CLTP クリスチャン・リーダーシップ・トレーニング・プログラム #41

 

心の中のクリスマス #2

 

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 目次

 ・クリスマスの封筒

 ・スペシャル・アレンジメント

 ・クリスマスの朝に

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クリスマスの封筒

  我が家のクリスマスツリーの枝にかけられた、ただの白い小さな封筒。誰からとも書いてありません。そんな封筒がツリーにかかるようになってから、10年以上になります。それは、そもそも夫のマイクがクリスマス嫌いだったことから始まりました。でも、本来のクリスマスを嫌っていたわけではなく、派手な商業主義を嫌っていたのでした。クリスマスの直前まで、ハリーおじさんのためのネクタイだとか、おばあちゃんのためのスカーフだとか、他に何も考えつかないからとりあえず贈れる物を探して、店から店へとかけずりまわるのがいやだったのです。

  そんな夫の気持ちを知っていたので、ある年、私は、シャツやセーターやネクタイなど、ありきたりのプレゼントはやめることにして、マイクのためのスペシャル・プレゼントを探しました。そして、思わぬところからヒントを得たのでした。

  息子のケビンは12歳で、学校のジュニア・レスリング・チームに入っていました。クリスマスが近づいた頃、スラム街の教会がスポンサーになって、ほとんどのメンバーが黒人の子供のチームと親善試合をしました。そのチームの子供達は、着ている物はよれよれで、スニーカーもぼろぼろ、まるで靴のひもだけでつながっているようで、うちの息子たちのチームとは対照的でした。こちらは、りっぱなブルーとゴールドカラーのユニフォームと、ぴかぴかのレスリング・シューズ姿だったのですから。試合が始まると、相手チームの子供達は、ヘッドギアーではなく、レスラーの耳を守るための軽いヘルメットをしているだけなので、私はひやひやしました。ヘッドギアーは高価すぎて買えなかったのでしょう。

  結局、息子のチームが大勝しました。ヘビー級、ライト級など、すべてに勝ったのです。相手チームの男の子たちは、負けてマットから立ち上がる度に、ガッツポーズをして虚勢をはるのでした。負けを認めたくないストリートキッズのプライドのようなものです。隣に座っていたマイクは悲しそうに首を振りながら言いました。「一人でも勝ってほしかったんだがなあ。あの子たちは、十分素質があるが、こんな負け方をしたら、せっかくの熱意も冷めてしまうかもしれない。」

  マイクは子供達を愛していました。すべての子供達をです。フットボールや野球やラクロス(ホッケーに似た球技)のリトルリーグのコーチをしていたので、子供のことは良く知っていました。その時、マイクへのプレゼントのアイデアが頭に浮かんだのです。その午後、私は近くのスポーツ用品店に行き、レスリング用のヘッドギアやシューズを何セットか買って、そのスラム街の教会に匿名で送りました。そして、自分がしたことと、それがマイクのためのプレゼントであることを知らせる短いマイクあての手紙を封筒に入れると、クリスマス・イブにツリーの枝に引っかけたのです。その年も、またその後も、クリスマスを一番明るくしてくれたのは、それを読んだ時のマイクの輝く微笑みでした。

  毎年、クリスマスに私はそれを続けました。ある年は、精神障害児をホッケーの試合に招待し、別の年には、クリスマスの前の週に火事で家を失った高齢者の兄弟に小切手を送り、という具合に。その封筒はクリスマスのメインイベントとなり、クリスマスの朝に最後に開くことになっていました。子供達は、新しいおもちゃのことも忘れて、父親がツリーから封筒を手に取り、そこに何が書いてあるかを言うのを、立ったまま、目を大きく見開いて待っていました。

  子供達が成長するにつれ、プレゼントはおもちゃではなく、もっと実用的なものに変わりましたが、封筒の魅力は変わりませんでした。でも、この話はこれで終わりではありません。昨年、マイクはガンで亡くなりました。クリスマスがやって来ても、私は深い悲しみから立ち直れず、ツリーを立てるのがやっとでした。けれども、クリスマス・イブになると、やはり封筒をかけたのでした。そして、翌朝には封筒がさらに三つ増えていました。私達のどの子供も、互いに内緒でマイクのための封筒をツリーにかけたのです。その伝統はさらに広がり、いつか孫たちもツリーのまわりに立ち、父親たちがツリーから封筒を手に取るのを目を見開いて見守る日が訪れることでしょう。マイクの思いやりと与える心は、クリスマスにご自分を捧げて下さったイエス様のそれと同様、私達と共に生き続けているのです。

――作者不詳

 

 

スペシャル・アレンジメント

  感謝祭は、11月の終わりのアメリカの祝日で、クリスマス・シーズンの始まりでもあります。これは、感謝を捧げるはずのこの時期に、悲しみに沈んでいた人についての物語です。

 

  サンドラは重苦しい気分のまま、11月の強い北風に逆らって、花屋のドアを開けました。少し前までは、人生は春のそよ風のようだったのに、二人目の子を妊娠して4ヶ月の時に、ちょっとした交通事故にあってすべてが変わったのです。この感謝祭の週に、男の子が産まれるはずだったのに…。サンドラは悲しみに打ちひしがれていました。悪い事は重なるもので、夫は会社から転勤をほのめかされ、休暇に訪問してくれるのを楽しみにしていた妹からも、来られないという電話がかかってきました。おまけに、サンドラの友人の言葉に、彼女は怒りを覚えずにはおれませんでした。友人は、彼女の悲しみは人間として成長するために神が授けて下さったものであって、それを通して、辛い経験をしている人たちのことをもっと思いやるようになれると言ったのです。

  (あの人は子供を失ったことなんかないわ!私の気持ちがわかるわけないでしょう。感謝祭ですって? 何に感謝するの?)

  サンドラは傷ついていました。(不注意なトラックの運転手が私の車に追突して、トラックはほとんど傷もなかったことを感謝するの? エアバッグのおかげで私の命は助かったけれど、おなかの赤ちゃんは死んでしまったことを?)

  「いらっしゃいませ。何かお探しですか?」 不意に店の人が目の前に現れて、サンドラはたじろぎました。

  「ごめんなさい、びっくりさせたかしら。」

と、ジェニーという名の女主人がわびました。

  「あの…お花をアレンジしてほしいんですけど。」

  「感謝祭用ですか?」

  サンドラはうなずきました。

  「美しいけれども、ありきたりのがよろしいですか? それとも、うちのお客様お気に入りの、『感謝祭スペシャル』にされますか?」

  サンドラが好奇心を抱いたのを見て、ジェニーは続けました。「私は、花にはストーリーがあって、アレンジはどれも何かの感情を表していると、信じているんですよ。この感謝祭には、感謝を伝えるようなものをお探しですか?」

  「とんでもない!」 思わずこんな言葉が口をついて出ました。

  「ごめんなさい。この5ヶ月の間、悪いこと続きだったので…」

  サンドラは取り乱したことを後悔しましたが、意外にもジェニーはこんなことを言いました。

  「じゃあ、ぴったりのアレンジがありますよ。」 

  その時、ドアベルが響きました。

  「バーバラ! いらっしゃい。注文の品、できてますよ。ちょっとすみません。」

  ジェニーはサンドラにことわると、奥に消えました。それから、緑の植物のアレンジとリボンと、長いバラの茎を何本も持ってきました。でも、茎の先は切り取られていて、花がありません。

  ジェニーが尋ねました。

  「この箱に入れましょうか?」

  サンドラは、バーバラの反応をうかがいました。

  (これは冗談か何か? バラの茎だけで花がないのなんて、誰がもらっていくかしら?)

  トゲだらけの茎の先に花がないのに気づいて、誰かが笑い出すものと思いましたが、誰もそうしません。

  「ええ、お願い、すてきだわ。もう3年続けてこのスペシャルをいただいているから、もうその意味について感動も薄れたのでは、と思うでしょうけど、今年も、やはり心に触れるわ。家族も気に入ると思うの。ありがとう。」

  サンドラは、ぼう然としていました。

  (あんなおかしなアレンジなのに、どうしてそんな普通の会話ができるのかしら?)

  「あの、あの人が持っていったのは…」

  「え?」

  「花がなかったですよね…」

  「ええ、花は取ったんです。」

  「取った?」

  「そうです。それがスペシャルなんです。感謝祭のとげのブーケというの。」

  「でも、そんなものにお金を払うなんて。」

  重い心も忘れて、サンドラはくすりと笑いました。

  「そのわけを知りたいですか?」

  「ええ、教えてもらわなかったら、とても出ていけないわ。そのことが頭から離れないと思うから!」

  「じゃあ、教えましょう。バーバラも3年前はあなたと同じような心境でした。感謝するものなど何もないと思っていたのです。お父様がガンで亡くなり、ご家業も傾きかけていて、息子さんは麻薬中毒、それにバーバラも大手術をすることになっていました。」

  「まあ!」

  「同じ年に、私も夫を亡くしたんです。それで、店を一人で取り仕切ることになって、初めて一人で休暇を過ごしました。子供も夫もなく、近くに親戚もいないし、遠くの親戚の所を訪れたくても、借金があって無理でした。」

  「で、どうしたんですか?」

  「トゲを感謝するようになったんです。」

  サンドラは驚きました。「トゲですって?」

  「私はクリスチャンです。人生で良いことが起こると、神さまにいつも感謝していたけれど、その理由を尋ねることなど、まるで考えませんでした。でも、悪いことが起こった時には、夢中で問いただそうとします! 辛い時期も大切なのだと悟るまで、しばらくかかりました。私はいつも人生の『花』を楽しんできたけれど、神さまの慰めの美しさを教えてくれたのは、『トゲ』のほうだったんです。聖書には、私達が苦しんでいる時に神は慰めて下さり、それによって、私達も人を慰められるようになるって、書いてあるんですよ。」

  サンドラは、はっとしました。「ある友人がその言葉を読んでくれたけれど、私は怒ったの! 本当は、私は慰めがほしくなかったのね。赤ちゃんを失って、神さまに怒っていたんだわ。」

  さらにジェニーの話を聞こうとすると、ドアベルが響きました。

  「いらっしゃい、フィル!」

 とジェニーが言うと、はげ頭の太った男性が店に入ってきました。ジェニーはサンドラの腕にそっと触れると、その客を迎えるためにその場を離れました。フィルはジェニーの肩を温かく抱きしめ、「トゲだらけの長い茎を1ダースもらいに来たよ!」と、高らかに笑ったのです。

  「そう思ってました。もうできていますよ。」

  ジェニーはそう言うと、薄い紙で包まれたアレンジを冷蔵棚から出してきました。

  「美しい。妻もきっと喜ぶだろう」とフィルが言いました。

  サンドラは思わず尋ねました。「奥さんのためですか?」

  フィルは、自分が初めてトゲだらけのブーケについて耳にした時と同じ反応を、サンドラがしているのを見ました。

  「どうしてトゲだらけなのがいいのか、おうかがいしてもいいですか?」

  「いやあ、よく聞いてくれました。4年前に、私達は離婚寸前でした。4年たった今もひどいもんですが、腐った問題を一つ一つ片づけてきたんです。おかげで、私達の結婚も、愛も、元通りになりました。昨年の感謝祭に、ここに花を買いに来たんですが、私が苦労話をしたんでしょうね。ジェニーが、彼女は『トゲ』の時期から学んだことを忘れないように、バラの茎を長いこと花瓶にさしていたと、教えてくれたんです。それは、私にぴったりの話でした。で、さっそく茎だけ持ち帰ったんです。妻と私は、その一本一本をトゲだらけだった状況にたとえて、一つ一つの状況が私達に教えてくれたことを感謝したんです。茎を見て振り返るのが、うちのならわしになってきているんですよ。」

  フィルはジェニーにお金を払うと、また礼を言い、サンドラにも、「このスペシャルをお勧めしますよ」と言いながら、出て行きました。

  サンドラはジェニーに言いました。

  「私、自分の人生のトゲを感謝できるかどうか…」

  「でも、私の経験から言えば、トゲがあってこそ、バラの価値が増すんです。苦しい時ほど、神さまの心づかいを大切に思うんですよ。イエス・キリストは、人がその愛を知るように、ご自分が十字架にかけられた時にイバラの冠をかぶっていました。だから、トゲを恨んだりしないで。」

  サンドラのほおに涙がつたいました。あの事故から初めて、強いいきどおりから解放されたのでした。

  「私にも、トゲだらけの茎を1ダースお願いします。」

  「良かったわ。すぐに用意しますね。それを見る度に、良い時も辛い時も感謝することを思い出して下さい。その両方があって、成長するんですから。」

  「ありがとう。お幾らですか?」

  「お代はいりません。ただ、心がいやされるよう努力すると約束して下さるなら。最初の年のアレンジはいつも、私からのプレゼントなんです。」

  ジェニーはサンドラにカードを渡しました。

  「お花にこのようなカードを添えましたが、最初に読むといいかもしれませんね。盲目の人が書いたんです。さあ、どうぞ。」

 

  神さま、今まで自分のトゲをあなたに感謝したことがありませんでした! バラについては、数限りなく感謝してきたけれども、トゲは感謝しませんでした。どうか、私が堪え忍ぶ苦難の素晴らしさを教えて下さい。トゲの価値を教えて下さい。あなたの所まで行けたのは、苦しい道を登ってこそであったことを、示して下さい。涙が私の虹を作ってきたことを示して下さい。--ジョージ・マセソン

 

  ジェニーは、スペシャルをサンドラに手渡しながら言いました。

  「すてきな感謝祭を! お互い、良いお友達になれたらうれしいわ。」

  サンドラはほほえむと、ドアを開けて、希望に向かって歩いていったのでした。

  ――作者不詳

 

 

クリスマスの朝に

パール・S・バック

  ロブは突然目を覚ましました。まだ午前四時だというのに、すっかり目がさえています。昔、乳しぼりの手伝いをするために、毎日、父から起こされた時間でした。

  あれから50年たち、父親も30年前に亡くなったというのに、毎朝四時に目が覚めるのです。それからまた寝る習慣をつけたものの、その日に限っては別でした。クリスマスだったからです。

  最近、遠い昔のことをよく思い出します。当時はまだ15歳で、父の農場に住んでいました。父を愛していましたが、クリスマスの数日前になるまでは、そのことに自分でも気がついていませんでした。でもその日、父と母の会話を耳にしたのです。「メアリー、朝にロブを起こすのはイヤだなあ。成長期で、睡眠だって必要だろうに。起こしに行くと、それはそれはグッスリと眠っているんだ。一人で作業できたらいいのになあ。」

  「あなた、それはできませんよ。」

  母が明るく、たしなめるように言いました。

  「それに、もう子供ではないから、ちゃんと自分の務めを果たすべきですよ。」

  「そうだな、しかし、起こすのはやっぱりかわいそうに思うよ。」

  その会話を聞いて、ロブははっとしました。

  (父さんは、僕を愛してくれているんだ!)

  そんなことは一度も考えたことがなかったし、父も母も、子供を愛していると口に出して言ったことはありませんでした。忙しくて、そんなヒマはなかったのです。

  父から愛されていると知ったロブは、もう朝にグズグズしたり、何度も呼ばれることはありませんでした。自分から起き上がって、寝ぼけまなこでつまずきながらも、服をつかみました。目はまだ閉じていましたが、とにかく起きたのです。

  それからしばらくして、15歳の時のクリスマスの前夜に、ベッドの中で翌日のことについてちょっと考えていました。彼らの家は貧しくて、クリスマスの何よりの楽しみは、家で育てた七面鳥と母親特製のミートパイでした。姉たちはプレゼントを縫い、両親はいつも、暖かなジャケットといった必需品だけでなく、何かそれ以上のもの、たとえば本などを買ってくれました。そして、ロブも貯めたお金で、父親と母親別々にプレゼントを買っていました。

  クリスマスに、父親のためにもっと良いプレゼントがあったらなあ、と思いました。今年もいつものように、安物雑貨店に行って、ネクタイを買い、それで十分と思っていたけれど、その晩、気が変わりました。

  屋根裏部屋の窓の外には、星が輝いています。幼い頃、父親にこう尋ねたことがあります。

  「父さん、馬屋って何?」

  「家畜小屋のことさ。うちにあるような。イエス様は家畜小屋で生まれ、そこに羊飼いたちが来たんだ…」

  その時に、あるアイデアが浮かびました。

  (じゃあ、家畜小屋で父さんのための特別なプレゼントを贈ってはどうだろう。朝早く、4時前に起きて、こっそり家畜小屋に行き、乳しぼりと掃除を全部すませるんだ。そうして、父さんが乳しぼりに行った時には、全部終わっていて、誰がしたかもわかるだろう。)

  星を見上げながら、ロブは微笑みました。

  (じゃあ、それをやろう。ぐっすり寝込まないようにしなくちゃ。)

  それから、20回は目覚めたでしょうか。ついに3時15分前に起きあがって、服を着ました。忍び足で階下に行き、戸がギーッという音を立てないように気をつけながら外に出ました。

  牛は驚き、眠そうな顔でロブを見ました。牛にも、時間が早すぎるのです。ロブはそれまで自分一人で乳しぼりをしたことはありませんでしたが、楽にいきそうでした。そして、父親の驚いた顔のことだけを考えていました。父親は部屋にやってきてロブを起こし、「おまえが服を着てる間に作業を始めてるぞ」、と言うことでしょう。そして、納屋に行って、扉を開けて、空っぽの牛乳缶を二つ取りに行く…。でも、空どころか、いっぱいになっているのです。「こいつは一体…?」という父の大声が聞こえてきそうです。

  ロブは微笑んで、素早く乳しぼりをしました。二筋の乳が勢いよくバケツに飛び込み、泡立って、良い香りを放っています。考えもしなかったほど、作業は楽に進みました。今回の乳しぼりは、お決まりの仕事ではなく、自分を愛してくれる父への贈り物でした。

  ついに、二つの牛乳缶がいっぱいになりました。それにふたをすると、再び注意深く扉を閉じました。部屋に戻り、急いで暗闇の中で服を脱ぎ、ベッドに飛び込んだ途端、父親の起きる気配がしました。ハーハーという息づかいが聞こえないよう、顔まですっぽり、毛布で覆いました。その時、部屋のドアが開いて、父が呼びました。「ロブ! クリスマスでも、起きないといけないぞ。」

  「はーい」と、わざと眠そうな声で答えました。ドアがしまると、ロブはベッドに横たわったまま、笑っていました。もうすぐ父親は知るでしょう。ドキドキして心臓は張り裂けんばかりです。ほんの数分が永遠のように感じられました。それから、また、父の足音が聞こえましたが、毛布を頭まですっぽりかぶったままでいました。

  「ロブ!」

  「はい、父さん。」

  父親は笑っていました。顔が幾分引きつって、泣き笑いしているようでした。「父さんを出し抜いたつもりだな?」 そう言って、父親はベッドのかたわらに立って、毛布をはぎました。

  「父さん、クリスマスだよ!」 

  ロブは父を見ると、飛びついて、父の腕にがっちりと抱きしめられました。暗かったので、互いの顔は見えません。

  「ロブ、ありがとう。こんなにうれしいプレゼントは初めてだ。」

  「僕、父さんの助けになりたいんだ!」

  何と言ったらいいかわからなかったのに、不意にそんな言葉が出てきました。心は愛ではじけんばかりでした。

  ロブは起きて、また服を着ると、父と一緒にクリスマスツリーの所に行きました。ああ、何と素晴らしいクリスマスでしょう。そして、父が母に今朝のことを告げ、年下の三人の子供達にも、ロブが一人で起きたことを話して聞かせたので、またまた心ははじけんばかりになりました。

  「今までで最高のクリスマス・プレゼントだ。毎年、クリスマスの朝には、死ぬまでこのことを思い出すだろう。」

  父親は亡くなりましたが、ロブはそのことを今も思い出します。納屋で一人で乳しぼりをして、生まれて初めて愛のこもった贈り物をした、あの幸せなクリスマスの夜明けのことを。