ヘブンズ・ライブラリー Vol.6-1

 子供から大人まで楽しめる

 天国の図書館からのストーリー集

 

ゆりと庭 他界したハンス・クリスチャン・アンデルセンより

 昔々、あるところに、小さくて きれいな 庭が ありました。その庭には、まるで 雪のように まっ白な 美しい ゆりが 一本 生えて いました。その 小さな ゆりは、すずしい 池の そばに 生えて いました。すずしい 池は、ゆりに 自分の 水を 飲ませ、ゆりが 幸せで、また 大きくなれるように、手助けを しました。池は、かわいらしい 白い

花びらで 自分を 元気づけてくれる ゆりが 大すきでした。

 小さな ゆりの まわりには 緑の 芝生が 一面に 生え広がり、そのおかげで ゆりは 暖かく、気持ちよく すごすことができました。緑の 芝生も、小さな ゆりが 大すきでした。ですから、ゆりが 暖かい 地面から 養分が もらえるように、ゆりの 根が 地面の 外に 出ないように、守っていました。暖かい 地面も、ゆりの 友だちでした。

 地面は 日ごとに 養分を 与えすずしい 池は 水を 飲ませてくれました。緑の 芝生は ゆりを 守り、やさしい 風は ゆりの ほおに キスをして、ゆりが 簡単に 折れたりせず、しなやかに なるのを 助けてくれました。やさしい 風も、ゆりの やさしくて よい 友だちでした。こうして ゆりは 友だちの 愛に 見守られながら、大きく 強く 育っていきました。

 ゆりは ほほえみを 通して、毎日 友だちに 愛を なげかけました。時々 雨が ふってきては、ゆりの 白い 花びらを 洗い流し、暖かい 地面を 活気づけ、緑の 芝生を 元気づけました。おたがいへの 愛と 友情で 喜びに あふれた この庭で、みんなは 幸せに くらしていました。

 ある日、やさしい 風が 一つぶの 種を 運んできました。その種はゆりの すぐ そばに落ち、暖かい 地面の 中に もぐりこみました。

「その種を 育てて どうなるか 見てみよう。」

みんなは そう 決めました。

 そこで、池は おいしい 新鮮な 水を その種に 飲ませ、地面は 暖かい 土を かけて 暖め、芝生は 周りを 囲って 守りました。ゆりは、みんなが 無力で 小さな 種を 世話するのを 見て、うれしそうに ほほえみました。

 日に日に、その種は 大きく なりました。けれども この種は、なぜか いつも ふきげんでした。池に むかって

「水が 多すぎる。」と 文句を 言い、地面には

「あつくるしいぞ。」と つぶやきました。芝生には、

「ちくちくするじゃないか。 もっと 日に 当たりたいんだ。どいてくれよ。」と 不平を 言いました。ゆりを 見上げると、

「おれは おまえより 大きくなって、ずっと きれいな 花を さかせるぞ。」と 言いました。とにかく この種は、ぶつぶつぶつぶつ、不平や 文句ばかり 言って いました。

 さて この種は、庭の みんなの おかげで 水と 養分を 与えられ、世話されながら、どんどん 大きく なりました。けれども、大きくなれば なるほど、かれが ゆりのように 美しくは ないことが、だれの 目にも はっきりして きました。そう、かれは 雑草だったのです。それも、ひどく みにくい 雑草でした。

 ゆりと その友だちは、この みにくい 雑草の ことを あまり うれしく 思いませんでした。やさしい 風を うるさがり、すずしい 池には 文句を 言い、だれが 何をしても 気に入らず、不平不満ばかりで、みんなを 困らせていました。

 でも、どうしたら いいのでしょう。池が ある考えを 思いつきました。

「地面さん、ぼくが 君の 上に 水を あふれさせよう。そうしたら、みにくい 雑草の 下の 地面が やわらかくなる。その後 やさしい 風くんが ふいて、緑の 芝生くんが 体を まげてくれれば、雑草の 根は 土の 外に 出てしまうから、それで おさらばさ。」

「それは まずいわ。」と、地面が 言いました。

「そんな ことを したら、やさしい ゆりさんまで あぶなくなって

しまうわ。雑草は ゆりさんの すぐそばに 生えて いるのよ。」

 そこで ゆりは 言いました。

「庭師さんが 来るまで まちましょうよ。かれは きっと、すぐに 来るわ。そうしたら、雑草を 何とか してくれるように 頼みましょう。」

 ゆりの 言った 通りでした。やがて、庭師が やって 来たのです。庭師は、日光を キラキラ 反射させている すずしい 池を 見て ほほえみ、暖かい 地面を おおう、足元の やわらかい 緑の 芝生を

ふみしめました。美しい ゆりに、愛に あふれる まなざしを なげかけると、かわいそうな ゆりの くきに からみついている、みにくい 雑草に 気がつきました。

「お願いです、助けてください。」と、ゆりは さけびました。

「どうか、わたしに まきついている、この みにくい 雑草を 取ってくださいませんか。首が しまりそうです。」

 もちろん 庭師は、雑草を このまま 放っておくなら、ゆりの 息の根を 止めてしまうと わかっていました。ですから 庭師は 小さな バケツを 手に 取り、池の 冷たい 新鮮な 水を くみ、それを 雑草の 下の 地面に かけました。しばらくして 雑草の 下の 地面が やわらかくなると、ゆりがぬけないように 気を つけながら、雑草を 根こそぎ 引きぬき、この 幸せな 庭の 外に なげすててしまいました。

 小さな ゆりと 友だちの くらす 庭に、ふたたび 幸せが もどりました。ぶつぶつ 文句ばかり 言う 雑草が いなくなったので、ほっと しました。みんな 喜びの 声を あげ、 雑草を ぬいてくれた 庭師に お礼を 言いました。

 

 さて、子どもたち、この小さな物語の 教訓を 教えて あげよう。耳を すませてごらん。きっと、庭師の 声が 聞こえるよ。庭師はね、天の 父である 神様なんだ。神様は 愛に 満ちた 声で、何もかも

うまく いくように なる、君の 世話を してあげるって 言って くれる。

 庭師は ご自分の 花の 一つ一つを みんな、愛している。あの 小さな ゆりは、君のことだよ。庭師は 君を 愛していて、やわらかい 草に おおわれた、ご自分の 美しい 庭に 植えてくださった。よく 成長できるように、み言葉の すんだ 水の ほとりの、愛に あふれた 家庭という、暖かい 土の 中にね。

 神様は、活気を 与える 祝福の 雨を ふらせ、やさしい み霊の そよ風を 送ってくださる。それと いうのも みんな、神様が 君を 愛していて、君のことを 気づかって いるからなんだ。君に 幸せでいて ほしいんだよ。

 だから、いつか 不平不満の 種が 飛んできて 人生が つらく なっても、がっかり しないでね。ただ 庭師を よべば いいんだ。そして、心の 庭に 入りこんで 君を 不幸せにする 雑草を ぬいて

もらったら いいんだよ。庭師は 必ず、君の 祈りを 聞いて、答えて くれるから。

 君が よび求める時、イエス様は 喜んで 祈りに 答えてくれる。イエス様は、君の 心の 中にある 主の庭が、幸せな 場所で あることを 願っているからね。だから、庭師である イエス様を 見上げてごらん。それから、すずしい 池の さわやかな 水に ひたって 養分を たっぷり ふくんだ、暖かい 地面の 近くに いてね。そうすれば 君は、イエス様の 庭に さく、明るく 陽気な ゆりのように なれるよ。