宝 P414-418

 

歴史に見る冒険実話集!

 

サムエル−−天国からの子供!

(サムエル記上1章全部と2章18-21節)

 

  イスラエルの民が約束の地を征服したおよそ3百年後のことです。エルサレムから40キロほど北にあるシロという町には、昔モーセが荒野に建てた幕屋が建っていて、そこはなお、イスラエルの人々の礼拝の中心地となっていました。毎年、イスラエルのいたる所から、信心深い者達が、そこで主の祭壇に犠牲を捧げようと、自分達の雄牛やヤギや子羊を連れてやって来たのでした。

  そこからあまり遠くない山地に、ラマという小さな町があり、エルカナという人が住んでいました。エルカナには二人の妻がいて、一人はハンナ、もう一人はペニンナといいました。ペニンナには数人の息子と娘達がいましたが、ハンナには子供がいませんでした。毎年毎年、エルカナと家族は、主を拝し、主に犠牲を捧げるために、ラマからシロに旅をしました。

  犠牲を捧げた後エルカナは、ユダヤの習わしに従って、脂肪が全部焼きつくされるまで、若い雄牛をそのまま祭壇の火の上に残しておき、後になって肉を降ろして、幕屋の鍋で煮ました。ほとんどの肉は貧しい者達に与えられましたが、最上の部分は常に、主の祭司達に与えられました。また、その犠牲を捧げた家族も、その日の食事に必要な分を取りました。

  幕屋の近くにいたエルカナの二人の妻と子供達は、皆で食事の準備を整え、そこへ、エルカナが大きな真ちゅうの蒸し鍋に入った肉を運んできました。主に捧げられた肉を食べるというのは、とても特別な行事でした。ある意味では、それは主の豊かな祝福にあずかることを象徴していたからです。

  今年もエルカナは、その肉を彼の妻ペニンナに分け与え、また彼女の息子や娘達にも分け前を与えました。子供達は、主の祝福の中でも最も大きな祝福なので、この行事の時には常に、ペニンナは大得意でした。

  ハンナとエルカナの間には一人も子供が産まれませんでしたが、それでも、エルカナはハンナを愛し、彼女に深く恋をしていました。ですからエルカナは、彼女にいつも、一人分だけでなく、二人分の肉を与えていました。

  ペニンナは、ハンナを軽蔑のまなざしで見ていました。そして、エルカナが幕屋に鍋を返しに行くために立ち上がり、自分達の会話が聞こえない所までいってしまうと、ペニンナはハンナにつらくあたり始めました。

  「主があなたに一人も子供を下さらないとは、何て哀れなことなんでしょうね、ハンナ!」と、ペニンナはあざ笑いました。「きっと、あなたがいい母親にはなれないことを、主はご存じなのね! でも、主がどれだけ私を祝福して下さったかを見てごらんなさい! ええと、何人子供達がいたかしら?一人、二人、三人、四人、五人‥‥」

  ハンナは気落ちした様子で地面を見つめながら答えました、「でもエルカナは、あなたと同じくらい私のことも愛してくれているわ。」

  ペニンナはずうずうしくも、こうやり返しました、「そうかしら? エルカナの子供を全然産んでいないのに? ああ、ハンナ、あなたは何て哀れなんでしょう。子を産んだ母親の喜びを知らないんだから。子供を産み、子供に慕われ、尊敬され、愛されるという母としての喜びを決して味わうことがないなんて! ええ、そうよ、ハンナ、あなたはまるで、全然実を結ばない枯れた木のようだわ。あなたは‥‥うまずめなんだもの!」  ハンナはずっとそこに座っていましたが、涙が頬をつたい始め、とうとうこのペニンナの最後の一言で、泣き声を上げて、走り去って行きました。幕屋に行っていたエルカナは、家族が特別な昼食を取っている芝生の所へ戻っている時に、ハンナが泣きながら走って行くのを見て、彼女の後を追いました。

  ハンナに追いついた彼は、「ハンナよ、なぜ泣くのか? なぜ食べないのか?」と尋ねました。

  すすり泣きながらハンナは答えました。「毎年こうなんです! ペニンナが私にいやがらせを言って、主は私をうまずめにして、子供を産めないようにされたんだと責めるんです!」

  エルカナはすすり泣く妻を優しく腕に抱いて言いました、「しかしハンナ、私はおまえを心から愛しているではないか! そしておまえが私を愛していることも知っているよ! それで十分じゃないか? 私はおまえにとって、10人の息子よりもまさっているではないか?」

  エルカナは戻って食事をするよう彼女を説得しようとしましたが、悲しくて食べ物が喉を通りませんでした。ですから彼女は席をはずして、幕屋に行きました。そこには、年老いた主の祭司、エリを除いては誰もいませんでした。エリはその大きな幕屋の入り口に座っていました。

  ハンナは泣きながら必死に主に祈りましたが、悲しみのあまり胸が張り裂けそうで声も出ませんでした。彼女は誓いを立て、心の中で主に向かって言いました、「ああ、主よ、もしあなたがただ私の不幸を顧みて息子を与えて下さるなら、私は、その子が生きている限り、その子を一生、あなたに捧げます!」

  彼女は長い間祈っていましたが、声がしないのに口だけが動いており、顔が苦悩でゆがんでいるのに気づいたエリは、彼女が酔っているのだと思って、腹立たしげにたしなめました、「いつまで酔っているのか! 酔いをさましなさい!」

  涙を流しながら、ハンナはエリの方を向き、嘆いて言いました。「いいえ、わが主よ! 私はぶどう酒を飲んだのではありません。とても心が苦しくて、深い悲しみと苦悩のあまり、主に心を注ぎ出していたのです!」

  荒々しい言葉をかけたことを恥じて、エリは優しく彼女を慰めました。「安心して行きなさい。どうか、神があなたの求めたことを聞きとどけられるように。」

  ハンナは、エリにお礼を言って立ち上がり、エルカナとペニンナと子供達が食事をしている所へ戻りましたが、彼女はもはや、打ち沈んだ様子はしておらず、晴れ晴れとした表情で座って食事をしました。翌朝、彼らはラマにある家に帰りました。

  その後、エルカナはハンナと寝、主は彼女の祈りに答えられました。まもなくハンナは身ごもって、男の子を産んだのです。彼女はその子を「サムエル」と名づけました。それは「主に求めた子」という意味です。子供ができて、彼女は何と幸せだったことでしょう! そして、その子が本当に、天国から直接送られてきた愛の贈り物だと知っていました!

  エルカナはその翌年も、主への毎年の犠牲を捧げに家族一同で出かけましたが、ハンナは同行しませんでした。彼女は言いました、「私はこの子が乳離れしてから、主の所に連れて行ってこの子を主に捧げ、いつまでもそこにおらせましょう。」

  「あなたが最善だと思うようにしなさい。」と、エルカナは答えました。「必ず、主への約束を果たすように!」

  そういうわけで、ハンナは家に残って、その子に乳を飲ませました。そして4才になった頃、サムエルは乳離れし、ハンナは彼をシロに連れて行きました。そこで息子をエリの前に出して言いました、「私はこの子を求めて祈りました。すると主は、この子を与えて下さいました。ですから今私は、そのお返しとして、この子を主に捧げます。この子を一生の間、主に捧げましょう。」 そして、彼らはラマの家に帰って行きましたが、幼いサムエルは、エリと共に幕屋に残りました。

  彼の母親であるハンナは、彼のために小さな上着を作り、毎年、夫のエルカナと共にその年の犠牲を捧げに行くたびに、新しい上着を持ってきました。そして、エリはエルカナとハンナを祝福して言いました。「あなたがたが主に捧げた者の代わりに、主がこの女によってあなたがたに子供達を与えられるように。」 そして主はハンナにとても恵み深くあられ、彼女は3人の男の子と2人の女の子を産んだのでした!

  一方、サムエルは主に仕えながら育ち、イスラエルの歴史においても最も偉大な預言者、また裁きづかさの一人となったのです!

 

考えてみるべき課題:

  (1)ハンナは切に子供を産みたいと願っていました。子供を産み育て、訓練し、愛するという、女性の人生で最も大きな役割の一つを果たすためでした。神の御言葉には、「子供たちは神から賜わった嗣業であり、胎の実は報いの賜物である! たくさんの子供を持つ人はさいわいである!」(詩篇127:3-5)と書かれています。 それが、主を愛し、神を敬っている妊娠した女性が、いつも、満ち足りて、輝きを放っているように見える理由です。彼女達は、母親としての使命を果たしており、「生めよ、ふえよ。」(創世記1:28)という主の第一の戒めを果たしているからです!

  (2)それは、神に反して堕胎や産児制限や避妊手術を奨励する「現代の」風潮と何と違っていることでしょう! 過去ほんの数十年の間に、大勢の人々が、赤ちゃんや子供達という祝福を感謝しないようになったのです! そして人々は、不自然な方法で子供の誕生を妨げるようにさえなりました! 神は堕胎には完全に反対しておられます。それは子供殺しです! 人が何と呼ぼうと、それは殺人であり、悪魔からのものなのです! 神は産児制限を嫌っておられます!

  (3)この物語は、子供を創造することのできるのは神だけである、ということを説明するのに役立ちます。あなたは、赤ちゃんを作ろうと日夜、一生懸命努力することはできますが、それが神の御心でないなら、赤ちゃんはできません! 赤ちゃんを創造されるのは、主です! 主こそ、女性を妊娠させられる方なのです! 未だかつて、「偶然」に生まれた赤ちゃんなどいません!−−神がそれを起こさせられます。そして神は間違いを起こされません。ですから、それに対して異議を唱えることなど、誰にもできないはずです!

  (4)サムエルは、ハンナの祈りに対する答えであっただけではなく、神の民が必要としていた、強いリーダーとなる人物だったのです。けれども、もしハンナが、非利己的にサムエルを主に捧げて、神を愛し神に仕えることをサムエルに身をもって教えなかったなら、サムエルはそのような人物にはならなかったことでしょう。ハンナが喜んでサムエルを主に捧げたことから、彼は神の望んでいた通りの者になったのです。あなたは、昔のハンナがしたように、喜んであなたの子供達を神の奉仕のために捧げますか? 彼女が受け取った報酬を見てみて下さい!

  子供達を持つのは何という祝福でしょうか! そのことを考えれば、妊娠中の多少の不快感など全く苦にもなりません! 何と言っても、神が素晴らしい永遠の魂を創造するために、あなたを使われているのですから! 神は、全世界で最も重要な仕事の一つを遂行させるために、あなたがた「弱い器」を使われるのです!−−その仕事とは、赤ん坊を産むことです!−−アァメン?−−神があなたを祝福されますように! 私達の子供達だけが、この世から来世に連れて行ける唯一のものです! そして、永遠に一緒にいることができるのです! あなたの子供達は永遠にあなたと一緒にいるでしょうか?