宝 P402-404

 

涸れることのない流れ!

 

  私の意識の中に、ある事実がめばえた日のことを、私は決して忘れないでしょう。聖書にある約束はすべて現実的なものであって、日常の必要に実際に適用できるのだという事実がめばえた日のことを。それは私にとって一つの啓示でした! ごく幼い頃から聖書を教えられてきましたが、神は、実際に果たすつもりで、数多くの聖書の約束をなさったのだということには、気がついたこともありませんでした。ましてや、私が信仰の手を伸ばし、きっぱりと、それらの約束を果たして下さいと言うなら、神はまさに約束通りにして下さるということなど、全く知りもしませんでした。

  神の言葉には、「それらのものによって、尊く、大いなる約束が、私達に与えられている。それは、あなたがたが、世にある欲のために滅びることを免れ、神の性質にあずかる者となるためである。」とあります。−−第二ペテロ1:4。 ですから、神の約束を見落としたり、軽くみるというのは、深刻な問題です。なぜなら、そうした約束によって私達は「神の性質にあずかる者」となるからです。あえて、約束を手にして、神が実際に約束を果たして下さることを期待して一歩踏み出すなどというのは、以前の私には考えられないことでした。信仰に関する私の限られた知識によると、聖書は単に美しい言葉でしかなく、真剣に受け止めたり、実際に適用したりするためのものではなかったのです。残念なことに私は、「神はどうして聖書の中でこんなにたくさんの約束をされたのだと思いますか? 何のためだと思いますか?」と聞かれて、「なぜって、ただ空白を埋め合わすためじゃないかしら。」と答えた女性のようだったのです。

  けれども、よく考えてみると、私の場合はむしろ、本当に無知なスコットランドの婦人に近かったのでしょう。彼女は、スコットランドの山の中にひっそりと暮らしていましたが、とても貧しくて家賃も払えない状態でした。だから教会が、彼女の代わりにそれを払ってあげていたのです。

  ある日、彼女の教会のとても親切な牧師が、家賃を持って来た時にこう言いました。「マッキントリックさん、こんなことを言うと失礼かもしれないが、あることについて率直に話をさせてもらってもいいですかね。家賃を払ってあなたを助けているあなたの友人達が、どうして息子さんがあなたを助けないのかわからないと言っているんですよ。息子さんはオーストラリアで大変立派な職業に就いておられ、いい息子さんで、あなたのことをとても愛していると伺っているが、そうじゃないのですか?」すると母親はこう答えました。「ええ、おっしゃる通りですよ。息子は私のことを決して忘れたりはしません。毎週、とても愛情のこもった手紙を書いてきてくれます。その手紙を一つ、牧師さんにも読んで頂きたいものですわ。」

  そんなに母親のことを愛していながら、お金も送らないという息子に好奇心を抱いた牧師は、即座に、ぜひ読みたいものだと答えました。さっそく、その婦人は二つの包みを持ってきて、その一つを牧師に差し出し、「これが息子からの手紙です。」と言いました。そこで、牧師が色のあせたひもをほどいていると、彼女はこう言ったのです。「手紙を書いてよこすたびに、息子はきれいな絵を送ってくれるんですよ。大きな絵じゃないけれど、封筒に入れるのにちょうどいい大きさなんです。息子が私のことを思っていてくれることがわかるでしょう。」

  牧師は、その言葉に興味をひかれ、婦人を見ました。「どの手紙にも絵が入っているって?」彼は、ますます好奇心がつのってきて、「その絵も見せてもらっていいかね?」と尋ねました。「どうぞどうぞ。男の人の顔の絵もあるし、馬に乗った男の人の絵もあるし、王様の絵もたくさんありますよ。ほら、これは、イギリスの王様の絵です。王様、万歳!」と彼女が言うと、牧師も思わず、「息子さん、万歳!」 と叫びました。「あなたはお金持ちなんですよ! これはお札です。お金なんです! これはすごい財産だ。この家の中に、長い間たくさんのお金を持っていたのに、ただの絵だと思って使いもせず、貧しさにあえいできたとは!」

  聖書にある約束に関して、私にも全く同じ問題がありました。私は、それらは単なる美しい描写、単なる美しい言葉にすぎないと思っていたのです。例えば、詩篇23篇は、「主はわたしの牧者であって、わたしには乏しいことがない。主はわたしを緑の牧場に伏させ、いこいの水際 (みぎわ) に伴われる。」というふうに始まりますが、私にとってそれは単に、美しい詩か、絵物語にすぎなかったのです。それを日常生活にそっくりそのままあてはめることができるなどとは、夢にも思いませんでした。つまり、イエスが、私達にとってそうした素晴らしい羊飼いであって、私達がイエスを信頼するなら、その詩篇のどの節をも、私達の人生において成就して下さるなどとは、全然思わなかったのです! 今日の多くの人々が、聖書の中にある何百もの約束を、そんなふうにしかみていないとは、何と残念なことでしょうか。

  これから話す婦人のような神の聖徒というのは、何と数少ないことでしょうか。その婦人の家で、牧師がお茶に呼ばれていました。彼女がキッチンにいる間、牧師は、彼女の、よく読まれてぼろぼろになった聖書を手にとり、何とはなしにページをめくっていました。すると、ページの隅のあちらこちらに、証済、と書いてあるのが目につきました。それで、その婦人がお茶を運んで来た時、彼は、「奥さん、あなたの聖書を見せてもらっていたんですが、あちこちにたくさん書き入れてある、この証済というのは、どういう意味なんですか? ここにも、ほら、ここにも、証済、とあります。」と尋ねました。すると彼女は、喜びで顔を輝かせ、こう言ったのです。「ああ、それは、証明済みという意味なんですよ! どうしても必要なことが生じたら、私はそうした約束を選んで、それは自分に約束されたものなのだから実現して下さいと要求したんです。だから、その印のついた約束は、私が試してみて、真実だと証明されたものなんですよ!」

  本当に、何という貴重な話でしょう。そして、主はまさに、私達がそうやって使うために約束をされたのです。主は、私達が助けが必要な時に主の約束を使い、主の言葉が真実であることを証明するのを望んでおられます。「これをもってわたしを試しなさい、と主は言われます。」 そうすれば、力と、信仰と、快い確信をもって、私達も、たくさんの聖書の節の隣に「証済」と書き入れられるようになります!

  神の言葉には、「尊く、大いなる約束が、私達に与えられている。」とあり、そうした約束が何百もあるのです! 豊かな供給、無限の資源、まさしく「涸れることのない流れ」です! 「この地に入って、それを自分のものとしなさい。」そうしないなら、私達は頭の鈍いイスラエル人のようになってしまいます。神は、彼らのために豊富なたくわえを用意しておられたのに、彼らは、彼らの不信心のゆえに、約束のものを受け継がなかったのです。「私達の信仰こそ、世に勝たしめた勝利の力である。」−−第一ヨハネ5:4