ヘブンズ・ライブラリー Vol.6-2

 子供から大人まで楽しめる

 天国の図書館からのストーリー集

 

ねこのスクラッピー 語り:ジェフ

 

「スクラッピー、おいで、スクラッピー。」

 スクラッピーは ぼくの かわいい ねこ。言うことを、とても よく 聞いてくれるんだ。ぼくと スクラッピーは、ぼくたちにしか わからない 特別な 愛情で 結ばれている。

 今から、ぼくたちの 話を してあげるね。

ぼくたちが まだ 地上にいた 時の ことだよ。ぼくは まだ 小さくて、スクラッピーは ぼくの 一番の 友だちだった。ぼくは まだ 救われて いなくて、イエス様のことなんて、ぜんぜん  知らなかった。ずっと 後に なってから イエス様を 見つけたけど、その話は また 今度ね。

「おいで、スクラッピー。」

 ぼくが よぶと、スクラッピーは 地下室から 階段を かけ上って来た。スクラッピーは 真夏の 暑い 日には 地下室で ねるのが 好きなんだ。よべば いつでも 来てくれるなんて、特別だよね。よんでも 来ない ねこも いるでしょ。でも ぼくの スクラッピーは、本当に 特別なんだ。学校から 帰ると、いつも げんかんで 待っていて、うれしそうに ぼくを むかえてくれる。目が 愛で きらきら かがやいていたよ。そして、ぼくの 足に 体を すりよせて くるんだ。スクラッピーは ぼくが 愛してることを 知ってたし、ぼくも スクラッピーが 愛して くれて いるのを 知っていた。

 ある朝、目が さめて いつもの通り、「スクラッピー、おいで、スクラッピー。」とよんだけど、来なかったんだ。どうしたんだろう。

(おかしいな。いつもと ちがうぞ。)ママは もう とっくに 外に いた。(たぶん ママが 外に 出して あげたんだろう。)ぼくは そう 思った。

 それで、スクールバスに 間に合うように 家を 出た。学校は それほど 遠くないけど、バスが 家の 近くまで むかえに 来てくれるんだ。学校から 帰って また スクラッピーを よんでみたけど、まだ 来なかった。

「ママ、スクラッピーを 見なかった。」

「見てないわよ。ねずみでも つかまえてるんじゃ ないの。 夕食には もどってくるわよ。」

 ママは そう 言った。そう言えば、エサの時間には いつも 家に いるものね。

 エサの時間に なった。でも、まだ 帰って来ない。ぼくの 心は いたみ始めた。(おなかが すいて ないのかも しれないな。きっと夜には 帰ってくるさ)と 自分に 言い聞かせた。

 夜に なった。だけど、スクラッピーは 帰って来ない。心配で なかなか ねむれなかった。(車に ひかれてたら どうしよう。 それか、ほかの 動物に やられてたら。) ぼくは おそれと 心配で 心が はりさけそうだった。その時 イエス様のことを 知って

いたら、スクラッピーのために 祈っていたのに。今なら、神様が 守ってくださるという 約束や、すべて うまく いくようになるという 約束を 知っている。心を イエス様に とめているなら、イエス様は 平安を くださると 約束している。

 とにかく、その時は 恐れと 心配で いっぱいで、まくらに 顔を うずめて 泣きじゃくるだけだった。ママや パパには はずかしくて この気持ちを 話すことが できなかったんだ。やがて ねてしまったけど、次の日 目が さめても ぼくの 頭に あることは ただ一つ、スクラッピーの ことだけだった。(スクラッピーは どこ。ぼくの 大切な スクラッピーは どこに 行っちゃったの。) 

スクラッピーを よびながら 一階に かけ下りたけど、いなかった。ドアを 開けて 外を 見たけど、そこにも いなかった。

「ママ、スクラッピーを 見なかった。」

「見てないわ。でも、きっと どこかに いるはずよ。」

 ママの 声は 落ち着いていた。ぼくが どんなに 心配してるか、わかってないのかなぁ。

 その朝は、朝食も のどを 通らなかった。おなかも すかなかった。学校にも 行きたく なかったけど、行かなくちゃ いけないのは わかっていた。教室でも、考えられるのは スクラッピーのことだけ。いったい どこに いるんだろう…。(帰ったら 屋根裏を のぞいてみよう。近くの 野原も 見てみよう。森の 中も さがしてみよう。きっと 見つかるさ。)

「ジェフ、聞いてる。」と 先生が たずねた。

「何ですか、ジョンソン先生。」

 授業が ぼくの 耳に 入っていないことが、先生には わかった みたいだ。小学校の 先生は ぼくを 自分の 子どものように かわいがってくれた。だから、教えようと していることが ぼくの 頭に 入ってないことも、お見通しだったんだ。ぼくの 心は、大切なものを なくした 気持ちで いっぱいだった。もっと 愛情をこめて かまってあげれば よかったなぁ。ぼくの 心は いたかった。ぼくが どんなに

スクラッピーを 愛しているかなんて、だれにも わからないだろう。でも、もう スクラッピーは いない。ぼくは 一生けん命 なみだを こらえた。いつも、強くて 勇かんで いなくちゃ いけないって 言われてたからね。

 その日、学校から 帰って、また ママに 聞いた。

「スクラッピー 見なかった。」

「いいえ。」

 このころまでには、ママも ぼくの 悲しみに 気が ついていた。だから ほほえみを つくろって 言った。

「かわいそうに。スクラッピーが まだ 見つからないのね。でも、きっと すぐに 帰ってくるわよ。」

 ぼくを なぐさめようとして くれたんだ。あまり なぐさめには ならなかったけどね。

 心の 中に イエス様が いたなら、イエス様が ぼくの 悲しい

気持ちを わかってくれ、気づかって くれていると わかっただろう。しがみつける 主の 約束と、信仰を 与えてくれる み言葉を 知って いたら よかったのに。もし、天国と 次の 人生のことを 知っていたなら、なぐさめに なっていたのにね。

 とにかく、ぼくは 言った。

「外で 遊んでくるね。」

「行ってらっしゃい。」

ぼくが 何を しようと していたか、ママには わかっていた。ぼくは 外に 飛び出し、野原に 向かった。

「スクラッピー。どこだい、スクラッピー。」

 ぼくは スクラッピーを よびながら、森の 中にも 行ってみた。木々を 見上げ、そこらじゅう さがしまわった。それでも スクラッピーは 見つからない。スクラッピーは いったい どこへ 行ったんだろう。さがしに さがしまわったけれど、スクラッピーは 見つからず、ぼくは 家に 帰った。夕食を すませ、ベッドに 入った。スクラッピーが いないので さびしくて、泣きねいりしてしまった。

 次の朝 起きた 時も、スクラッピーは いなかった。ぼくの 心の いたみなんか、だれにも わからないだろう。だから ぼくは だまって いた。その日 学校から 帰って来た 時も、まだ 落ちこんでいた。ママには もう ぼくの 気持ちが わかっていた。かくし切れなかったからね。

 バスを 降り、頭を たれて、重い 足を 引きずりながら 家に 帰った。いつもなら 早く 着替えて 友だちと 外に 遊びに 行こうと、喜びいさんで 家に 帰るのに、きょうは ちがっていた。ぼくの 周りの 世界が 真っ暗になったような 気分だった。重々しい 気持ちで げんかんの 戸を 開けて 中に 入り、台所の 方に 向かった。「おし入れの 中を 見てごらんなさい。何か あるわよ。」と ママが 言った。

「どの おし入れ。」

ぼくは ぼそっと つぶやいた。

「シーツや タオルが 入っている おし入れよ。」

 ぼくは ゆっくりと おし入れの 方に 向かった。(きっと ぼくの 悲しい 気持ちを まぎらすために、ぼくを 元気づけようとして、何か 買ってくれたんだろう。) ぼくは そう 思った。でも、スクラッピーとの 愛に 代わるものなんて、ありゃしない。

 おし入れに 近づきながら 考えた。(いったい 何を 買ってくれたんだろう。おもちゃかな。特別な おやつかな。何だって 同じさ。スクラッピーに 代わるものなんて、何も ないもの。)

 ぼくは そっと、おし入れの 戸を 開けた。小さな おし入れだけど、何段もの たなに なっていて、ぼくには シーツと タオルしか 見えなかった。

 と、その時、何か 物音がした。小さな 鳴き声と ひっかく音、それに ちっちゃな のどを 鳴らす 音が。下を 見ると……スクラッピーじゃないか。

愛に 満ちた まなざしで、ぼくを 見上げている。しゃがんで スクラッピーを だき上げようとすると…… 一ぴきじゃ なかったんだ。小さくて かわいい、ふかふかした 子ねこが 五ひき、よりそっていた。のどを ゴロゴロ 鳴らしながら、ぼくの やさしい 母さんねこ、スクラッピーに ぴったり くっついて、

おっぱいを すっている。スクラッピーは とっても 幸せそう。子ねこたちを とても ほこりに 思っている みたいだ。そして、ぼくが ついに 見つけたことを 喜んでいる みたいだった。

 本当に おどろいちゃった。スクラッピーは 死んでなかったんだ。まい子に なってた わけでも、ぼくを 置いてきぼりにして どっかに 行っちゃった わけでも なかった。新しい 命を 生み、赤ちゃんを 世話すために、ちょっとの間、かくれて いなくちゃ いけなかったんだ。ぼくは スクラッピーが 見つかって、大喜びしたよ。

 そこに すわって、ぼくと スクラッピーは おたがいを 見つめ 合った。スクラッピーは 身動き 一つ せず、心配も してなかった。スクラッピーは そこにいて 無事だと 知って、ぼくは ただ ただ うれしかった。また いっしょに いられるんだ。それに、子ねこたちの かわいいことと 言ったら。生まれて 二、三日しか たって いなかったから、目は まだ 閉じていた。最高に 幸せな 気持ちだったよ。ママも ほっと していた。なぜって、ぼくと スクラッピーが たがいに いだいている 愛を 知っていたからね。

 おかしな ことだよね。試練だと 思ったことが、勝利に 変わる なんて。失ったと 思ったことが、じっさいには 益になる なんてね。悲しみと 思えるものが、実は、幸せなんだ。受け取ることが

できるように、与えなくちゃ いけない 時も ある。喜びで 満たされるために、悲しみが どんなものかを じっさいに 経験しなくちゃいけないんだね。

 だれか 特別な 人と 離れたり 別れたり しなければ ならなくても、それは 永遠じゃない。また 会えるんだ。少しの間 失うだけだよ。地上では 愛する 人と ずっと いっしょに いられなくても、聖書には

地上の 人生は はかない 霧のように 短いと 書かれているし、ぼくたちには 永遠が ある。愛する 人や 親しく 感じる 人と 天国で 永遠に いっしょに くらせるんだ。

 今は、イエス様を 愛していて 心に 受け入れた 者たちは、神の 天の 王国で 永遠に 生きると 知っている。ここ 天国に いるから、ぼくは 知ってるんだ。スクラッピーも いるよ。今でも、ぼくたちは 一番の 友だちさ。