宝 P.649-651

 

歴史に見る冒険実話集!

 

エリシャの秘密の軍勢 (列王紀下6章)

  預言者エリシャの時代に、隣接国であるシリヤの王がイスラエルに宣戦を布告しました。しかしながら、その軍事行動に支障が起きたのです。攻撃や待ち伏せを計画する度に、イスラエルの王がそのことを耳にし、備えをなしてしまうのです。

  これが起きたのは「一度や二度ではなく」、何回となく起きたので、シリヤの王は自分の陣営に裏切り者がいるのだと確信しました。王は、家来達を召して腹立たしげに告げました。 「我々の内、誰がイスラエルの王と通じているのか、わたしに告げる者はないか?」

  エリシャの神の力のことをどこからか耳にした一人の家来がこう答えました。 「王、わが主よ、だれもおりません。ただ、イスラエルの預言者エリシャが、あなたが寝室で語られる言葉でさえもイスラエルの王に告げるのです。」

  王には、問題が今や容易なものになったように思われました。エリシャを捕らえれば、トラブルが皆片づくのだと考えたのです。そこで家来に、「彼がどこにいるか行って捜しなさい。わたしは人をやって彼を捕らえよう。」と言うと、「彼はドタンにいます。」と誰かが答えました。

  そこで王は、 あまりにも知りすぎているその男を捕えよとの命令を下し、 ドタンに「馬と戦車および大軍を」つかわしました。

  不意をついてエリシャを捕らえようと、軍勢は夜の間に到着し、町をくまなく包囲しました。神の人が逃れる道は全くないかのようでした。

  翌朝早く、エリシャの召使は、 町の防壁から馬や戦車が見えたのでおののきました。彼はエリシャに駆け寄って、「ああ、わが主よ、わたしたちはどうしたらよいのでしょうか?」と叫びました。

  しかし、エリシャは神を非常に信頼していたので、その若者に、「恐れることはない。われわれと共にいる者は彼らと共にいる者よりも多いのだから。」と言ったのです。

  若者はエリシャをじっと見つめました。そんな事があり得るでしょうか? ドタンには、これらのシリヤ人と戦う備えのある者は一人もいないのです。エリシャには秘密の軍隊があるのでしょうか?

  そこで、エリシャはこう祈りました。 「主よ、どうか、彼の目を開いて見させて下さい。」

  神が祈りに答えて、その若者の目を開かれたので、エリシャが今までずっと見ていたものを彼も見ることができるようになりました!

  「ほら! あれを見て!」と、若者は興奮して叫びました。

  「すると見よ、火の馬と火の戦車が山に満ちてエリシャのまわりにあった」のです。

  エリシャは前に一度、 その火の戦車団を見たことがありました。 (列王紀下2章11節) 「それらがエリシャの所に下ってきた時」、エリシャは神がすぐ近くにおられることを知っていたので、祈ってこう言いました。「どうぞ、この人々の目をくらまして下さい。」

  それは奇妙な要請でしたが、エリシャには素晴しい計画があったのです。そして町の門を出ると、勇敢にもシリヤ軍の指揮官達の下へ近づいて行きました。彼らは目をくらまされて、 自分の居場所も、どうしたらよいのかもわからず、混乱状態でした。

  そこでエリシャは彼らをまんまと欺いて、こう言いました。「これはその道ではない。これはその町でもない。わたしについてきなさい。わたしはあなたがたを、あなたがたの尋ねる人の所へ連れて行きましょう。」そして、彼らをサマリヤへ連れて行ったのです。他ならぬイスラエルの首都に!

  彼らを皆無事に町の門の中に入れてしまうと、エリシャは、「主よ、この人々の目を開いて見させて下さい。」と祈りました。 神が兵士達の目を開かれたので、彼らは途端に恐怖に襲われました。自分達が欺かれてサマリヤの真っ只中に連れて来られ、敵に取り囲まれていることを知ったからです!

  イスラエルの王は喜びました。決して忘れられない教訓をシリア人達に教えてやる、 またとないチャンスが巡ってきたのです。「彼らを撃ち殺しましょうか? 彼らを撃ち殺しましょうか?」と、王は喜び勇んでエリシャに言いました。

  「いいえ、いけません! あなたは、捕虜にした者どもを、剣と弓をもって撃ち殺すというのですか?」とエリシャは答え、かえって食物と水を捕虜達に与えて、それから自国に帰らせるように命令したのでした。「そこで王は彼らを大いにもてなしてやった。彼らが飲み食いを終わると王は彼らを去らせた。そして彼らはその主君の所へ帰った。」

  なんと丁重で親切な行為でしょう! 何とも変わった方法で、自分の敵を愛したのです。そして少なくとも、しばらくの間は、それが功を奏したのです。「シリヤの略奪隊は再びイスラエルの地に来なかった。」と書かれているからです。

  エリシャの秘密の軍勢に保護してもらうのは割に合うことです。あなたや私もその秘密の軍勢を持つことができるのです。聖書に、「主の使いは主を恐れる者のまわりに陣をしいて彼らを助け出される」と書いてあるからです。(詩篇34篇7節)