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子供をほめる!

−−ドナ・ローソン

 

  誰でも人からほめてもらう必要がありますが、それを一番必要としているのは、子供です。早くも生後2、3週間で、赤ちゃんは母親の顔を見つめ、その特別な目の輝きから、自分が愛されていることを感じ取ります。心理学者のバーナイス・バーク博士はこう語っています。「明るい笑顔、『あなたが生まれて本当にうれしい』という目つきを見て、赤ん坊は安心感を覚えるのです。」

  また、優しく触れたり、声をかけてあげたりするなら、赤ちゃんは、自分が愛されていると感じるようになります。けれども常に厄介者のように扱われるなら、赤ちゃんは非常に敏感なので、それを感じとります。そして不安感が芽生え、それが大きくなり始めるのです。「ほめることが、人の振る舞いを改善する上で最も大きな効果がある。褒められると、それが刺激となってもっと良くやろうとか、もっと色々挑戦して、自分の世界を広げていこうという気持ちがわいてくる。年令に関係なく、褒めたり褒められる事によって、私達の人生、あるいは私達の回りの人の人生が変わりうるのである。子供は、褒めてやるなら驚くほど変わる。」と語るのは行動主義の主唱者であるB・F・スキマーです。

  ルベットキン博士はこう語っています。「両親が問題児を連れて私の所にやってくると、私は両親に、お互い同士、また子供に対して、よく褒め言葉をかけるかと尋ねます。それから、一日に何回ぐらい子供を褒めているかと尋ねるのです。そうすると両親が、自分達の子供を褒める回数の少ないことに驚くことがしばしばです。そこで、そこのところを改善することから始めるわけです。つまり、ほめる回数を増やすのです。」

  モナはこう言っています。「以前、4才児を教えていた時、私はいつも子供達を褒めてばかりいました。ある年、自分の担当のクラスにものすごい腕白坊主が入ってきました。そこで私は、その子の悪さは気にもとめず、その子が良い事をした時に褒めてあげることにしました。その成果は目を見張るものでした。4日の内に、イタズラをやめたのです。その子はただ、悪い子としてではなく、良い子として扱われたかっただけなのでした。」

 

具体的に、即座に、惜しみなく

  何でもかんでも褒められ、何をしても「すごいわね。本当にいい子なのね」と言われるなら、子供は、自分が実際に何ができるのかわからなくなってしまいます。バーク博士はこう語っています。「学校でそういう子供達を見た事があります。そういう子供達にやる気を起こさせるのはたやすいことではありません。学習や遊びに熱中する事ができず、何もせずにただ褒められるのを待っているのです。」

  十代の子供を二人持つ母親はこう話しています。「私の父は、私のした事が賞賛に値する、しないに関係なく、私が何をしても褒めてくれました。父は、できる限り私の力になりたいと思っていたのだと思います。でもその結果、私は何かをしようと懸命に努力する事もなく、何かの具体的な目標に向かって頑張る事もありませんでした。自分の子供に対しては、もっと正直になろうと努めています。だから、本当に賞賛に値することを見かけたら、どんどん褒めてやるようにしています。」

  バーク博士も、具体的に褒めてやるべきだと語っています。「『本当にきれいに片付けて、偉かったわね』とか『本当に上手に絵を描いたわね』と言ってあげるなら、子供は、何のことで褒められているのかしっかりと理解します。」

  そして、具体的に褒めてあげるだけでなく、良いことをしたらすぐに褒めるようにしなければなりません。サリーが靴のヒモを自分で結べたことを褒めるのに、お父さんが帰宅するまで待っていてはいけません。とりわけ、幼い子供達からすれば、時間をおくと、褒め言葉もすぐに色あせてしまいます。

  また、褒め言葉のすぐ後に、「でも」を付け加えないように注意して下さい。例えば「よくやったわね、でも‥‥」とか「上手だったわね、でも見てごらん、ジョニーはすごいわよ。」などと言わないように。ルベットキン博士はこう語っています。「『オール5だ、すごいじゃないか、いつもこうだったらいいんだが!』などと言って子供を打ちのめしてはいけない。『これやこれは5で良かったな、だが、どうしてこれは3だったんだい?』などというのも禁句です。」

 

心から褒めること

  褒め言葉を言っても言わなくても、褒めることはできるし、あらゆる種類の褒め方があります。「『すごいな!』『よくやった!』と言ったり、ほほ笑んだり、ウィンクしたり、うなずいたり、こういったものはどれも驚くほど効果があります。」とダニエル・スターン博士は述べています。ただ、心から褒めるのでなければいけません。親が本当に自分のことを理解しており、自分の気持ちを思いやってくれていると子供が感じ取ることができるなら、褒めることが非常に大きな効果をあげるのです。

 

何よりも、子供の気持ちをわかってやること

  アン・オーステイン博士はこう語っています。「親が自分の気持ちをわかってくれることほど、子供にとって嬉しいことはありません。状況を把握して、その時に、子供がどんな点で認めてもらうことを必要としているかを感じとろうと努力してみてはどうでしょうか。」

  2才を過ぎ、自分の世界が広がっていくと、子供は、「いい子」とか、「よくできたわね」、「偉いわね」などといった言葉の意味を理解し始めます。けれども、子供が赤ん坊であれ、2才であれ、16才であれ、年令にかかわらず、子供が心の内でひそかに、どんな言葉を一番聞きたがっているのかを知るには、鋭い洞察力を要します。

  子供と時間を過ごすことは、子供の出しているシグナルを察知する助けになります。耳を傾けようとしないなら、それは聞こえません。見ようとしないなら、子供が、自分自身のことや自分の能力についてどう考え、どのような世界に住んでいるのかがわかりません。

 

否定的な反応よりも、肯定的な反応を返すこと

  「肯定的なものの言い方をしてあげるほうが、否定的な言い方をするよりも効果があります。」と、ニューヨークの幼児心理学者のサーゲイ・サンガー博士は語っています。褒めるのは、最も優れたしつけの方法です。褒めることによって、何をしてもよいか、いけないかをはっきりさせるのです。子供は大人に一線を引いてもらう必要があり、そうされると、かえって安心するものです。

  「あなたの気に入ったことを一生懸命褒めてやるなら、褒めない時には、あなたはそれが好きではないということが自然と伝わります。娘さんが、こぼさずに食べるのを待っていなさい。そして、その時に、上手に食べたと言って褒めてやりなさい。」とサンガー博士は語っています。

  「子供の良い点をさらに伸ばしてやるために、いつも、褒めるべき点を探していなさい。」とルベットキン博士は言っています。「それこそ、振る舞いを変えるのに最も効果的な方法です。むやみに叱りつけたり、おしおきをしたり、『ダメだ』と言う事の方が、問題がすぐに解消され、もっと効果があるように思えます。しかし、それでは、子供は反抗的になって、同じ問題が再び出てくるのです。」

 

子供のすること、しないことによって、

子供の価値を決めてはいけない

  「自分の部屋をきちんと掃除したから、あなたの事好きよ」ではなく、「自分の部屋を本当にきれいに掃除したのね。」と言うようにと、ルベットキン博士は言っています。「おまえは悪い子だ」と言うのではなく、「やめなさい、おまえのしている事は好きじゃない。」と言うように。子供に、その子が親をがっかりさせたと言うような事はしないこと。例えば、「おまえはお母さん(又はお父さん)になんてひどい事をしたんだ。」などと言わないように。

  又、「別れたお父さんの所に行って、お父さんと一緒に住みなさい」などと、子供を捨てるなどという脅しを使わないこと。こうして子供を心理的に虐待するなら、子供は、自分が価値のない人間だと深く思い込んでしまうこともあり、生涯、誰も信用できなくなってしまいます。

 

失敗を恐れず、やってみるよう励ますこと

  ほめてあげるのと同時に、失敗する許可を与えることによって、子供が何かを成そうと一歩踏み出すのを助けてあげなさい。子供が倒れた時に起こしてあげるのではなく、子供が自分で起き上がってもう一度やってみるよう励ましてあげるためにあなたがついているのだという事を子供に知らせなさい。

  ベスの母親は、ベスに、自分の信念のために立ち上がるためには、時には、友人を失うことも覚悟しておかなければならないと教えました。11才のベスはこう話してくれました。「学校で、転入生が子供達にいじめられていました。いじめるのはいけないことだとわかってはいたけれど、何も言いたくありませんでした。いじめている子達に嫌われたくなかったからです。そこでお母さんに相談すると、お母さんは、その子達に、あなた達のしていることは間違っていると思う、もうあなた達とは友達としてやっていけないと言うべきだと言いました。心の中でびくびくしながらそうしてみて、私はびっくりしました。その子達は、私をあざ笑ったり、腹を立てたりはしないで、かえって尊敬するようになったんです。お母さんは、私が正しいと思った事の為に立ち上がったことで、たくさん褒めてくれました。だから、私はもっと嬉しくなりました。」

 

子供が何かをやり終えるのを助けるために、褒める

  自分のしていることがなかなかうまくいかなくて子供がイライラしてきたら、子供を褒めて、最後までやり遂げられるよう助けてあげなさい。

  これはある母親の話です。「先日、ピートはぎりぎりまで宿題をやらず、あらゆる戦術を使って、最後までしないまま済ませようとしていました。そこでこう言ってやりました。『ピート、今までずっと、本当にきちんと宿題をしてきたわね。本当に感心ね。もうちょっと頑張れば、終わっちゃうでしょ。本当にあなたは頑張りやさんね。』 すると、ピートは宿題に取りかかり、やり終えた時には、満足げでした。その内にピートは、自分で一頑張りして人から言われなくとも最後までやり遂げるようになることでしょう。」