ヘブンズ・ライブラリー Vol.6-3

 子供から大人まで楽しめる

 天国の図書館からのストーリー集

 

空っぽの箱

 

 チャーリーは、両親と 弟と妹と いっしょに、山の しゃ面にある 大きな 農家に 住んでいました。チャーリーは たいていは 良い子でしたが、子どもなら だれでも そうで あるように、時には 悪いことも しました。

 何度も 注意されているのに、時々、自分が くつを はいているのも わすれて、ママの ベッドの 上に 飛び乗りました。それで、ベッドカバーが どろんこに なって しまうのです。後で 悪かったと 思って、ベッドカバーを 部分洗いしたりも しました。悪かったと 思っていることを ママに わかってもらうためです。

 チャーリーは 明るい子で、ママと パパ、それに 弟と 妹を愛していました。でも、チャーリーには 悪い クセが あって、どうしても やめられないようでした。と言うのは……。

 食事の 時間に なると いつも、チャーリーの 心は 喜びで 高鳴りました。一日の 内で 一番 好きな 時間です。おいしい 食事のことを 考えると、よだれが 出そうです。両手を こすりあわせ、うれしくて まゆ毛が 上下に ぴくぴく 動きました。

 いすに すわっても、祈っている間中、そわそわして 体を もじもじ させてばかり いました。そして 祈りが 終わると、待ってましたと ばかりに 目を 大きく 見開いて、文字通り、盛り皿に 飛びつくのです。

「チャーリー  最初に 弟や 妹に 取らせて あげなさい。」

と言う パパの 声が 聞こえます。パパが 盛り皿を まず ママに 渡し、次に 妹に 回り、ゆっくりと 一人ずつ 順番に 回ってきます。

 チャーリーは 食べることが 大好きでした。けれども、食べきれない 分まで 欲ばってしまう ことが あるのです。マッシュポテトに 七面鳥、シチューや きれいな 赤い トマトの 入った サラダに 目が 移ります。チャーリーは、とにかく 全部 たいらげて しまいたいと 思います。そして、みんなの 目の 玉が 飛び出そうに なるくらい たくさんの 食べ物を 自分の お皿に 山盛りに するのです。

 チャーリーは もりもり 食べました。何て おいしいんだろうと 思いながら。チャーリーは 食べることが 大好きでした。けれども、お腹が いっぱいに なってくると、だんだん ゆっくりに なります。少し、また 少しと ゆっくりに なっていき、ついには、もう これ以上 食べられなく なります。そして ほとんど 毎食ごとに、チャーリーの お皿には いくらか 食べ残しが あります。まるで 食べてくださいと 言わんばかりの 食べ物が…。

 きまり悪そうな チャーリー。自分の お皿から 目を 上げると、ママと 目が ばったり 合います。もう ママには、次に チャーリーが 何と 言おうと しているか わかっています。

「ママ、おなか いっぱいに なっちゃった。」

チャーリーは とても 謙遜で、すまなさそうな 声で 言います。

「これ、盛り皿に もどしても いい?」

 ママは 食べ残しを あまり 快く 思わなかったので、時には パパが チャーリーの 分を 食べてくれたり、弟の ライアンが 食べてくれたり、それは それで いいことでしたが、そうでない時は…。あらあら。チャーリーは、しまいには ないしょで 食べ物を すててしまうのです。チャーリーの 悪い クセというのは それで、どうしても やめられませんでした。

 そんなことが あった まさに 次の 日も、食事の 時間に なるとチャーリーは また そわそわし、まゆ毛は 上下に おどり、またもや、自分の お皿を 山盛りに しました。ママと パパは、もうちょっと

少なめに 取る 必要が あることを チャーリーに 説明しようと しましたが、おなかの すいた チャーリーは、まるで うわの空でした。

 ある夜、パパと ママは、チャーリーが ねた 後に 二人で 祈りました。チャーリーが 学ぶべき レッスンを 学べるように、主に 求めたのです。

 その夜、チャーリーが ねむりに つくと、白く かがやくものが部屋に 入ってきました(チャーリーは 気づきませんでしたが)。

天使が、幸せそうに ねている チャーリーに 歩み寄り、ひたいに 手を 置きました。その しゅんかん、天使の 手を 通して 思考と 絵像が ねむっている チャーリーの 頭の 中に 伝わりました。すると チャーリーは 夢を 見始めました。

 夢の 中で、チャーリーは 長い ろうかを 見ました。この ろうかを 歩き始めると、両側の かべに 大きな 絵が たくさん かかっているのに 気づきました。おかしなことに、それぞれの 絵は、いろいろな 種類の 食べ物の 絵でした。大きくて おいしそうな なしや ももが いっぱい のった 果物皿、ステーキと フライドポテトが 盛られた 大きな お皿、おいしそうな チーズマカロニの のった お皿などです。ろうかは 長々と 続いており、絵を 通り過ぎる たびに、チャーリーは ひもじそうに 手を こすり合わせ、まゆ毛は 上下に ぴくぴく 動き、夕食のことばかり 考えるのでした。

 ろうかの 終わりに 来ると、短い 柱が 立っていました。高さは チャーリーの 肩ほどで、上は 小さな テーブルに なっていました。その上には 箱が ありました。チャーリーが 歩み寄って 箱を 手に取ると、大きな 四角い ふたが あって、簡単に 開きました。

 箱の 中を 見ると、おどろいたことに、中は 空っぽでした。チャーリーは まごついて、そこに 立ちすくんで しまいました。箱の 中に 何か 入っているはずだと 思っていたのに、何も 入っていなかったからです。 そして、目が 覚めました。

 チャーリーには 見えませんでしたが、天使は まだ そこに 立って、チャーリーを 見ていました。

 チャーリーは 起き上がり、とまどった 表情で ベッドに すわっていました。夢が とても はっきりと 鮮明だったので、何か 意味が あるに ちがいありません。それは 主からの メッセージだったのかも しれません。でも 何の メッセージか、チャーリーには さっぱり わかりません。

 チャーリーは 手を 組んで 頭を 下げ、祈りました。

「愛する イエス様、どうか、あなたが この夢を 通して、ぼくに 伝えようとしておられる メッセージを 教えてください。」

 すると、太く 大きく 書かれた 文字が、チャーリーの 頭の 中の スクリーンを よぎっていくのが 見えました。まるで、チャーリー専用の 小さな テレビで 見た、ファミリーファンの ビデオの ようです。

 「物を むだに しなければ、物が なくて こまることも ない。」

 それで すべてが はっきりと わかって き始めました。食事を 残すのは 小さな ことの ようですが、主は 何か 大切なことを 教えようと されていたのです。この箱は、チャーリーのために 主が 持っておられる 倉庫を 表していました。主が くださるものを 大切に するなら、箱に 何か 入れてもらえ、むだに するなら、何も 入れて もらえないのです。夢の 中で 箱が 空っぽだったのは、食べ物など、主が くださったものを 大切にして いなかったからです。それで、主は 望むほど チャーリーの 倉庫を 満たすことが できなかったのです。

 急に、チャーリーは 自分が 物を むだにした 時の ことを 次々と 思い出しました。中でも、食べ残しを すてて、あたかも 食べたかのように 見せかけた 時の ことを。

 チャーリーは、小さなことは とても 大切なんだと 気が つきました。主は すべて お見通しなのです。物を むだに すると、後々で 必要に なってくる 物を 主が 供給して 祝福することが できなく なるのだと いうことを 学びました。チャーリーは ブーメランの 話を 思い出しました。自分の することが 後で 自分に 帰ってきて、蒔くものを 刈り取ると いうことを です。

 主は チャーリーに、良い 管理人に ついての 聖書の 話を 思い出させました。主から もらった

タラントを 投資して 使った 者たちは、祝福されて もっと 多くを あたえられたけど、タラントを むだにした 者からは 取り上げられたのです。チャーリーは、食べ物のような 小さな ことでさえ、むだに するなら、主は 祝福を 送りたく なくなって しまうことに 気づき始めました。せっかく あげても、それを 感謝し、賢く 大切に 使うか どうか、主には わからないからです。

 ついに 夢の 意味が わかったのです。(夢で 見た 空っぽの 箱は、ぼくが むだ使いを したために、もらえるはずだったのに もらえなかった 祝福の ことだったんだ。)

 天使は にっこりと ほほえみました。チャーリーに やっと わかって もらえたことを 喜んでいました。チャーリーが すまなく 思い、これからは もっと 良い子に なって くれるとわかったからです。

 天使は そっと、チャーリーの 耳元に 来て ささやきました。

「心配いらないよ、チャーリー。だれでも 間違いは するからね。お皿の ものを 全部 食べ切れなかったからと 言って、それで おしまいって わけじゃ ないんだ。君の 心が 正しくて、『物をむだに しなければ、物が なくて こまることも ない。』という 大切な 点さえ わすれなければ、主は 将来 もっと 大きくて すごい 祝福を 君に まかせられるように なる。君が 祝福を 大切にし、良い 管理人に なるって わかるからね。そして 主は 君に、『よくやった、良き 忠実な しもべよ。主人と 共に 喜んでくれ。』と 言われるだろう。チャーリー、君が 節約することや 正直に なること、忠実に なることを 学んだ 時には、君の 箱は もう 空っぽでは なくなる。君の 箱は 祝福で あふれるように なるんだ。」と。そして、その通りに なったのでした。