宝 P.521-524

 

 歴史に見る冒険実話集!

 

巨人の挑戦!(サムエル記上17章)

 

  ペリシテびとがユダで突如として軍隊を結集しているという知らせで、戦(いくさ)が始まろうとしていることが明らかになりました。この知らせを聞いたサウル王は、直ちにエラの谷に軍隊を結集せよとの命令を下しました。かくして、イスラエルびととペリシテびとは谷を挟んで対決したのです。

  両軍が前線に戦列を敷くと、ペリシテびとの軍隊の中から、ガテのゴリアテという猛者(もさ)が進み出て、イスラエルの陣地に大股で向かってきました。

  ゴリアテは身の丈 2.7メ−トルもある大男でした! 青銅のかぶとを頭にかぶり、70キロもあるうろことじのよろいを着て、手には12キロもある青銅のなげやりを持っていました。さらに、それでも十分でないかのように、よろい持ちがゴリアテの巨大な楯をかかげて、その先頭を歩いてきたのです!

  ゴリアテは大胆にも、イスラエルの軍隊に挑戦してきました。「何ゆえ戦列を作って出てきたのか? わたしはペリシテびと、おまえ達はサウルの家来ではないか? おまえ達から一人を選んでわたしのところへ下ってこさせよ。もしその人が勝ってわたしを殺すことができたら、われわれはおまえ達の家来となる。しかし、わたしが勝ってその人を殺したら、おまえ達はわれわれの家来になって仕えなければならない。」

  サウルとその兵士達は、この巨人戦士の言葉を聞いて恐れおののいてしまいました。

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  時に、羊飼いの少年ダビデは、軍隊に食糧や物資を届けるところでした。

  彼が陣地に到着すると、兵士達は、戦線に出て行ったところでした。そこでダビデは袋を、荷物を守る者に預け、兄達に会うために戦列の方に出て行きました。兄達と話していると、敵の陣地の方で何やら騒いでいるのが聞こえてきました。

  ペリシテびとが雄叫びや歓声をあげる中で、またしてもゴリアテがイスラエルびとを罵倒するために出てきたのです。イスラエルびとは、ゴリアテを見ると恐れおののいて逃げ出す始末でした。その巨人戦士は、40日の間、朝と夕方になるとやってきて、イスラエルびとを挑発していましたが、その挑戦を受けて立つ者は誰一人としていなかったのです。

  「奴を見たか?」恐れおののきながら、兵士達はこう尋ねました。「あの巨人は毎日ああやって、イスラエルに挑みに来るんだ。」 兵士達がすっかり恐れの虜になってしまっているのを見たダビデは、怒りを覚えてこう言いました。「この割礼なきペリシテびとは何者なので、生ける神の軍を挑むのですか?」

  しかし兵士達の話すことといったら、この男を殺した者に王が賜るという報酬のことだけでした。どうして誰もそれをしようとは思わないのかとダビデが聞けば聞くほど、みんなたじろいでしまう始末です。

  ついにそこに立っていた人が、この少年ダビデの言ったことを王に告げたので、サウル王はダビデを召し寄せました。そして、ダビデは大胆にも王に向かってこう告げたのです。「王よ、誰もあのペリシテびとのゆえに気を落としてはなりません。しもべが行って、あの男と戦いましょう。」

  王は、この信じられないような言葉を笑い飛ばさんばかりでした。「何とばかげたことだ。おまえに、あのペリシテびとと戦うことなどできない。おまえはまだ少年だが、奴は若い時からの軍人だ。」

  しかし、ダビデは王の心配を打ち消すようにこう言いました。「わたしは父の羊を飼っていたのですが、しし、あるいは熊がきて、群れの小羊を取った時、わたしはあとを追いました。そしてこれを撃って、小羊をその口から救い出し、その獣がわたしに飛びかかってきた時は、ひげをつかまえて、それを撃ち殺しました。

  ですから王よ、このしもべを、ししと、熊のつめから救い出して下さった主は、このペリシテびとの手からも救い出して下さるでしょう!」

  この少年の揺るがぬ信仰を見たサウルは、ついに承諾してこう言いました。「行くがよい。息子よ、主がおまえと共におられるように。」

  そうしてサウルは、自分のいくさ衣をダビデに着せることにしました。青銅のかぶとをかぶらせ、うろことじのよろいを身にまとわせたのです。ダビデはいくさ衣に王のつるぎを下げて少し歩いてみました。そのような武具を身につけるのは初めてだったからです。

  そして、ダビデは、溜め息をつきながら、頭を振って王にこう言いました。「わたしは、このような衣装に慣れていないので、これを着けていくことはできません。」 ダビデは剣をはずし、衣を脱ぎました。

  それから手につえを取り、近くの小川まで歩いて行くと、滑らかな石を五つ選んで自分の羊飼いの袋に入れ、手に石なげを取って、あのゴリアテが立ちはだかっている所に向かいました。

  兵士達が、一体どうなることかとかたずをのんで見守る中、その巨人は、楯を取る者に前を歩かせながら、ダビデに向かって大股で歩き始めました。そして、ダビデがまだ年若いのを見て侮りました。

  ゴリアテは、ダビデに向かって大声で怒鳴りました。「つえを持って向かってきているがわたしは犬なのか?」 ゴリアテはまた、神々の名によって、ダビデを呪いました。「さあ、向かってこい、お前の肉を空の鳥、野の獣のえじきにしてくれよう。」

  しかし、ダビデはそんな言葉にはびくともしませんでした。「お前はつるぎと、槍と、投げ槍を持って、わたしに向かってくるが、わたしは万軍の主の名、すなわちお前が挑んだイスラエルの軍の神の名によって、お前に立ち向かう。

  きょう、主はおまえをわたしの手に渡されるであろう‥‥そして、イスラエルに神がおられることを全地に知らせよう! またこの全会衆も主は救いを施すのには、つるぎとやりを用いられないことを知るであろう。この戦いは主の戦いであって、主がわれわれの手に、お前たちを渡されるからである!」

  これを聞いたゴリアテは怒りで顔を真っ赤にして、ダビデに立ち向かいました。巨大な槍をあの太い手にしっかり握りしめて突進してきたのです。ダビデはすみやかに走り出て、ゴリアテに向かいました。ダビデは手を袋に入れて、その中から石を一つ取ると、そのペリシテびとの額めがけて、力一杯、石投げで飛ばしました。額だけは防備されていなかったからです。すると、石はその額に突き刺さり、ゴリアテは突然、うつむきに地面に倒れたのです。ウォーというイスラエルの兵士達の歓声があたりに轟きました!

  「ダビデの手につるぎがなかったので、」ダビデは走りよって、倒れた巨人の上に乗り、そのつるぎをさやから取って、首をはねました。

  その日、若い羊飼いの少年は、ただ信仰と、石投げと滑らかな石だけで、ペリシテびとの勇士に勝利したのです。

  ダビデの堂々たる勝利を見て、「イスラエルの人々は立ち上がって、ときの声をあげ、ペリシテびとを追撃しました。そのためにぺリシテの負傷者は道々に倒れました。」 イスラエルの人々は、ペリシテびとを彼らの国まで追いやり、その陣営を略奪しました。こうして戦いは終わり、イスラエルは無事に救われたのです。

  心をつくして神を愛し、信頼しているこの少年を通して、神は実に大いなる事をされました! 神の意思を遂行しようとしている忠実な人を通して、神にできることには、限界がありません。

  自分を最大限に神に使っていただきなさい! 私達は、攻撃をやめ、勝利をあきらめ、率先力を与えてくれる信仰や勇気を失ってしまわない限り、征服されることはありません。真に価値あるものは、戦うだけの価値があるのです!

  体の大きさは関係ありません。内にある闘志の大きさが物を言うのです。だから、いつでも戦う準備をしていなさい。そして、そのためには死ぬことをも辞さず、「私は神の恵みによってここに立つ!他に方法はない!」と言えるほどの覚悟でいるのです。