宝 P.519-520

 

 歴史上の大いなる戦い!

 

幾千人をも撃ち破った二人の兵士!

(サムエル記上14章)

 

  サウル王は、窮地に追い込まれていました。ペリシテ人が王と戦う為に上って来たのですが、兵士達は、ペリシテ人が数において圧倒的に優勢なのを見て、怯えながら逃げ去り、ほら穴や、岩の間の茂みや、縦穴に身を隠してしまったのです。中にはヨルダン川を渡って向こう岸に避難した者もいました。

  このため、ミクマシの町の近くにいたサウルとその息子ヨナタンのもとに残って陣を張っていた兵士は、わずか600人だけでした。このように彼らの力が弱まる時を、ペリシテ人は待ち望んでいたのです。ペリシテ人は、攻撃準備のために、略奪隊を三つに分けて送り、一つの部隊は、岩がごつごつしているミクマシの道に接近してきました。

  しかし、サウル王の貧弱な部隊の中に、敵が優位に立っていることにもひるまなかった一人の兵士がいました。サウル王自身の息子ヨナタンです。

  ヨナタンは、自分のよろい持ちに、「さあ、われわれは道の向こう側の、ペリシテ人の先陣へ渡って行こう。」と言いました。しかし、父には告げませんでした。事実、「ヨナタンが出かけたことはだれも知らなかった」と書かれています。  道の向こう側の険しい崖に達したヨナタンは、彼の若いよろい持ちに、勇ましくこう言いました。「さあ、われわれは、この割礼なき者どもの先陣へ渡って行こう。主がわれわれのために何かなされるかもしれない。われわれの人数が多くとも少なくとも、主にはわれわれを救うことができる!」

  何という信仰の宣言でしょうか! その言葉に感動した若いよろい持ちは、「あなたの望みどおりにして下さい。わたしの心も魂もあなたと同じです。」と答えたのでした。

  二人は、敵の先陣へと至る険しい岩地を、慎重によじ登り始めました。そして、二人の若い兵が敵のすぐ近くまでたどり着いた時、ヨナタンは言いました。「われわれは広い場所に出て行って、彼らに身を現そう。もし彼らが、『こちらから行くまで待て』と言うならば、われわれはその場にとどまろう。そして、『われわれのところへ上って来い』と言うならば、われわれは上って行こう。それは、主がまことに彼らをわれわれの手に渡されたことのしるしとなる!」

  こうして二人は、容易に見つかるような広い場所に出て行きました。ペリシテ人の見張りは彼らを見るやいなや、あざけりながら叫びました。「見ろ! ヘブル人が隠れていた穴の中からはい出てきたぞ!」そして、二人に向かって上の方から、「われわれのところに上って来い。目にもの見せてくれよう。」と叫びました。

  それはヨナタンが待ち望んでいたしるしだったので、彼は確信に満ちた声で若いよろい持ちに告げました。 「わたしのあとについて上ってきなさい。主は彼らをイスラエルの手に渡されたのだ!」というわけで、二人の勇敢な兵士は信仰に満たされて、頂上めざして、最後の岩をよじ登りました。

  頂上についた二人の戦士は、剣を抜き、奇跡的にも20人を殺しました。

  そして、ペリシテ人は、陣営にいる者、野にいる者、先陣の者、および略奪隊までも、全軍が恐怖に襲われました。さらには、突如として地が震い動きさえしたのです!

  敵軍が「崩れて」いるのをサウルの軍隊の番兵達が見つけたので、イスラエルの人達は勇気を奮い起こし、結集しました。そして、ヨナタンと彼のよろい持ちがいないのを知ったサウルが、兵を戦いに送ると、そこではペリシテ人達がひどく混乱していて、剣で同士打ちまでしていたのです!

  すると、敵を恐れて山地に身を隠していたヘブル人まで自分達のいた所から出て来て、救援に駆けつけたのでした。彼らがやって来るのを見たペリシテ人らは逃げ出し始め、イスラエルの人々は激しくそれを追撃しました。こうして、大いなる勝利が勝ち取られたのです!

  かくして、 主はその日イスラエルを救われたのですが、それはすべて、若いヨナタンと彼のよろい持ちの勇気ある信仰のゆえでした。

  聖書に「浜辺の砂のように数え切れない」ほど多くの兵だったと記されているものすごい軍隊に、雄々しく立ち向かったのはわずか二人だけでした。

  神が与えることのできる力を過小評価してはいけません。もし神が共におられるなら、たとえどんなに少数でも、敗北することはないのです。神と共に世界を相手にする人に、悪魔は太刀打ちできません。たとえ一人でも、神が共におられるなら、まさっているのです!

  「そして、わたしたちの信仰こそ、世に勝たしめた勝利の力である。」(1ヨハネ5章4節)