいたがるようになります。特にロマンティックな関係になると、ティーンエイジャーというのは、頭の中で相手を理想化します。自分が「恋」をしている相手は、どの点においても完璧に見えるのです。けれども、こうした恋はあまり長続きしません。じきに、人間としての現実の姿が現れ、容姿や性格や価値観に欠点がある事や、気に障る癖がある事を知ってショックを受けるからです。

  戦法:a)意志の疎通を計る。ティーンが自ら話そうとする時に耳を傾け、質問するのです。ゴールは、いつでも話せる状態にしておき、ティーンがいつでも私達のところにきて、気軽に質問をしたり、気になっていることを話したりすることができるようにすることです。

  b)仲間からの圧力に抵抗する良い手本となること。それは私達も直面することではないでしょうか? 93歳の誕生パーティーの席で、ある老婦人はこう言ったそうです。「90を越して一番素晴らしいのは、自分と同年輩の人達から圧力を受けることがなくなるっていうことです!」 私達は、手本を見せる事によってティーンを助けることができます。

  精神的発達。ティーンのアイディアに耳を傾けるというのは、ティーンの言う事に必ずしも同意するということではありませんが、耳を傾けるなら、私達が彼らのアイディアを尊重しているという事は伝わり、それが励ましとなって、彼らは話し続け、考え続けます。彼らはそうする内に、自ら間違った考えを排除し、何が自分にとって真に重要かをもっとはっきり理解するようになります。

  友達として話す。ちょうど友達同士でするように、自分で大切だと思うアイディアや気持ちについて話すことです。一方通行の会話ではなく、正直で思慮深い、相互間の会話となるよう努めましょう。私達のアンケートに答えてくれた一人の16歳の女子は、次のように書いています。「私は、ほとんどどんな事についても両親と話すことができます。母は本当に素晴らしい人です。私の側の状況を理解できるのです。たとえ私に同意しないとしても。また母が間違った時には、それを認め、正しい時には、時間をかけてその理由を説明してくれます。」

  情緒的発達。時々、ティーンエイジャーの感情は、まるでジェットコースター並です−−自信満々で、意気揚々とし、楽観的で愉快にやっているかと思うと、次の瞬間には、どん底に落ち込み、不安で悲観的になり、意気消沈してしまうのです。私達からしたら、こういう浮き沈みは無意味なものに思われるかもしれませんが、ティーンにとっては、それは現実のものなのです。たとえ、「どうして」そんな気持ちになるのかわからないとしても。

  感情を過小評価してはいけませんら。「元気出して。そんなの憤慨する程の事じゃないよ」と言ってもあまり効果はありません。腹を立てている上に、自分がどうしてそんなに腹を立てているのか、ちゃんとした理由を説明するよう要求されることになるのですから。そうなるとティーンは、大人は鈍いと考えるようになり、ティーンとのコミュニケーションはたいていそこで途切れてしまいます。

  感情の浮き沈みに対して、おおげさな反応を示してはいけません。ティーンエージャーには、情緒的なバランスを得るための自由と時間が必要です。深く強い感情を抱くことは、しっかり機能している人間に欠かせないことなのです。自分の感情を健全な方法で表現し、相手の感情を害するようなこと(相手を傷つけるような感情を言動に表すこと)を避けることを学ぶなら、青春期における非常に重要な課題の一つを達成したことになります。

  道徳的及び霊的な発達。心理学者のデービッド・エルカインドはこう書いています。「ティーンエイジャーは、明確に定義された価値感を必要としている。それを基準にして、他の価値観をテストにかけたりし、自分なりの価値観を発見していくのだ。しかし、彼らの人生において重要な位置を占める大人が、自分自身の価値観をしっかり持っておらず、何が正しく、何が間違っているか、何が良く、何が悪いかについて確信を持っていないと、そのティーンの課題は一層困難なものになってしまう。」 親が、「何が正しいのか私にはわからない」と言うのを耳にすると、ティーンは、「おまえが何をしようと構わない」という意味に取ってしまうのです。

  対策−−a)話す時には誠実に。ティーンは、偽善を見破るのが得意です。

  b)間違いを認めること。自分が完全だと思い込んだり、独善的な態度を取る親ほど、最悪で愚かなものはありません。ティーンは私達のことを知り尽くしているのですから。逆に、自分が基準にそぐわなかった時にそのことを認めて、「悪かった。私が間違っていた」と言うなら、私達の基準の正しさをティーンにもっと納得させることができます。

 

ティーンと話す

 

  ティーンと話をするのがとても難しいのは何故でしょう? それは、ティーンにとって私達と話すのが難しいのと同じ理由からでしょうか? 多くのティーンが抱えている不満の一つは、両親と意志の疎通を計りたいとは思っても、親の言う事や口調のせいで、その気がなくなってしまうという事です。

  次に挙げる幾つかのステップを踏むなら、会話の障害となるものの大半を乗り越えることができ、ティーンと近い関係を保つことができます。

  聞いてもらう権利を獲得する。ジャーナリストのアン・マッカロルが15歳のボブにインタビューした時、ボブは、「僕の母さんはすごいんだ!」と言って、こんな説明をしてくれました。「毎朝、僕が朝食を食べる間、母さんは僕と一緒に座り、僕達は、何でも、どんな事についても話すんです。母さんは、上品だとか、エレガントだとか、教育があるとかでもないし、家事ときたらまるっきりだめで、話す時の文法もでたらめなんだけど、僕のする事には何でも興味があって、僕に耳を傾けてくれるんです。−−忙しかったり、疲れている時でも。」

  一緒に時間を過ごし、興味を示し、耳を傾け、「何でも、どんな事についても」話す−−これこそ、相手に聞いてもらう権利を獲得するものです。

  明確な目的を持つ。誰でもうっかり間違った事を言ってしまうものです。目的も方向も定まっていなくても、舌は、勝手に機能してしまいがちだからです。言葉というのは、私達がそれの及ぼす影響を考えもしない内に口から飛び出してしまうものです。感情のままに何か口走ることによって、一時的な解放感があっても、それにはどんな代価がかかるのでしょうか? 明確な目的を持たずに話すことによって、相手をひどく傷つけることもあるのです。

  会話殺しを避ける。ティーンと何の問題もなくすらすらと会話をしていたと思ったら、突然、ぶっきらぼうな終わり方をする事があります。犯人は、「会話殺し」かもしれません。時には変装している事もありますが、会話殺しは普通、次のような特徴によってそれとわかります。ひっきりなしに話す、矛盾、相手をへこませるような言葉、独断的な発言、非難するような口調、不公平に決めつけるような言い方をする、ちゃんと聞いていなかったことがわかるような答え。たとえば、

  −−いやそれは4.50ドルじゃなく5.50ドルだ。

  −−ティーンの運転はひどいもんだ。

  −−一体いつになったら大人になるんだい? 

  感情を抑える。誰でも、時にはおおげさに反応してしまうものであり、それがすべて悪いわけではありません。しかし、感情の爆発から何か良いものを引き出せることも時にはあるものの、私達の大半は、経験から言って、ティーンと健全な会話を続けていくには自分の感情表現のしかたをコントロールする必要があるということに同意する事でしょう。

  次に挙げる対策は、たいていの両親にとってうまく行くものです。

  −−感情的になってきたら、「タイム」を要求する。もう少しでかっとなりそうになったら、「ちょっと休んで、夕食の後でもっと話そう」と言うと良いでしょう。

  −−イライラさせるようなティーンの振るまいに対しては、感情を抑えられなくなってしまわない内に何か健全な処置をとる。長く待てば待つ程、客観的に反応するのが困難になる。

  −−何のために戦うかを賢明に選ぶ。多くの事は全く戦うだけの価値がありません。“ParentingIsn't for Cowards(臆病では、子育てはできない)"という本の中で、心理学者のジェイムズ・ドブソンは、12歳の娘が頑固で困ると言って相談に来た女性の話をしています。その母親はこう言ったのでした。「私達はこの1年というもの、もう必死の思いで戦ってきましたが、本当にひどいものです! ほとんど毎晩のように口論し、その争いの多くは、同じ事が原因なんです。」 ドブソン博士が、そのいざこざの原因を尋ねると、彼女はこう答えました。「娘はまだ小さいのに、足の毛を剃りたいって言うんです。まだ早過ぎると私は思うんですが、娘はその事で本当に腹を立てて、私に話そうともしないんです。今年は、あの子が生まれてから最悪の年ですよ!」 ドブソン博士は、その母親を見つめて、「娘さんに、剃刀を買ってあげることですよ!」と言ったそうです。(編集者注:ポイントは、12歳になって足の毛を剃りたがるなら剃らせれば良いということではなく、良い関係を築くことの方が、そういった小さな事よりもずっと大切な場合もあるということです。)

  ティーンに時間を投資する。ある調査によれば男性が自分の子供と過ごす時間が、1980年には1960年の2倍になったとの事ですが、そうはいっても、単に6分から12分に増えたに過ぎません。理解を深め、熱心に耳を傾けるのに、たったの12分です!

  忙しいスケジュールの中でどうやったら時間が見つけられるのでしょうか? 答えは、勿論、時間を「見つける」のではなく、時間を作る必要があるということです。次に幾つか効果的な秘訣を挙げましょう。

  −−TVにコントロールされる前に、TVをコントロールする。A.C.ニールソン社は、アメリカの平均的な家庭では、1週間に43時間50分の間TVがついていると発表しています。それは1日に6時間以上です。

  −−スケジュールに優先順序を設ける。私達のペースの速い生活においては、時間をかけるよう「強いる」けれども、さほど重要ではないといったものによって時間を取られてしまう事があります。ティーンと過ごす時間も含めて、自分のすべき事を紙に書き出し、重要性に従って計画を立てるのは助けになります。そうすればティーンとの時間をスケジュールに入れる事ができます‥‥釣り、買い物、外での昼食、あるいはただ話すだけでも。普通、うちのティーンは夜になると話す気分になっています。私は、夜食を持って来て、椅子に腰掛け、友達のように話したり、耳を傾けたりするだけでいいのです。

−−食事時の会話を最大限に生かす。

 

どんなふうに耳を傾ければティーンは話すか

 

  これを聞くと、最初の印象では、耳を傾けるというのはかなり簡単なことに思えます。結局のところ、それは、私達が最初に学び、最も多く用いることですから。(コミュニケーションにおいて、耳を傾けることの占める割合は平均45%で、話すことは30%、読むことは16%、書くことは9%です。)ところが、私達は耳を傾けるのがあまり上手ではありません。「もう一度お願いします」とか「お名前は何とおっしゃいましたっけ?」とか「曲がるのは、右でしたか、それとも左でしたか?」などと尋ねることがよくあります。

  聞くことに関するある研究によると、10分間の口頭によるレポートを聞いて、理解し、覚えているのは、平均してその半分であることが明らかになっています。しかも48時間以内に、その記憶のまた50%が消え、結局最終的に残るのは25%だけだということです。けれども幸いなことに、耳を傾ける技は、努力して改善していくことができます。

  では、大幅に改善していくには、どうしたらいいかに、焦点をあてましょう。

  「うちのティーンは何も話してくれない!」 友達には何時間も話すのに、両親とはほとんど話さないというティーンがいます。ティーンは、自分の考えや気持ちをどう表現したらいいのかわからないことがあります。思っている事を言葉で表現しようとしても失敗するのではないかという恐れもあります。批判されたり、笑われたりすることに対して、彼らは過度に繊細です。そんな時には、話さないことは、対立や屈辱を避けるという目的をもった守勢パターンなのです。

  その問題の一部は私達大人にあるのかもしれません。800人以上のティーンエイジャーを対象にしたアンケートを集計して、私は、彼らが共通して不満に思っている事柄をリストに挙げてみました。ティーンによると、大半の大人は次のようなことをするそうです。

  ・すぐ結論に走る

  ・ティーンが、大人の要望にすぐに応えないと怒る

  ・話をさえぎる

  ・忙しいんだから煩わせないでくれ、といった印象を与える

  ・ティーンに話す機会も与えずに、自分ばかり延々と話す

  ・自分自身の考えや気持ちですでにいっぱいになっている

  ・質問を全くしない

  ・ティーンの考えを知りたがっているとは感じられない

  ・ティーンの気持ちを理解しない

  ティーンに、ごく率直に、この中であなたに当てはまるものに印を付けてもらうのは興味深いことでしょう。ティーンの言いことに対して自己弁護したり、反論したりせず、ただ耳を傾けることです。

  耳を傾けることと聞くこと。こう言ったティーンがいました。「僕の両親は、悩み事があったら来なさいって言うけど、実際に行くと、忙しいか、生半可で聞いているだけで、手を休めもしないんだ−−髭を剃ってるとか、買い物のリストを作っているとか。自分の友達が来ると、ちゃんと、してることをやめて、愛想よくし、耳を傾けるのに。」

  こういった批評は、聞くことと耳を傾けることの重要な違いを指摘してくれます。質問などしながら熱心に耳を傾けるなら、あなたのティーンとの関係がどれほど深まることでしょうか。

  耳を傾ける技術。ここに耳を傾ける技術を磨く為の3つのポイントを挙げましょう。1.関心を向ける、2.意味をはっきりさせる、3.評価する。

  第一に関心を向ける(注意を払う)というのは、ティーンが話している内容をしっかり受け止めることです。私達は次のことを行う必要があります。

  −−ティーンの目を静かに見つめる。(じろじろ見ないこと)

  −−彼らが実際に言っている言葉を聞くこと

  −−例えば悲しい目つきや、神経質な手の動き、こわばった唇など、無意識に現れる信号に注意を払う

  −−できる限り邪魔になるものを取り除く

(例えばTVの音を小さくするとか、ドアを閉めるなど)

  −−口調に注意を払う

  第二に、意味をはっきりさせることによって、相手が何を言わんとしているかがわかります。私達は普通、自分の体験や物事の考えかたに従って相手の言うことを解釈するものですが、私達の体験というのは、ティーンのそれとはたいてい著しく異なっているので、そうするのは好ましくありません。私にしてみれば、宿題には試験勉強も含まれるのですが、ジャドソンに「宿題はあるかい?」と尋ねると、彼は、次の日にテストを3つも控えているにもかかわらず、「いや、ないよ」と答えたのでした。ジャドソンにとって、試験勉強は宿題とは別だからです。

  ティーンの言っていることと、私達の受け取った意味とが同じかどうかをはっきりさせるために、彼らの言った事を言い換えてみたらいいでしょう。(「つまり、    ということかな?」といった具合に。)

  第三に、評価するというのは、集めた情報に基づいてよく考え、どう反応するかを決める段階です。例えば、

  ・もっと多くの情報を求める

  ・沈黙を保つ

  ・自分の気持ちを表す

  ・自分の意見を述べる

  ・言葉を選ぶ

  ・声の調子を選ぶ

  私達はこう自問してみる必要があります。「幾つかの選択があるが、どんな反応をしたら、ティーンと一番正直で効果的なコミュニケーションを持つことができるだろうか?」

  この3つのポイントを実行するなら、ティーンが私達にもっと話すよう励ますことになり、ティーンからも良い反応が返るようになります。

 

  否定的:今日また試験に落ちたの?

  肯定的:今日は学校どうだった?

  否定的:それがいけないと言うのかい? 私が若かった時には‥‥

  肯定的:それについて話してくれないかい。

  否定的:おまえは狂ってるよ。

  肯定的:それは新しいアイディアだね。

  否定的:おまえが一人で興奮してるだけだよ。

  肯定的:このことはおまえにとって大切なことみたいだね。

  否定的:いつかは忘れてしまうさ。

  肯定的:きっと欲求不満に感じた事だろうね。

 

  聞き上手の人というのは、この3つのポイントをふまえて聞くことが習慣になっています。そういった人に話をするのは面白いし、そういう人と一緒にいるのは楽しいものです。あざやかな歯切れの良い言葉を使わないとしても、自分に話している相手から最善のものを引き出す方法を知っているのです。この種の聞き上手を次のように表現した人がいましたが、これは私の好きな言葉です。

 

  考えるに遅く、

  言葉数も少なく、語り口にきらめきもないが、

  彼は友の心に喜びを与える。

  君にも、彼の耳を傾ける様を

    聞かしてあげたいものだ。

 

  間違いを自分で認めるだけでなく、ティーンに対しても認めることが、耳を傾けることの障害を取り除いてくれることもあります。例えばティーンに対してこう言ったらいいでしょう。「今までおまえを無視していたね。本当にすまなかった。赦してくれるかい? これからはもっとおまえに関心を払いたいと思ってる。私がおまえの言うことをちゃんと聞いてないと感じることがあったらなら、どうか教えておくれ。そのことでおまえを悪く思ったりしないから。お父さんは本当に知りたいと思っているんだ。」 しかし、両親にできる事には限りがあるので、ティーンも協力する必要があります。

 

どうしたら良いコミュニケーションがとれるかうまく行かない時にはどうするか?

 

  「コミュニケーション」の語源はラテン語の「コミュニケア」で、それは、「共有する、分け合う」という意味です。それは、メッセージや考えを、言葉や(無意識の)表情や身振りや声の調子といった手段を使って、メッセージや考えを一人の人から別の人に伝える過程の事です。実際には、メッセージを伝える側の人が意図している事柄を、相手の人がしっかり理解して初めて、真のコミュニケーションが成り立ちます。その時初めて、あるメッセージが共有され、互いに通じ合うわけです。

  ある状況においては効果のある言葉も、別の状況ではかえって逆効果になる事もあります。最近、父親とティーンエイジャーの口論を耳にしました。その少年は外で芝刈りを終えて戻って来たばかりで、暑くて、汗をかき、疲れていました。父親は、息子が言われた事をしていなかったことで、ひどく腹を立てていました。両者とも、礼儀を保ったり、相手に耳を傾ける余裕はありません。その結果は、口汚い言葉の激しいやり取りで、二人の関係にひびが入ってしまいました。おそらく、二人共もっと落ち着くまで父親が待っていたなら、それは防げたことでしょう。

  ソロモン王には知恵がたくさんありましたが、一つには、タイミングの大切さを心得ていたことでした。「天が下のすべての事には季節があり、すべてのわざには時がある。‥‥黙るに時があり、語るに時があり‥‥」−−伝道の書3:17。

  私達あるいはティーンが次のような状態にあるなら、それはコミュニケーションに問題が生じる可能性があることを示す警告です。

  ・疲れている

  ・何かのプロジェクトに夢中で忙しい

  ・勉強しているか新聞を読んでいる

  ・何かの問題を解決しようとしている

  ・TVを見ている

  ・友達か他の人達がそばにいる

  ・健康がすぐれない

  ・ふさぎ込んでいたり、むっつりしている

  これらの警告に注意していて下さい。そんな状況に気づいたら、こう言うのがいいかもしれません。「おまえと話したいことがあるんだが、どうやら今は都合が悪そうだね。いつ話せるかな?」

 

  より良いコミュニケーションを持つための具体的なステップ。ティーンとの間に緊張感があると感じたら、何が何でも関係を強めるという決意をして下さい。互いの関係を強めるために、すぐ取り掛かれる事を少なくとも一つ選び、それを実行に移すことです。

  時や場所を誤ったためにコミュニケーションが行き詰まってしまったら、何か創造力を働かせて、自由に話せるような状況を作り出すようにして下さい。(散歩に行くとか、別の部屋に移るとか、外に何かを食べに出かけるなど。)

 

激しい感情に穏やかに応じる

 

  私達両親は、きつい言葉や激しい感情にどう対応するかについて、あまり訓練を積んではいません。ティーンが出し抜けに感情を激しく爆発させると、困惑してしまうことがしばしばです。そしてまた、私達は自分の反応にも驚いてしまうものです。つい、それに腹を立ててしまい、自分の権威を取り戻そうと無駄な試みをするのです。

  ティーンに対して効果のある対応をするのは容易ではありません。コミュニケーションの挫折の深刻さや回数を減らし、理解を高めるために、私達は、覚えておくことの出来る明確な計画を使う必要があります。感情の高ぶりが感じられるなら、両親、ティーンのどちらも穏やかに応答すべきです。ここに6つの提案をあげてみましょう。

  1.あなたの反応を自制する。家庭でみんなの感情が高ぶってくるとどうなるかと尋ねられた時、一人の中学1年生の子は皮肉っぽくこう言いました。「怒鳴り始める。」 私達の調査によると、70パーセント以上のティーンエージャーが、両親が彼らに怒鳴ると不満を述べていました。何人かの両親は、感情の高ぶりが最高潮に達すると、その感情にすっかり押し流されてしまうと認めています。両親は、叫ぶことには大抵なんらかの理由があるからであって(「あいつのせいだ」とか「この子のことで腹が立ってしかたない」など)、「ついそういう言葉が出てしまった」のだと言います。

  私達には感情を抑えることができると私は信じています。感情は思考に左右され、思考は選択に左右されるのです。

  父親が息子に腹を立てて怒鳴りつけている場面を想像してください。電話がかかってきました。非常に重要な顧客からです。父親の声の調子はどうなったでしょう? 彼の言葉づかいは? 彼のものすごい怒りは? それらは選択によってたちまち抑えられました。

  怒り、イライラ、傷心、不安、恨み、妬み、復讐心のような感情に襲われた時、私達は、私達の言葉を注意深く選ぶ事ができますし、また、そうしなければなりません。

  私が出席した育児セミナーで、ある母親は別に恥ずかしげもなくこう言いました。「私は、人前で娘に恥をかかされると、どれほど私がいやな思いをするかを娘に教えたいので、娘の友達の前で、わざと娘に恥をかかせるようなことをすることにしています。」 子供との関係を健全で満足のゆく関係にしたいのであれば、この、攻撃されたらやり返すといった悪循環は避けるべきです。

  悪循環を断ち切る。どんな悪循環にも2人かそれ以上の人がかかわっているものです。パターンが分かったら、いつもするような反応をしないことによって、その悪循環を断ち切る事が出来ます。ティーンの反応をあなたが決定する事はできませんが、その悪循環を断ち切る為に、あなたが言うことのできる言葉は色々あります。

  −−私達の言葉や声の調子はあまり正しくないみたいだ。自分たちが感じていることを、どうしたらもっとうまく表現できるだろう?

  −−私達のどちらも頭を冷やす必要がある。また後で話そう。

  反応を遅らす。どのように話を進めていったらいいのかはっきりしていない時は、少し考える時間を取り、感情にコントロールされるのではなく、自分が感情をコントロールする時間をとる。

  2.いつも穏やかでいる。怒りに対して怒りで反撃するな。

  3.ティーンの見解に耳を傾ける。ティーンにとって、両親が自分に耳を傾けてくれない事ほど、欲求不満にさせられることはありません。

  両親が全く鈍感であったら、ティーンが全く理に合わない事を言っている場合もあります。しかし、その事について互いの言い分に十分耳を傾けないなら、ささいなことで口論したり、本当は意見が同じなのに、言い争ったりしてしまう事でしょう。

  私達が相手の立場に立って物事を見るように努力していたなら、いかに多くの心を裂くような口論が避けられたことだろうかとよく思います。私達がティーンの言い分にしっかり耳を傾け、ティーンの物の見方を知るなら、彼らもきっと、そのお返しに、私達の言い分に耳を傾けることでしょう。

  戦法−−a)感情を理解する。感情が高ぶっている時には、あなたのティーンが感じていることを理解することに焦点をあてる。

  b)質問をする。質問して、ティーンの考えている事や感じていることを引き出すのです。私と同様、皆さんにも経験がある事と思いますが、信頼できる友人に自分の思いを打ち明けて、その友人が親身になって耳を傾けてくれ、真実でない事は取り除き、外れた発言は気にもとめず、肯定的な発言は認め、励ましてくれるといった事をしてくれるまでは、自分でも自分の考えている事や感じている事がはっきりとわからなかったりするものです。ティーンは、私達にそのような友人になってほしがっています。

  c)聞くこと。ティーンは、時に何かにについて私達のアドバイスを求めることもありますが、本当は、ただ私達に話を聞いてほしいのです。彼らは話し相手を求めています。自分の考えや感情を信頼して打ち明けることの出来る人がほしいのです。ですから、ティーンが感情的に高ぶっている時には、私達はまず最初に熱心に耳を傾けるべきなのです。

  「相手の側」を見る事は簡単ではありません。両親とティーンとの間の問題は決して、はっきり黒白に分けることはできません。灰色の微妙な部分がたくさんあるので、私達は出来る限り、彼らの立場に立って、彼らはどんなふうに物事を見ているかを知ろうとしなければなりません。

  4.和解に導く。感情がコントロールできなくなって、怒りにまかせて、ティーンエージャーをひどく傷つけるようなことを言ってしまったら、どうなるでしょうか? 傷つけられたという感情が正しく扱われないと、人間関係にひびが入り、不信と不和の原因になります。私達が最初に和解を導かなければなりません。私達は、こんなふうに聞いてみなければなりません。「この問題の責任の一部は私にある。赦してくれるかい?」と。そうすれば、傷がいやされ、良い関係を取り戻すことができます。

  二人の人の間で問題が起きた場合、その内の一人だけの責任ということはごく希です。ほとんどの場合、両方に責任があるのです。先に上げたような言いかたをすると、傷がいやされ大きな効果があります。自分一人だけの責任だなどと感じる事なく、正直に、そう言うことができるからです。そして赦されると、過去に縛られることなく、新しくやり直すことがでるという、素晴らしい解放感を味わうことができます

  5.言葉で自己防衛することを学ぶ。中には、意地悪なことを言いがちなティーンもいます。わざと、人を傷つけるようなことを言うのです。口頭攻撃をかけてくる理由は、劣等感によるものから、権力が欲しいといった歪んだ考えによるものまで色々です。しかし原因が何であれ、彼らはもっぱら、傷つきやすい所を見つけては両親を苦しめるようになります。

  以下の原則を念頭においておくなら、言葉によって効果的に防御することを、楽に学ぶことが出来ます。

  −−主導権を握る。主導権を握っているのは親であって、親が、家族「会社」の社長です。だから、静かに、自分のものである権威を行使する事です。権力闘争に加わって、自分のほうが上だという事を証明しようとしてはいけません。ただ、自分の方が上だと思い込むのです。心の中で、親として自分の占める地位を知っておかなければなりません。

  −−大声をあげない。怒鳴ったり、喧嘩ごしになるのではなく、しっかり落ち着いた確固たる態度をとることによって、強さを示すことができます。怒鳴ることは、あなたが自制心を無くしたという証拠で、逆効果です。

  振る舞いの模範になる。ティーンは大人のすることを真似るので、自分が扱われたいように彼らを扱おうと決意することは非常に大切です。

 

  欲求不満。 ティーン:いつもあれしろこれしろと言われるのはもう真っ平だ! 僕はもう16才なんだよ、お願いだから、もう放っておいてくれ!

 

効果のない応答

  親:こっちこそ、同じことを何度も何度も言うのはもう御免だ! 責任感のある16才の子ならもうとっくにしている事だぞ!

 

効果のある応答

  親:キム、お父さんだって、おまえにいちいち言うのは好きじゃないさ。だが、この家族がうまくやっていくためには、ちゃんとなされていないことについて、何かしなければならないだろう。この問題を解決するために、何か提案はあるかい?」

 

  6.ティーンが正しいときはそれを認めよ。 あなたとティーンが口論をしていて、ティーンのほうが正しいということが分かってきたとします。

 

  私は、父が「おまえの方が正しかったよ。」とか「ポール、たぶんお父さんが間違ってたな」と言ってくれたたことで上機嫌になったのを覚えています。自分が勝利した、ティーンである自分にも筋の通ったことを言うことができた、大人と同じレベルで話すことができた、正しいポイントを指摘することができたという気持ちから上機嫌になったのでしょう。そうすると、自分に自信がつきました。しかし大抵の場合、そうやって自分が勝ったという理由だけで上機嫌になるのではありません。父も勝利した、つまり父も、いつも自分が正しいと証明しなければならないという頑固なプライドを克服したということから上機嫌になったのです。父は、自分の過失を認めることができるほど強くしっかりとしており、私はその事で父を尊敬しました。

 

両親の権威:いかにイエスやノーを言うか!

 

  「現代の若者は全くの礼儀知らずで、権威をあなどり、目上の者に対して何の尊敬も払わない。大人になった時に、どんなにひどい人間となることだろうか」−−ソクラテス、紀元前399年

 

  どの時代にも、ティーンの親はどのように自らの権威を行使するかについて悩んできました。親の権威に関する6つの原則を適用するなら、親はそれほど多くの間違いをせずにすみ、効果的にイエスやノーを言う確率が増えます。

  原則1:目標に応じて決断する。基準もなしに決断するなら、親はわけがわからなくなり、一貫性に欠け、次に何を言うべきかもわかりません。目標があるなら、親はそれを基準にして、適切な言葉や態度を選んでいくことができます。目標が、私達のコミュニケーションを望む通りの方向に導いてくれます。私は次の目標が役に立つ事を発見しました。自分の子供にいかに賢い決断を下すかを教え、それについては自分で責任をとるよう訓練すること、これが目標です。

  私達がティーンの成長の為に目標を定める時、ティーンと一緒にそのことを話すのは非常に大切です。ティーンは、私達が彼らの天性の自立心を頼もしく思っており、彼らに成熟した立派な大人となってほしいと望んでいることを知る必要があります。

  あなたの親としての目標を明記する(書く)のは良い事です。特に、あなたのティーンがだんだん自立していく事に関する目標を、明記する事は。それについては熱意を持って話すようにしましょう。そうすれば、ティーンも、あなたの決めた規則のことを、専制的で不公平で無意味なものだなどとは思わず、むしろ自分がやがてすっかり成熟し、自立した大人となるのを助ける為のものだと理解します。

  原則2 力ある関係を築くこと。両親の権威を効果的なものとしたいなら、何らかの力に支えられる必要があります。子供がティーンの年ごろになると、親とティーンとの間に良い関係がある場合に、親は一番権威を持つことができます。

  ティーンが恐れではなく、尊敬の念を持つならば、それは親子関係を支える力となるのです。自分の側だけではなく、彼らの側からも物事を見てみるようにし、彼らと時間を過ごし、私達が彼らを愛していることを知らせることによって、そういう力に支えられた関係を築くことができます。力ある関係といっても、しつけをしないとか、必要とあれば当然すべき処置を取らないとかいう事ではなく、そうしたことも大切です。ただ、脅したり、屈辱を味わわせたり、怒鳴ったり、暴力に訴えることはしないのです。

  原則3 効果的な子育て法を選ぶ。権威をもった(民主的な)親は子育てにおいて、厳しく柔軟性のある権威を持ち、それに、ちょうど良い量の自由を混ぜ合わせます。権威をもった親は、子供の個性や物事のやり方を容認しますが、同時に、子供に、振る舞いや態度、会話、親子関係の質などといったことで基準に達するよう求めます。権威のある親は子供に、好きでないとか、納得のいかない規則について話すチャンスを与えます。そして、話し合いの結果、親は、もしもその規則を変更するだけの十分な理由があるなら、そうしますが、子供やティーンの望むままにするようなことはしません。

  親の態度がどんな違いをもたらすかについての際立った一例として、大学生のマリファナの使用に関する調査の結果を見てみましょう。放任主義の親をもつ学生の間ではマリファナを吸う率が最も高く、次に親が君主的であるとみる学生の間ではその率は中ぐらいで、一番率が低かったのは、両親が民主的だと思った学生達でした。

  もし私達の子育て法があまり効果をあげていないようなら、今こそ、望むように方法を変え始める時です。過去に犯した間違いについていつまでも自分を責めないようにしなければなりません。もう済んでしまったことなのですから。

  原則4 尊敬を持ってしつけをする。ほとんどの親はティーンエージャーには、まだしつけが必要であることに同意すると思いますが、しつけと罰とをよく混同してしまいます。この二つは同じものではありません。もちろんしつけは大切で、出来るだけすべきですが、他の手を使ってもうまくいかないのであれば、あるいは、子供が全然変わらず、要点を飲み込ませるために必要とあれば、悪い行いに対して罰を与えなければならない時もあります。しつけは、指導し、訓練し、注意する言葉や行動です。しつけ(discipline)は弟子(disciple)という言葉と同じ語源から出ており、その意味は「学ぶ者」です。しつけとは好ましい変化をもたらすために親の権威を積極的に用いることです。

  原則5 穏やかに「だめ」と言う。 「はあ、もちろんやってみますけど、私が十代の子供に『だめ』と言った後、その子が私に怒鳴ってきたら、いったいどうやって平静を保てというのですか? まわりが混乱だらけで、皆の怒りの原因が私にあるかのように感じさせられたら、どうやって平静を保てというのですか?」とあなたはおっしゃるかもしれまん。

  「だめサンドイッチ」を使ってください。必要なら「だめ」と言っても構いませんが、その否定的な返事が相手に与える衝撃を和らげるために、二つのクッションとなる言葉を使って、それをはさむのです。

 

例:

  1.お父さんに賛成してほしいんだろう。

  2.だが、お父さんはその事をちょっと違った観点から見ているんだ。

  3.お父さんは、おまえが自分の見解を持つ権利を認めてるんだから、おまえも、お父さんが自分の見解を持つ権利を認めてくれないかな。

   + + +

  1.ピーターの家のパーティーに行きたい気持ちはわかるわ。

  2.でも、だめよ。ピーターのところのパーティーではみんなが麻薬をやるってことは、あなたも知ってるでしょう。

  3.ここであなたが友達の為にパーティーをするのだったら大歓迎よ。なんだったら、喜んでスナックの準備を手伝うわ。

   + + +

  「こわれたレコード」のテクニックを試す。 「だめサンドイッチ」をやってみても、ティーンが尚あなたをコントロールしようとし、あなたの考えを変えようと躍起になっているなら、あなたはただリラックスしたまま、ティーンがあなたの言うことを受け入れるまで、だめを繰り返すか、穏やかながらも確固とした声の調子で、だめだということを短い文で言うことです。例えば、「さっき言った理由で、あなたはそのパーティーには行けないと決めたの。」と繰り返すのです。皮肉を言ったり、もううんざりだといった態度はとらないでください。

  原則に従って決めること。プレッシャーに負けない。原則や価値観や目標が定まっているなら、いつだめと言い、いついいと言うべきかを知る助けになります。それを自分の頭の中ではっきりとしたものにするには少しの時間と努力を要しますが、一度決めてしまうなら、その原則に基づいてだめ(またはいいよ)と言うことが比較的楽になってきます。プレッシャーに負けてはいけません。そんなことをすると、親が屈するまで、どんどん親にプレッシャーをかけなさいと教えているようなものです。

  穏やかに応じることの練習。あなたのティーンはあなたが怒っている時だけ反応するように「プログラム」されているかもしれないので、これを学ぶにはかなり時間がかかるかもしれません。ティーンに、あなたが応答の仕方を今変えているところだと教える必要があるでしょう。なぜだか説明しなさい。そして、あなたが平静である事を、決断力の無さや、優柔不断のしるしだと考えるのは間違いだと。出来ればティーンに協力をしてもらって下さい。それから色々な方法で穏やかにだめと言う練習をしてみて下さい。

  「すごく大切だって言うことは分かるわ。だから、いいって言ってあげたいけど、そういうわけにはいかないの。やっぱりだめよ。」

  「確かに、おまえの年代の子はみんな飲んでいるかもしれないが、おまえは彼らとは違う。おまえはおまえだ。それにおまえは、お父さんの息子だ。今話した通り、だめだ。」

  「交渉に応じることができる時には喜んで交渉に応じるつもりでいるが、今回のはそうはいかない。残念ながら答えはノーだ。」

  原則6 ティーンの事を支持する。だめと言うことを決して習慣にしてはいけません。私達はできる限り、信任投票を投じてティーンを支持し、ティーンに色々試みさせ、時には失敗させることも必要です。

  私と私の妻は、子供が健全な自信をつけるのに役立つと思うことには何でもイエスと言います。人が何と言おうと、自分には生来の価値や尊厳があると信じることができるほど精神的に強い子供になってほしいからです。私達は子供達に、自分には自分の役目をちゃんと果たすことができ、自分の価値ある目標を成し遂げるだけの能力がある事を知ってほしいのです。

 

  より良いコミュニケーションを持つための具体的なステップ

  1.ティーンの成長に関する、あなたの真の目標について考え、それを書き留める。それから、それが親として自分の望む方向だと満足が行くまで、それを色々変えていく。この文を完成する。私の目標は:

 

  2.ティーンとの関係を深めるために今週したいことを3つリストにする。(例:一緒に時間を過ごす。買物に行く。または一緒にハンバーガーを食べに行く。)

  a.

  b.

  c.

 

性格がいかにコミュニケーションに影響するか。

 

  性格の違いを認める。あなたとあなとティーンは気性が似ているかもしれませんが、たいていの場合は、異なっていることでしょう。それでも問題ありません。ただ、あなたのティーンを型にはめて、そのティーンが個性を発揮できないなどということがないよう気をつけなければなりません。性格の違いがあって当たり前だと認識しないなら、ティーンを自分の生き写しにしたいというワナに陥ってしまうことでしょう。ティーンは個人として尊重されるべきです。彼らをありのまま受け入れてやるなら、ティーンも気が楽になって、それほど構えなくなり、私達の性格の好きではない部分も受け入れてくれるようになるでしょう。

  選択的な物の見かたに注意する。自分の性格のせいで、私達は、現実をありのままに見るのではなく、フィルターにかけてティーンを見るようになってしまいます。学校の教師や警察官は、自分のティーンは悪いところがあるということを見ようともしなければ、信じようともしない親がいると愚痴をこぼします。子供が何か悪いことをしても、いつもその子の責任ではなく、誰か他の人のせいだとするのです。一方、この性格フィルターを通すことによって、親が子供の持っている素晴らしい長所を見逃してしまうこともあります。もしあなたが実務的なタイプで、子供は人に好かれるタイプであるとしたら、子供がいかに友情関係を築くのに優れていても、それを長所として十分認めてやることはないかもしれません。私達が子供の本来の性格に見られる長所を理解して初めて、子供の長所がわかり、その良い所を引き出す事ができるのです。

  オープンに話す事の練習。誤解がしっかり解けていないと対立が生じます。オープンなコミュニケーションは事の核心にせまります。受け身的なものではありません。オープンなコミュニケーションを持つなら、ティーンが私達の言うことが好きではな

いかもしれないという恐れを克服することができます。オープンなコミュニケーションというのは、正直で、率直で、真実を語るコミュニケーションなのです。

  両親のチームワークの必要性。第一に、基本的な子育ての方針に同意する事。もし子供達の前で何かの事で深刻な意見の食い違いが出てきてしまったら、私達は子供達に、パパとママはその事について話し合う必要があり、後で子供達ともその事で話し合うようにする、あるいは、私達の決めた事をいえると説明します。これは別に嘘をついているわけではなく、賢明な事です。互いの権威を傷つけてしまう事は、両親がコントロール力を失っていく過程の最初の一歩です。子供達は、どちらかの側につく事ができると考え、「分割して征服」できるんだと思ってしまうのです。子育てにおいては、「正しい」事よりも、親に団結がある事の方がもっと大切です。

  第二に、夫あるいは妻の弱点を補う。もし私の妻と私が全くそっくりなら、一人は必要でなくなってしまいます。しかし、私には妻の助けが必要で、妻は私の助けが必要なのです。ですから、私達は努めて、互いに批判的にならないようにします。相手を批判しても結局、何の益にもならないということを経験から知っているからです。その代わりに、私達は互いの弱点を補うようにします。

  第三に、夫あるいは妻の長所を引き出す。性格やコミュニケーションの上での悪い癖を直す為に、私達のほとんどが助けを必要とします。そして、夫や妻以上に私達を助けることのできる人はいないといっていいほどです。人が私達の長所に焦点をあててくれると、良い方向への強化の法則が働きます。つまり、自分の長所をほめてもらったりすると、私達は励まされて、その長所をのばし、そういう良いことをもっと頻繁にやろうと努力するようになり、たとえ失敗してもまたやり直そうと思うようになるわけです。幸いにも、それは私達の伴侶にもうまくいくのです。

 

意見の対立を解決する

 

  あなたの意見を穏やかに表現する。「こうこう思うのだが‥‥」や、「私が思うには‥‥」と切り出し、それから穏やかにあなたの意見を手短かに話します。目標は、ティーンが自分自身の意見だけでなく、私達の意見も理解できるように助け、一緒に問題を解決するように励ます事です。

  「登校前の朝の時間はあまりうまく行ってないんじゃないかな。怒鳴ったり、時間ぎりぎりにドタバタするのは何とかしてやめなくてはいけない。お互いにカッカとするのはいやだろ? だから、朝食を六時半にするなら、そんなに慌てなくてすむ。」

  「おまえは十分睡眠を取っていないようだね?過労は他の面にも影響が出てくるんだ。健康や性格、成績まで。何もかもがうまく行かなくなってしまう。だから、翌日学校のある日は11時までに寝るようにするのは、いい考えだと思わないか?」

  「一緒にこの問題を解決しよう。私達両方にとって良い案を、君にも言ってもらいたいんだ。」

  穏やかな話し方が強調されている事に留意して下さい。意見が対立したり、緊迫状態にある時に、穏やかに対処する事に慣れていないのでしたら、あなたは新しい習慣を築く為に一層努力しなければなりません。しかし、それを習慣にする事は可能です。怒鳴ったり、叫んだりする古い方法がうまく行っているかどうか、自分で吟味して下さい。それは、あなたとティーンがお互いに近くなるのに役立っていますか? それとも、仲を引き離していますか? 相互理解を深める助けになっていますか?それとも、それを破壊しているでしょうか?

  ここに幾つかの例を挙げて、どのように意見の対立を解決したらいいか、またどんなふうにすると解決にならないかを示したいと思います。

 

問題点:門限

  15歳のティーン:俺、今夜遅くなるよ。試合の後、ジャックの家でコンパがあるんだ。

 

論的な会話

  親:今夜は、遅くなったら駄目だ。11時までに家に帰らないといかんぞ。

  ティーン:そんなのないよ!

  親:口答えするんじゃない! 聞こえただろ!

  ティーン:お父さんは、何にも分かってないんだ。

  親:いや、良く分かっているさ! おまえの方が、親の言うことを聞かないんだろう! 等々....

 

解決に導く会話

  親:遅くなるって何時ごろになるんだ?

  ティーン:1時ぐらい。

  親:翌日学校がある日の門限は11時なのに、そんなに遅くまで外出したいと言うのか?

  ティーン:それはわかっているけど、僕、一番初めに帰りたくないんだ。

  親 :一番初めに帰りにくいのは、よく分かるよ。かっこ悪いからだろう?

  ティーン:そうなんだ。

  親:おまえは、ここ幾晩か夜ふかししてて、疲れた疲れたと言っていたと思ったが、そうじゃないか。だから辛いかもしれんが、11時までには帰宅するようにしてほしい。

 

問題点:お手伝い

  13歳のティーン:ジュディーのうちで、CDを聞いてきま〜す!

 

論的な会話

  親:お手伝いはもうすましたの?(否定的な声で)

  ティーン:今したばっかりよ!

  親:じゃ、自分の服もたたみなさい。

  ティーン:ママ、私、する事があるのよ!

  親:5分あったら、出来るでしょう?

  ティーン:いやよ! (ぶつくさ言う)

  親:さっさと自分の部屋に行って、しなさい!

  ティーン:(戸をバタンと閉めて、出て行く)

 

解決に導く会話

  親:お手伝いはもうすました?(肯定的な声で)

  ティーン:どの?

  親:今朝、話してた仕事の事よ。

  ティーン:う〜ん、少しはしたわ。

  親:ジュディーの家に行って来たいって言ったけど、するって約束した仕事を、まだ、し終わっていないわよ。

  ティーン:でも、もう夕方だから早くいかないと、時間がなくなっちゃうわ。

  親:そうね、時間があまりないわね。それなのに、たくさんしなければならない事があるから、いらいらしているのね。そうでしょ?

  ティーン:そうそう!

  親:あなたがもっと早く始めていたら、今頃はとっくに終わっていたと思うけど、どうかしら?

  ティーン:まあね。

  親:すぐに取り掛かるなら、たいして時間はかからないわよ。さぁ、しちゃいましょう。

  ティーン:わかったわ。

 

問題点:音楽

  17歳のティーン:(ロックを大きな音でかけている)

 

論的な会話

  親:そんな音楽は大嫌いだ! 消しなさい!

  ティーン:僕は好きだよ!

  親:そんなのは悪魔的だと聞いた事があるぞ。

  ティーン:害なんかないさ! みんなこれを聞いてるよ!

  親:おまえは聞くんじゃない!

  ティーン:どうしてだい?

  親:消せと言ったら、消すんだ!

 

解決に導く会話

  親:トム、その曲の歌詞はひどいものじゃないか。

  ティーン:歌詞なんか聞いていないさ。このサウンドがいかすんだ。

  親:そうか、このグループのサウンドは若者達に受けているんだってな。

  ティーン:これを聞くと、本当にのってくるんだ。

  親:おまえが、このサウンドを気に入っているのは分かるが、知らず知らずの内に、この歌詞がおまえの頭にこびりつくんじゃないかと、心配しているんだ。一緒にその歌詞を聞いてみよう。そうしたらお父さんの言いたい事が分かるだろう。

 

  意見の対立がある時の注意事項の要約は、次の通りです。

  1.時間をとって、真の問題が何かを見いだし、明らかにする。

  2.口論を避けるために合意できる点を捜しだし、解決を望んでいるという事を相手に示す。

  3.相手の気持ちを理解しようと、熱心に耳を傾ける。

  4.あなたの見解を穏やかに、しかも確固たる態度で告げる。

 

結婚:誰と?

 

  少々学問的な響きがあるかも知れませんが、精神病医ハリー・スタック・サリバン博士は、次のような言葉で愛をうまく言い表しています。「人が、他の人の満足と安心感を、自分自身のそれと同等に重んじる時、そこには愛が存在する。」 しかし、殆どのティーン達は、なお幾つかの疑問を持っています。「もし、二人以上の人に愛を感じるなら、どちらと結婚すべきなのか、どう判断するのか? 自分には特別に好きな人がまだいないのは、自分のどこかがおかしいからなのか? 友達が私に恋してても、私が彼に対して同じような気持ちを持っていなかったら、どうしたらいいのだろう? 自分に結婚する準備が出来ているかどうか、どうやってわかるのだろうか? 誰と結婚すべきなのか?」

  このような疑問の答えは簡単に出せません。そして、誰と結婚するかという大きな決断をする前に、数多くの小さな決断をする必要があります。

  結婚について考えてみるべきポイント。

  −−恋に「落ち」たり、熱が冷めたりするのは、ティーンにはよくある事です。デートは、様々な人とかかわり合いを持ち、異性との関係において本当に大切な事柄は何かを学ぶのに絶好の機会です。

  −−心理学では、「類は友を呼ぶ」と言います。幸福な結婚には、共通点を持っている事−−信仰、学歴、家族や育ち、興味や趣味などが似ていること−−が大切な要素になります。

  −−多くの実例からして、結婚生活で生じる問題は、結婚前に付き合っている時に既に発見できるようです。だから私達は、人の行動や性格を見分ける基準となる価値観をティーンに教えるべきです。そうすればティーンは、早い時点で将来の問題を察知することが出来るようになります。

  −−1870年には、34組の夫婦につき、1組が離婚しました。2世代前には、12組に1組。前の世代では、3組に1組。今日では、ほぼ2組に1組の結婚が破綻してます。(過去10〜15年の統計より) 私達自身の結婚が、この悲しい統計の一部分にならないようにするには、どうしたらいいでしょうか?

  −−ニック・スティネット、ジョン・デフレイン両調査員は、三千の家族を調査した結果、家族のきずなの強い家庭には六つの特徴がある事を見い出しました。そうした家庭の人々は

  −−家庭に献身している

  −−一緒に時間を過ごす

  −−家庭内に良いコミュニケーションがある

  −−お互いに感謝を示す

  −−信仰を持っている

  −−危機的な問題を解決する能力がある

  −−幸福な結婚生活を30年以上送っている夫婦を対象に調査をした結果、彼らに共通する点は何だったでしょか? 良いコミュニケーションです。相手の話に熱心に耳を傾け、自分の考えや感情を心配せずに自由に話せるのです。

  −−多くのティーンは、愛と恋の違いがはっきりと分りません。ある若い女性の質問への回答として、アン・ランダース女史はこの二つの違いを次のように説明しました。

 

  「恋は、ぱっと満開になりますが、愛はゆっくりと根を張り、毎日少しずつ成長して行きます。恋には不安がつきもの。わくわくし、心躍らせますが、心から幸福だと言うわけではありません。彼と一緒でないと、悲嘆に暮れてしまいます。また会うのが待ち切れなく感じます。

  愛には、まず安心感があります。彼と一緒にいない時でも、彼がすぐ近くにいるかのように感じ、幸せに思います。遠く離れていても、二人の間に隔たりはありません。彼にそばにいてほしいと思いますが、そばにいようといまいと、彼が愛してくれていると知っているので、待つ事ができるのです。

  恋はこう言います。『彼を失ってしまう危険なんか犯したくないの。だから今すぐに結婚しなくっちゃ。』 愛はこう言います、『慌てるには及ばない。』と。お互いに信頼しあっているので、安心して未来設計をする事が出来るのです。」

 

  相手に話させるような会話の導きかた。ティーン達が結婚について興味があるようなら、あなた自身が「ふさわしい相手」を探していた時の体験談を話したらいいでしょう。面白かった事や、失敗談、その時に抱いていた感情や希望、夢などを話すのです。ただ、話しに夢中になってしまって、永遠に話し続けてはいけません。

  結婚相手がどんな人格の持ち主である事が大切か、ティーン自身が考えるように励まして下さい。

  ティーンが話す気分になっている時を見計らって、いろいろ質問したり、批判的な口調にならないようにいろいろ話したりながら、ティーンが話し続け、新しい発見をし、どんどん学べるようにすることです。こんなふうに言ったらいいでしょう。

  「あなたにとって、彼との関係はとても大切みたいね」

  「ケンの言ったことが心にひっかかってるようだけど‥‥」

  「おまえが誰かにこんなに熱を上げるのは見たことがないぞ。ナンシーは特別みたいだな。」

  「結婚相手に望む性格について、いろいろ話していたけど、健全な結婚に特に不可欠なのは、どんな性格だと思うかい?」

  あなたの価値観について話してあげて下さい。あなた自身、幸福な結婚には何が大切か熟考した後、ティーンと一緒にそのことについて話し合ってみることです。彼らが質問するように励まし、また彼らの言う事を傾聴するのです。

  妥当と思うなら、ティーンの聞いている前で、未来の結婚の為に祈ってあげると良いでしょう。ティーンの中には、両親が自分のために祈るのを一度も聞いた事がない者もいます。そうした祈りは本当に力や導きを与えてくれるものなのに、彼らにはそういう経験が全くないのです。あなたのティーンの為に、また、あなたのティーンがいつの日か結婚するようになる人の為にも祈ってあげて下さい。

 

  「主よ、私は自分の息子(あるいは娘)の為だけでなく、その結婚相手となる人の為にも、あなたの祝福を求めます。たった今、彼らをあなたの御心の中心に保って下さい。二人が一緒になった時、お互いに対して一生忠誠を尽くせるように恵みをお与え下さい。日々互いに対する尊敬をつちかい、愛が強まりますように。そして、いつも赦し合い、互いの一番良いところを引き出すことができますように。順境の時だけでなく、苦難の時にあっても、お互いに心を開いて話し合う事が出来ますように。イエス様、あなたへの信仰によって、二人が困難を乗り越え、人生の喜びと幸福を共にすることができますように。アァメン。」

 

ティーンが親から期待する言葉

 

  私はある調査で、両親からどんな言葉を期待するか、800人以上のティーンに尋ねました。そして、その答えから、五つの言葉があがりました。

  I.「おまえを誇りに思う。」 あなたが両親に「おまえの事を誇りに思うよ」と言われた時、どんなに嬉しかったか覚えているでしょうか? あるいは、「おまえの事を誇りに思う」と言われた事がほとんどなく、とてもがっかりした事を覚えているかも知れません。両親から、あなたの容姿や達成した事で褒められた事はあっても、実際に「おまえを誇りに思っている」と言う言葉は一度も聞いた事がないのかも知れません。

  物心ついた頃から、人は常に両親や尊敬する人に褒めてもらおうとします。就学前の児童は、絵をかくとすぐに、褒めてもらおうとして母親の所に走って行きます。小学生がテストで満点を取るなら、その子は必ず両親に報告します。褒めてもらえるに決まっているからです。中学生はよく変てこなヘアカットをします。それは、仲間に認められたいからです。高校生になると、異性から意識されたいと思うようになります。しかしティーンにとって、両親から認められる事は何よりも重要です。それは、自己を形成し、良い意味での自信を強めるのに欠かせないことなのです。

  両親は、ティーン本人の努力や能力のゆえに、その子を誇りに思うべきであって、決して他のティーンと比較するべきではありません。フットボールチームに入り、毎日欠かさず練習に出ているなら、たとえその子が試合の度にベンチに座っていても、やはりその子の事を誇りに思うべきです。ティーンが次のように頑張っている時には、いつでも「おまえを誇りに思っているよ」と言ってあげて下さい。

  −−自分で立てたゴール達成の為に余分の努力をしている時

  −−仲間からの圧力に負けず、自分自身の決断を下す時

  −−間違いから学んで、再度、試みようという態度を持っている時

  −−自分の才能をフルに活用している時

 

  「おまえを誇りに思っている」と言うなら、ティーンは励まされ、より高い目標を立ててそれに達しようと奮闘します。それによって彼らは自己の可能性に対する自信をつけるのです。「おまえを誇りに思っている」と言えるチャンスを決して逃してはいけません。

  II.「いつでも、どんな事でも話しにおいで。耳を貸すから。」 良い聞き手になる事こそ、良いコミュニケーシュンを確立する上での最初のステップだと言う事には、私達全員が賛成すると思います。ティーンにとって、こうした言葉は大きな助けとなります。そういう言葉を聞くなら、親のほうが、耳を傾けるという最初の一番大切なステップをとってくれると安心することができるのですから。話しても両親が聞いてくれないというのが、ティーンが自分の殻に引きこもってしまう主な理由です。そして、ティーンを知るチャンスを見逃してしまう余裕など、あなたにはありません。

  ティーンに心を打ち明けさせる為に決して忘れてはならないルールを、ここに挙げて置きます。それを読むなら、両親にどんな聞き手になってほしいとティーンが期待しているかが、はっきりとわかるでしょう。

  1.全関心を注ぐ。つまり、料理したり、新聞を読んだり、テレビを見たり、何か他の事を考えるのをやめて、ティーンの話に全神経を集中するのです。

  2.耳を傾けようとしている時には話さない。良い聞き手と言うのは、自分ばかりが話すことはしません。時には、わざと何も言わずに、神経を集中させて耳を傾けることによって、相手の立場に立って理解しようとしていることが伝わるものです。

  3.バカにしない。ティーンは非現実的な夢やアイデアを持つものです。しかし、中にはとても新鮮で挑戦に満ちたのもあります。もしあなたが批判的だとして知られているなら、ティーンがあなたに、自分の夢やアイデアを話してくれることはないでしょう。

  4.理解しようとしながら聞きなさい。ティーンの言いたい事を完全に理解する事を目標とし、それを達成しようと努力するのです。

  ティーンの話しに耳を傾けようとしない事の危険性について触れる事も重要でしょう。両親がティーンの話を聞こうとしなかったり、聞いてても上の空であるような印象を与えるなら、ティーンはそれを、以下のように否定的に解釈してしまいます。

  「おまえなんか、たいして重要じゃない。」

  「おまえが何に関心を持っているかなど、どうでもいい。」

  「この子の話を聞くよりは、どこか他の場所に行った方がましだ。」

  「おまえの話に聴き入るほど、愛してなんかいない。」

  もちろんほとんどの両親はそんなつもりではありませんが、ティーンに対してそんな風に伝わってしまいやすいのです。そんなふうに上の空で聞いているなら、会話が台なしになり、それ以後、コミュニケーションがなくなってしまうこともあるということを覚えておいて下さい。

  ティーンが自分の問題について自由に話さない時には、それを第三者に話すように励ます事で、間接的に彼らを助ける事も出来ます。まだ問題がない時にティーンにこう話しておくのです。「お父さんはいつでもおまえの話を喜んで聞いて上げるよ。でも何かの理由で、どうしても私に話せない事がある時は、誰々さんにぜひ話してほしい。誰々さんはおまえから聞く事は何も口外しないと約束してくれた。私にさえも口外しないと。だからおまえに助けが必要な時は、誰々さんができる限りの事をしてくれるだろう。いいかい?」

  III.「おまえの言う事は良く分かるよ。」 または、「理解したいと思っている。」 ティーンを理解しようと努める時に目指すべき三つの目標をここに挙げます。

  1.例え、見解が異なっていたとしても、ティーンの言い分にも理解を示す。

  2.ティーンが何かの問題を持っていたり、何かを要求している時には、親が自分の結論を出す前にまず、その背後にあるティーンの動機や願いを探ってみる。

  3.「分かってないんだから」と非難させておくのではなく、そのティーンの事を愛し、気づかっているからこそ理解したいと思っているということを言って、あなたがティーンの身になって考えようとしていることをわからせる。

  しかしながら、理解を示そうとする事には複雑な一面があります。浅はかな理解のし方では、かえって事態を悪くしかねません。あなたがティーンに、「あなたの気持ちはよく分かるわ。」と言ったら、「お母さんなんかに、わからないわ!」と言う答えが返ってくることもまれではないでしょう。理解していないと責められたら、分かるように説明してくれるようにティーンに頼むことです。その原因が意見の不一致なら、ティーンの言った意見をティーンが満足するよう繰り返してやり、それからあなたの意見をもう一度言ったらいいでしょう。また、どうしてもティーンの気持ちがよく分からない場合でも、あなたが少なくとも理解しようとベストを尽くしている事がティーンに伝わります。

  IV.「おまえを信頼しているよ。」 信頼とは序々に築かれていくものです。門限の時刻を決めようとして、親とティーンの間で意見が別れたとします。ティーンが、「僕を信用してないんだろう」と言うと、親は言葉に詰まってしまいます。親はその子を信用していないとは言いたくありませんが、門限を定めるからには、やはり全面的には信用していないようだからです。この場合、次のように説明すると良いでしょう。「おまえが悪いことなどするつもりじゃないということは信じている。しかし、夜中の12時過ぎまで外にいると、いろいろな誘惑も大きくなってくる。そしてそれは、今のおまえには手に余る程のものなんだ。そんな誘惑におまえをさらすなら、私は親としての責任を果たしていない事になる。だからやはり幾つか制限を設けなくてはならないんだ。」

  良いバランスが必要です。信頼している事を証明する為に、ある程度、信用してあげなくてはなりません。ティーンがしくじっても、心から済まなく思っているならば、その後で必ず第二のチャンスを与えるようにすることです。(と言っても、ティーンに罰を与えずに済ませるべきだ、と言う意味ではありませんが。)

  「おまえを信頼している」と言う親の言葉は、ティーンにとって特に大きな意味を持っています。ティーンは、その言葉によって自分が信頼に値する人間だと確信するのです。彼らはその言葉を忘れません。「お父さんとお母さんは僕を信頼してくれているんだ」と思い、その信頼に応えようとします。彼らは自分自身にもっと確信を持ち、大人に成ったように思うのです。

 

  V.「愛してるよ。」

  お父さんが「愛しているよ」って、もっと言ってくれたら良いのに。友達がそれを聞いたら私が恥ずかしがるとお父さんは思っているみたいだけど、私、絶対に恥ずかしいなんて思わないわ。−−スーザン(17歳)

 

  健全な家庭において、愛は絶対に欠かせません。他の四つの言葉も、愛に取って代わることはできません。ティーンは、言葉や行動を通して愛を表現してもらうことを必要としています。一度も愛していると言われた事がないのなら、自分が愛されていることを、どうして知り得るのでしょう? 両親が一緒に時間を過ごす事さえしてくれないのなら、両親が愛してくれているかどうか知るすべがありません。ティーンは親の愛情を、親が一緒に過ごしてくれる時間の長さではかるのです。

  ティーンが一番聞きたがっているこれらの言葉を忘れずにいるなら、ティーンとの良いコミュニケーションは保証されています。彼らを誇りとしていると言ってあげなさい。喜んで彼らの気持ちを聞きたいし、それを理解したいと思っていると言ってあげなさい。そして、彼らを信頼している事をティーンに確信させ、彼らを無条件に愛している事を、事あるごとに言ってあげるのです!

 

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ある母親が暖炉の前に座り、

満足げに本を読んでいた。

そこへ、ふくれっつらした子供が入って来て

本を押しながら、言った。

  「これどけて!」

母親はその子のくせっ毛の頭をたたいて、

言った。「ほら、さっさと寝なさい。

おまえを正しく教えるために

聖書を沢山読まなくてはならないのに。」

子供は布団にもぐって、泣きじゃくった。

そして次第に、宗教を否定するようになった。

 

別の女性も座って本を読んでいた。

熱心に読むその顔には、喜びが満ちていた。

そこへ子供がやって来て、母の膝を揺すった。

そして本を見て、言った。

「それを置いて、だっこして!」

母親はその子の頭を撫でながら、

ため息つきつつも、優しくこう言った。

「この本を読み終えるのは無理のようね。

でも、愛を与える事によって、主の御心を

学びましょう。そうすれば、この子にも

愛が植え付けられるでしょう。」

その子は溜め息もつかずに、ベッドに入った。

そして次第に、

イエスを愛する事を学んでいった。

         −−アキラ・ウェブ

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