宝 P488-493

 

歴史に見る冒険実話集!

 

地には巨人が!

 

(この物語は、民数記13-14章、申命記1:19-46,9:1-3,ヨシュア記11:21-23,14:6-15,15:13-17にあります。)

 

  エジプトを去ってから、何か月も何か月も旅してきたイスラエルの民は、パランの荒野にあるカデシに天幕を張り、野営していました。そこから北にほんの数キロほど行った所には、約束の地の山々が連なっていました。モーセは民を集めると、こう命じました。「われわれは、われわれの神、主がお与えになると約束された地に着いた。それゆえ、主があなたがたに告げられたように、上って行って、これを自分のものとしなさい。おののいてはならない!」

  すると、イスラエルの長老達は、自分達にそれができるかどうか自信がなかったために、ためらいながら、こう答えたのでした。「われわれは人を先に遣わして、その地を探らせ、どの道から上るべきか、どの町々に入るべきかを、告げさせましょう。」

  彼らの信仰の欠如にもかかわらず、主は彼らの計画に同意され、モーセに、「おのおの12の部族から第一人者を選んで、カナンの地を探らせなさい。」と告げられたのでした。そこでモーセはスパイを選び、彼らをカナンの地へと遣わしました。

  変装した12人のスパイ達は、一方の端から反対側の端まで、その地をくまなく調べて歩き、ついに、その帰り道に、山あいの町ヘブロンにさしかかると、そこで足を止めたのでした。

  その町を見て、名をパルチというスパイの一人が叫びました。「見ろよ、あの大きくがっしりとした石垣の高さを! 天にまでそびえ立ってるぜ!」  「それに、ここに住んでるやつらを見てみろよ!」もう一人のナビという名のスパイが叫びました。  「何てこった!」首をうなだれ、息を切らしながら、パルチは言いました。「巨人だなんて!」

  すると、実に大きな、毛深いからだをした二人の不気味な巨人が大股で通りかかり、その小さな男達の方を振り向くと、険しい目付きで彼らを見下ろしたのでした。「あのちっぽけなバッタみたいなやつらは誰なんだ?」巨人の一人が、低く響く声で、まるでうなるように言うのでした。その手に握られたどっしりとした槍は、そのスパイたちの方に向けられていました。すると、もう一人の巨人が大笑いして言いました。「あのちっぽけな野ねずみのことかい?!」

  ナビは震えおののき、その顔には汗がしずくとなって流れ落ちていました。そしてどもりながら、辛うじて、「に、にげよう! は、はやく!」と言うのがやっとでした。

  しかしカレブは、断固とした口調で、「いや、その前に、われわれはこの場所についてもっと沢山の事を知る必要がある」と言うと、他のスパイ達から離れて、ヨシュアと共に町へと上って行き、その巨大な、空高くそびえ立つ門の中へと消えて行きました。彼らがその町を偵察して帰って来たのは、それから数時間たってからのことでした。彼らは、ヘブロンのまわりの山々一帯には、アナクびととして知られる巨人の人種が住んでいることを知ったのであり、それらの巨人達は皆、軽く3メートルを越える者ばかりだったのです!

  「ヘブロンは、巨人の中でも一番大きな者、アルバの名にちなんで、キリアス・アルバという名前に変わっていて、三人の巨人に支配されている。」とヨシュアが言いました。

  「われわれは、必ずその町を攻め取ることができます! もちろん、戦いにはなるが‥‥」カレブが付け加えて言いました。

  「その町を攻め取るだって?! 正気で言っているのか?」と、ガディという名のスパイはひどく驚いて尋ねました。「おれは、あの巨人の地など二度と見たくもない!」

  町を出て、スパイ達が近くのエシコルの谷へと下って来ると、そこには巨人達のぶとう畑が陽光を浴びており、実はすっかり熟していました。彼らは一房の大きなぶどうの枝を切り落として、二人の者がかつぎ、その他の果物と一緒にモーセの所に持ち帰ったのでした。

  そして、ついに南の荒野にあるカデシ・バルネアに戻った頃には、40日がたっていました。スパイ達が戻って来たのを見ると、モーセとアロン、それにキャンプにいた者たちは全員、彼らを出迎えました。スパイ達は、自分達の持ち帰った全ての果物を人々に見せ、ヨシュアはモーセにこう告げました。「私達は、あなたがお遣わしになった地へ行きました。そこは非常に肥えた地で、主が約束されたように、乳と蜜とが流れています!」

  興奮して人々がその地に攻め上ることを話し始めると、パルチと他の者達が口をはさみました。「しかし、その地に住む民は強く、その町々は堅固で非常に大きいのです! その上、そこにはアナク人が住んでいるのです! 身長が3メートル以上もあるどう猛な巨人の人種が!」

  人々はうろたえて、不平を言い始めましたが、カレブは叫んで言いました。「すぐに上って行って、躊躇することなくその地を攻め取りに行くべきです。われわれは、きっと素晴らしい勝利を収めることでしょう!」

  けれども、ナビはそれに抗議して言いました。「われわれは、アナクびとを攻めることはできません! アナクびとはわれわれよりもはるかに強いからです!」

  そしてナビとパルチと他のスパイ達は、心をくじくような悪い情報ばかりを、ますます人々の間に広め始めたのでした。パルチは言いました。「私達が探った地は、そこに住む者を滅ぼし尽くしてしまいます!そしてそこの町々はみな堅固で、石垣は天にまで届くのです!」

 「その通りだ」と、ナビが同意して言いました。「そして私達が見た民はみな、けた外れに背が高いのです! それにカナンには、『アナク人の前に誰が立ちはだかることができようか?』ということわざがある程です。」

  これを聞いたイスラエルの民は、声を上げて泣き始め、モーセとアロンに向かってぶつぶつ不平を言い始めました。「何ゆえ主は、我々をこの地に連れて来て、つるぎに倒れさせ、また我々の妻子を囚われの身にされるのか? 我々は一人の頭を立てて、エジプトに帰ろう! エジプトの地で死ぬ方がむしろ良いではないか!」

  他の者達も叫び始めました。「この荒野で死ぬ方がそれよりもましだ!」

  すると、ヨシュアとカレブは自分達の衣服を裂き、全会衆に向かって言いました。「私達が行き巡って探った地は非常に良い地だ! もし主がわれわれを喜ばれるなら、主はわれわれをその地に導いて行って、それをわれわれに下さるだろう。ただ主にそむいてはならない。またその地の民を恐れてはならない。われわれは彼らを完全に滅ぼすからだ! 彼らには何の保護もない! 主はわれわれと共におられるからだ!」

  しかし、民はこう言ったのです。「主はわれわれを憎んで、巨人の手に渡し、滅ぼそうとしてエジプトの国から導き出されたのだ! いったいどうしてわれわれは彼らと戦うことができようか? すでにわれわれの兄弟は、われわれの心をくじいた!」  するとモーセが叫んで言いました。「巨人をこわがってはならない! 先に立って行かれるあなたがたの神、主は、あなたがたのために戦われるからだ!」

  けれど、もう手遅れでした。陣営全体が主に対する信仰を失い、カレブとヨシュアを石で撃ち殺そうとさえ話し始めていたのです。しかしその時、主の栄光が契約の箱が納められた幕屋から突然現れ、主はモーセに言われました。「わたしが諸々のしるしを彼らの為に行なったのに、この民はいつまでわたしを信じないのか?」

  「わたしを疑い、わたしにむかって不平を鳴らすこの悪い会衆をいつまで忍ぶことができようか? わたしは、人々がわたしに向かって不平を言うの聞いた! あなたは彼らに言いなさい。『わたしは生きている。あなたがたがわたしの耳に語ったように、わたしはあなたがたにするであろう。あなたがたはみな、この荒野に倒れるであろう! わたしに向かって不平を言った者の内、20歳以上の者はみな倒れるであろう! あなたがたの内、一人として約束の地に入る者はいないであろう!』

  『ただし、わたしのしもべカレブは、他の者達と異なり、わたしに心から従ったので、わたしは彼をその地に導き入れるだろう! わたしは、彼の子孫はその地を所有するようになるであろう! そしてヨシュアはイスラエルを導いて、それを得させるであろう!』

  『しかし、あなたがた背く者どもよ、あなたがたが、捕らわれの身になると言ったあなたがたの子供達に、わたしはその地を与え、そこは彼らの嗣業 (しぎょう) となるであろう。彼らはあなたがたが侮った地を楽しむようになる! しかし、あなたがたは死体となってこの荒野で倒れるであろう。40年の間あなたがたは不信の為に苦しみ、あなたがたの最後の一人が死ぬまで、荒野をさまようであろう! さあ向きを変えて、再び荒野へと戻って行きなさい!』と主は言われると民に言いなさい。」

  それから、主は、その地を悪く言いふらし、民の気をくじいた10人のスパイを打たれたので、彼らはみな疫病で死んだのでした!

  全会衆は、主の前で泣き、嘆き悲しみましたが、主は彼らの声を聞かず、彼らに耳を傾けられませんでした。そこで彼らは、再び荒野に戻り、何年にも及ぶ、長いさ迷いの旅が始まったのです。ついに40年が過ぎ、古い世代の最後の者が息を引き取った時には、モーセ自身も老い、死を目前にしていたのでした。そしてイスラエルの若い世代に向かって言いました。「イスラエルよ、聞きなさい! あなたがたは、まさに、あなたがたよりも大きく、かつ強い国々を攻め取ろうとしている。そこの町々は大きく、石垣は天に達している! その民はアナクびとの子孫であって、大きく、また背が高い! しかし主なるあなたがたの神こそ、あなたがたの前に進まれる事をあなたがたは知らなければならない! 主は、彼らをあなたがたの前に屈服させられ、主があなたがたに約束されたように、あなたがたは彼らを滅ぼすであろう!」

  モーセが死んだ後、ヨシュアは大胆にイスラエルの軍隊を約束の地に導き、間もなく、彼らは、その地の大部分を攻め取ったのでした。その地を12の部族に分配する時になって、カレブがヨシュアのもとに来て言いました。「主がカデシ・バルネアで、あなたと私とについて、モーセに言われたことを、あなたはご存じです。この地を探るためにモーセが私を遣わした時、私は40歳でした。そして、私は自分の任務を果たし、自分の信じるところを報告しました。そこで、その日モーセは誓って私に言いました。『おまえの足で踏んだ地は、必ず長くおまえと子孫との嗣業となるであろう。おまえが心から主に従ったからである。』と。」

  槍を手に、白髪の老人となったカレブは続けました。「その時以来、主は45年の間、私を生きながらえさせて下さいました。私は今では85歳になります! けれどもなお、私の力はあの時に劣らず、今でも戦いに堪えることができます。主が私に約束されたヘブロンの地を、どうか私に下さい! そこには巨人がいて、その町々は大きく堅固です。しかし、主が私を助けて下さり、彼らを追い払うことができるでしょう!」

  そこでヨシュアは、ヘブロンを彼の嗣業として与え、カレブは彼の一族を率いて、主なる神の大胆さと力とをもって、その山地へと上って行きました! 激しい戦いの末、彼はその巨人の軍隊を敗り、その町を奪ったのでした! そこから彼は、近くのデビルに住む巨人の所に攻め上り、彼の若い甥のオテニエルが彼らを攻撃して打ち負かました! ヨシュアの軍隊はそれから、他の山間の地からアナク人を攻め落とし、その為、イスラエルの地には巨人は一人もいなくなくなりました!

 

考えてみるべき課題

   (1)10人の臆病なスパイたちは、信仰によってではなく、ただ目に見える状況に従って行動していました。そして、さらに悪いことに、彼らやイスラエルの民は主の約束を疑い、主が彼らを祝福して、彼らが約束の地を征服するのを助けて下さるということを疑ったのでした。信仰を全く持っていなかった人達に対して、主が「40年の間悲しまれた」のは、このためだったとパウロは言っています! 「その聞いた御言葉は、彼らには無益であった。それが聞いた者たちに信仰によって結びつけられなかったからである!」(ヘブル4:2)

   (2)それらのスパイ達の、恐れに満ちた知らせは、全ての人々に疑いをもたらしました。信仰の道を捨てて後戻りする人というのは、ただ一人でそうする事は滅多にありません! 彼らは、殆どいつもといっていい程、他の人を道連れにするのです。自分がなぜそれを最後までやり遂げる事ができないかという、道理にかなったような理由を考えつくのは非常に簡単なことです。大抵の人々はその口実を受け入れますが、それは、実はその人達にも信仰がないからなのです。そして、信仰の道を捨てる人のことを容認することによって、自分自身をも容認しているわけです! けれども、果たして神は、そのような人達を容認して下さるでしょうか?

   (3)民は、初めは、自分達のリーダーに対して不平を言っていましたが、後には、直接神に対して不平を言い、神が自分達の事を憎んでおられるとまで言ったのでした! 彼らが荒野を何カ月もさまよう間に、神はもうすでに、彼らのために数え切れない程の奇跡を行って下さったのではないでしょうか? けれども、民はそれでもなお、神が、人間の手に負えないような様々な出来事から自分達を守って下さるとは信じなかったのです。

   (4)信仰の道を捨て、後戻りするとはどういうことでしょうか? 神があなたに示して下さったことをしなかったり、あなたがしていて神が祝福して下さっていることをやめたりするなら、それは、信仰の道を捨てることになるのです! 神の御仕事から離れてしまわなくても、後戻りしてしまうことはあります。神の御心を行うことを拒むか、後ろを振り返る事でさえ、(ルカ9:62)後戻りしていることになるのです。たとえ最初は、あなたの心の中で背くだけであっても、すぐに、それに体もついて行ってしまうからです! 神は、神がすでに行うようにと告げたことに人々が背いたり、あるいは、神のためにもうすでに始めていることを人々が途中で投げ出したりするのを見るのを忌み嫌われます。「もし信仰を捨てるなら、わたしの魂はこれを喜ばない!」(ヘブル10:38)「わたしに逆らって歩むならば、わたしは心にあなたがたを忌み嫌うであろう!」(レビ記26:27,30後半)

   (5)もし彼らが、疑いを抱いている者や信じていない者達と一緒に約束の地を侵略しようとしていたなら、どうなっていたでしょうか? それは、大失敗に終わっていたことでしょう! 彼らは皆、殺されてしまっていたかもしれません。そこで主は、賢明にも、背く者達を取り除かれ、信じる若者達だけが、ヨシュアとカレブと共に、約束の地に入って行くことを許されたのであり、彼らは勝利を収めたのでした!

   (6)戦いについて不平を鳴らし、勝利を目前にしてあきらめてしまった者達は、決して、勝利によってもたらされた報酬を享受することはできません! 後戻りした人達の中には、神が彼らに勝利の冠を授けようとした寸前に、あきらめてしまった人達が少なくありません。勝利を目前にしてやめてしまったために、あなたの報酬を逃してしまうようなことをしてはいけません!