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 歴史に見る冒険実話集!

 

エジプトの災い!(出エジプト記 5-12章)

 

  リオビムは、パロの宮廷で仕えている、90キロもある大柄の高官でした。一日の仕事が終わって自分の馬車で家に帰る途中、ゴセンの地に向かう道を、ヘブル人の奴隷が長い列をなし、重い足を引きずりながら歩いていくのが見えました。リオビムはあざけって言いました。「おまえたちの預言者モーセは、おまえたちの神がおまえたちを救い出してくれると言っているんだと? それなら、今度は藁(わら)なしで煉瓦を作れるように、神に助けていただけ! ハッハッハ!」

  リオビムの広大なる敷地は、ナイル川の肥沃な三角州にあるゴセンの地のすぐ南にありました。彼が大通りから離れて屋敷へと通ずる道に入った時には、疲れたヘブル人たちは、水路にかけられた橋を渡ってゴセンに帰る所でした。

  料理をしていたエミマは、父と兄弟達が入って来ると顔を上げました。「まあ、ひどい!」 彼女は彼らの背中から血が流れているのを見て叫びました。「また、あの獣共がお父さん達をムチで打ったのね!」

  「ああ」と父は疲れ果ててため息をつきました。「モーセがパロに、主はパロが主の民を去らせるよう命じておられる、と告げたのだが、パロはそれを拒否したどころか、これからは藁を与えてくれず、私達の労役をもっと重いものにすることにしたんだ! そして私達が十分な量の煉瓦を作れないと、パロの奴隷監督人たちがムチで打つんだ!」

  傷の手当をしながら、エミマは祈りました、「ああ、主よ、私達の残酷な圧制者たちを裁いて下さい!」

  そのちょうど翌朝、パロがナイル川のほとりに降りて行くと、モーセとアロンが会いに来ました。主の審判が下ろうとしていたのです!

  リオビムをはじめ、何人かの家来もそこに立って見守る中、モーセが杖を上げ、ナイル川の水を打つと、突然、すべての水が血に変わってしまったのでした。これには、パロもひどくショックを受けました!すべての小川や水路、池や、エジプト中のすべての貯水池、さらには瀬戸物の壷に入った水さえも全部、血に変わったのです! ナイル川は悪臭を放ち、もうその水を飲むことができなくなり、魚も全滅してしまいました。ところが、それでもパロは神に屈服することを拒んだのです!

  7日が過ぎ、再びモーセとアロンは、「わたしの民を去らせよ!」という主からのメッセージを伝えにパロの所へ行きました。けれどもパロは心をかたくなにしたままでした。そこでアロンが杖を小川や水路や池の上に差し延べると、カエルが出て来て地をおおい尽くしたのです。パロの宮殿も例外ではありませんでした!

  家に帰る途中、リオビムは、自分の農場全体が、ゲロゲロ鳴くカエルの群れにおおわれて波打っているのをじっと見ていました。けれども、中庭にいるカエルの群れを押しわけて家に入った彼は、もっとぞっとするような光景を見ました。台所や、かまどの中、寝室、そして寝床の中までも、カエルだらけだったのです! 彼の妻と息子は、ゲロゲロ鳴く目の飛び出た生き物が体じゅうを跳ねまわっていて、恐れのあまり、狂乱状態になっていました。

  エミマと彼女の兄弟達は、ヘブル人の群衆に混じって、水路の土手に立ち、驚きながらエジプトの地を見つめていました。リオビムの地所はあたり一面、カエルで覆われていましたが、自分達の立っているゴセンの地には、一匹のカエルさえいませんでした!

  パロはとうとう、カエルの災いを止めてくれるようにとモーセに嘆願してきました。そしてモーセが祈ると、不思議なことに、カエルは突如として、全部死んでしまったのです。耳にがんがん響く、何億もの数え切れないほどのカエルの騒音はぴたりと止み、静けさが訪れました。リオビムは自分の家来たちに、家の中にある何千ものカエルの死骸を家から掃き出し、畑にある死骸はくま手でかき集めて積むようにと命じました。その後数日間は、エジプト全地が、カエルの死骸の放つ、吐き気を催させるような悪臭で満ちていました!

  その後、パロはまたもや心をかたくなにしたので、主はモーセに命じて、アロンに、杖で地のほこりを打たせるようにと言われました。そしてアロンが地を打つと、ほこりがブヨとなって、エジプトのすべての人と家畜の体中につき始めました。しかし、ゴセンにはブヨなど一匹もいなかったのです!

  モーセは再びやって来てパロに命じました、「私の民を去らせなさい!」 しかし、パロはこれに全く耳を貸そうとはしませんでした。そこで主はものすごいハエの大群を送って、パロの王宮と家来達の家々を襲わせました。エジプト全地は完全にハエで汚染されてしまいました! リオビムは自分の体中をはいずり回る汚らしいハエを追い払おうとして気も狂わんばかりでした。そしてうろたえながらゴセンの地を見ると、そこにはハエなど一匹も飛んでいなかったのです。

  それから主は、エジプト人の馬、ろば、らくだ、牛、羊、そしてやぎに、恐ろしい疫病を送られ、リオビムの家畜もばたばたと大量に死んで行きました。それにもかかわらず、たった数百メートルしか離れていないゴセンでは、家畜が牧草地で静かにそして満足げに草を食べており、一頭も死んではいませんでした!

  そしてリオビムがパロの王廷にいると、また災いが襲ってきました。モーセはかまどのすすを両手いっぱいに取り、パロの目の前で空中に向かってまき散らしました。するとそれがとても細かいほこりとなってエジプト全地に広がり、人にも動物にも、うみの出る腫れ物ができました。リオビムは、頭のてっぺんから足のつま先まで、激しい痛みを伴った腫れ物ができたので、恐ろしさのあまり声を上げたほどでした!

  パロ自身とパロの魔術師達も全身腫れ物だらけになりましたが、パロはなお降参しようとはしませんでした。そこでついにモーセは怒り、パロの王宮に駆け込んで言いました。 「主は言われる。『私がもし、手をさしのべ、災いをもってあなたとあなたの民を打っていたならば、あなたは地から断ち滅ぼされていたであろう! ゆえに、あす、私は恐ろしく大きなひょうを降らせるであろう。それはエジプトの国が始まった日から今まで、かつてなかったほどのものである!

  あなたが野に持っているすべての家畜を、屋根のある所に入れなさい。人も獣もすべて野に出ているものは、降るひょうに打たれて死ぬであろう!』」

  パロとその家来たちには、その警告に従うのにまる一日あったのに、主の御言葉を恐れて自分たちの奴隷と家畜を安全な所に入れたのは、数人の家来たちだけでした。パロやほとんどの家来たちと同じく、リオビムも、モーセの言葉を完全に無視しました。

  翌日、モーセが杖を空に向かってさし伸べると、突如として、空全体が無気味にも雲で覆われ、あたりが暗くなったかと思うと、雷が鳴り始めました。そして次から次へと、燃え上がる炎のように輝く稲妻が地を打ち、耳をつんざくような轟音を立ててひょうが落ちてきたのです! エジプト全地にひょうが降り、稲妻が光って、その炎が地を走りました! その嵐は全く収まることなく続いたので、ついにパロは耐えかねて、ヘブル人を去らせることを約束しました。そこでモーセが祈ると、嵐はぱったりとやみました。

  嵐が止むと、リオビムは、ひょうが溶けてぬかるみとなった道を通って家に帰ったのですが、そこら中どこを見渡しても、畑の作物は完全に地に打ちつけられ、かろうじて残っている木々もすべて、葉や枝がすべて落とされていました。そして、家に着いたリオビムが目にしたのは、岩のように堅いひょうに直撃されて死んだ奴隷や家畜の死体だったのです!

  エミマは、ゴセンとエジプト人の地の境にある橋の上に立って、その光景を眺めていました。恐ろしい嵐の音が過ぎ去るとヘブル人は皆、自分達の土地がやられたかどうかを見ようと家から出て来ましたが、驚いたことに、ゴセンにある畑や木々は全く被害を受けていなかったので、とても喜びました。けれども、水路の向こうの、わずか数メートル先のエジプト人の地は、災害でめちゃめちゃになっていたのです!

  ところが、嵐が止むと、パロは約束を守ることを拒否しました。モーセは重ねて、自分の民を去らせるようにとパロに警告しましたが、パロはそれを拒んだのです。するとリオビムや他の家来たちはパロに嘆願して言いました。「その民を去らせて下さい! エジプトが壊滅状態なのがわからないのですか?」

  それでもパロは拒んだので、主は東風を送り、一晩中吹かせられました。そして朝には、風がものすごい数のイナゴを運んできました。イナゴが、エジプト中に群をなして押し寄せてきたのです。このようなイナゴの災害は、それまで一度としてありませんでした! 水路の土手の縁から、エミマは恐怖におののきながら、無数のイナゴの大群が黒雲のようになって、リオビムの畑の上にさっと降りてくるのを見ていました。イナゴが覆ったので、地は一面、真っ黒になり、ひょうの被害を免れた作物をことごとく食べ尽くしてしまいました。イナゴが通り過ぎた後には、エジプト全土において、木にも地面にも、緑は少しも残っていませんでした!

  エジプトの空はひしめきあうイナゴの大群でいっぱいになったのですが、まるで目に見えない壁か何かでさえぎられているかのように、その内の一匹も、ゴセンの地には飛んで来ませんでした! そこに立っていたエミマと彼女の兄弟達、他のヘブル人達はみんな、畏敬の念に打たれ、主が御自身の子供達を力強く守って下さったことを感謝して、主を拝しました!

  信じがたいことに、イナゴが飛び去ると、パロは再びその心をかたくなにしたので、さらにもう一つの災いが襲ってきました! 何が起こったのか見ようと家族と外に出たエミマは、思わず息をのみました、「あれは何なの?!」

  「わからないよ。」と、父はささやきました。  彼らの前には、生まれてこのかた見たこともないような、暗黒の霧の壁が、ゴセンとエジプトを隔てる橋の上の方を渦巻いていました。あまりにも闇が深く、一寸先も見えないほどでした。

  エジプトの地をおおったその闇は非常に深く、まさに暗黒といえるものだったので、誰一人として、何も見ることができませんでした! リオビムは自分の屋敷内で家具につまずきながら、やっとの思いでランプを見つけましたが、火をともしても、その光は暗闇に吸い込まれてしまいました!

  「一体、これは何とひどい暗闇なんだろう?」と、リオビムは声を震わせながらつぶやきました。「暗闇があまりに濃くて、さわれるほどだ!!」

  そのひどい暗闇のせいで、エジプト全地では家の外に出る者は一人もおらず、3日の間、すべての活動が止まってしまいました!−−けれども、ゴセンの地では、いつもと同じように太陽が輝いていたのです。

  その後で主は、もう一つの、そして最後の災いを、パロとエジプトに下しました。真夜中に主は、全地に死の使いを送られたのです!

  モーセが指図したように、ヘブル人は皆、過ぎ越しの食事をし、主の保護に対する信仰の証しとして、小羊の血を家の入り口の柱に塗りました。けれども、信仰を持たないエジプト人達は、そうすることを拒みました! それで、主の死の使いは、入り口の柱に血が塗られている家はそのまま通り過ぎたものの、血の塗られていない所には、入って行って、その家の長子を殺しました!

  真夜中に主は、パロの王宮の長子から、そこの地下牢の囚人の長子まで、エジプト中のすべての長子を打ち殺したのでした。その夜、パロとエジプト人は皆目を覚まし、エジプトの全地に大いなる嘆きがありました。死人のない家がなかったからです。ゴセンの地にいるヘブル人の耳には、国中の何百万ものエジプト人の嘆きが聞こえてきました。

  けれどもイスラエル人の間では、全てが静かで、犬一匹ほえることもありませんでした。エジプト人は嘆き、神の力をひどく恐れてやって来ました。そしてヘブル人に出て行ってくれるようにと嘆願しました。エジプトの国はすっかり荒廃してしまったからです!その夜イスラエル人は、約束の地へ向かってエジプトを去りました。自分達を、ものすごい災いと災害のすべてから奇跡的に守って下さった神を称えながら!

 

考えてみるべき課題

  (1) 主は、その時代に、奇跡的にご自分の民を守られたのだから、確かに今でも、また未来の大患難の時でも、ご自身の民を苦しい時にあって守ることができられるはずですし、必ずそうして下さいます!神の審判が邪悪な者達に対して下る時、普通神の子供達はそれらを免れるか、または危害を受けないですむものです。(詩篇91篇を読んで下さい)

  (2) イスラエル人がエジプト人の奴隷となって受けた迫害は、エジプトに下った神の怒れる審判に比べれば、無きに等しいものです。神がご自身の民をゴセンで繁栄させられている一方、邪悪なエジプト人はひどい災いに苦しんでいたのです。

  (3) もしあなたが神に仕えているなら、あなたの命は神にとって尊いものです。あなたは神のために働く者であり、あなたの奉仕は神にとってとても貴重なのです。ですから神は、ご自分のメッセージを広め続けることができるよう、あなたを守って下さいます。聖書のどの時代においても、主は奇跡的にご自身の子供達を守ってこられました。時には彼らは何かに苦しむこともありましたが、神はいつも、最後には彼らを救い出して下さいました。主は、あなたがどんな種類の災いにも遭うことはない、とは言っておられません。けれども、すべてその中から助け出す、と言っておられます! (詩篇34:19)

  ある程度の苦しみや迫害は、真のクリスチャンにとって通常のことですが、主は普通、大勢の真のクリスチャンが、邪悪な者の手で一掃されるのを許されたりはしません! 今までに数え切れないほど大勢のクリスチャンが存在してきたことを考えれば、殉教者として死んだクリスチャンの数はごくわずかです!

  (4) 神の御心の中以上に安全な場所は、世界中のどこにもありません! 主の保護はちょうど、私達のまわりに力のバリヤーがあるようなものです。敵はそれを貫くことはできません! 神の御言葉には、主の使いが「私達のまわりに陣をしく!」と書かれています。(詩篇34:7)そして悪魔は、私達に害を及ぼすことはできないのです!−−神の御心の外に逃げ出して、私達を保護している神の力の領域から離れてしまわない限りは!−−そこから逃げ出してしまうなら、私達は、悪魔の攻撃を受けても当然です。私達が主に不従順で、正しい道からそれているのですから!その時には、主は、ご自身の律法によって、あなたを守ることができないからです。

  (5) 私達神の子供達は、非常に危険な敵と戦っています! だから、絶えず主と主の保護を求め、主の祝福を感謝し、神と神の御言葉によく耳を傾けて、御心の内に留どまっているべきです。悪魔は「ほえたけるししのように、食いつくすべきものを求めて歩きまわっている」からです!(第一ペテロ5:8)ですから、あなたが悪魔の次の餌食になることがないように気をつけて下さい!

  (6) 神の天使たちは、私達のまわり、私達の住む場所のまわりに陣をしいており、夜も昼も私達を守っています! たとえまわりで、戦争や騒動や混乱が渦巻いていても、イエスを信頼するなら、あなたは、心に安らぎを覚え、家の中にも平安を保つことができます! 主はいかなるものからも、あなたを守ることができるのです!(詩篇121:8) あなたが主の仕事をし続け、福音を宣べ伝え続けることを主が望んでおられる限りは、主はあなたの面倒を見なければなりません! 主は御言葉の中で何度も何度もそれを約束されているので、思いわずらうことは全然ないのです。もし神の約束を信頼するなら、あなたの未来は明るいものになるでしょう!

 

  祈り:主よ、あなたは、ご自身の良き約束を一つとして破られたことはありません!(列王紀上8:56)あなたはあらゆる時代において、ご自身の子供達を守ってこられました。あなたはその内の一世代として見捨てられたことはありません。そして、私達の世代である今のこの世代を見捨てられることもありません!

  主よ、私達が常にあなたがすぐそばにいて下さるのを感じ、「悩める時のいと近き助け」である、あなたを見上げることができますように!(詩篇46:1)−−なぜならあなたは、前途にどんな困難が待ち受けていようとも、必ず私達を守って下さるからです! 試練や苦難があっても、そうしたものが私達を負かしてしまうことはありません、主よ。あなたは、私達を前進させ続け、あなたのメッセージとあなたの愛を待ち望んでいる人々を私達が助けることができるよう、力強い奇跡を行なって下さいます。最後の最後に至るまで!(マタイ28:20) −−イエスの御名によって、祈ります。