クリスチャンリーダーシップ・トレーニングプログラム

 

CLTP25及びCLTP26より抜粋編集

 

力と保護

 

実話集:神が危機を救う!

 

クリスマススペシャル企画、天使編

 

私を守ってくれたのは…

 

ソフィー・バーナムによる編集

第1話

 数年前のこと、アメリカのオクラホマシティーで、ジュディスは9才の娘と、車で眼鏡を買いに行く途中でした。その日は風が強く、工事用のトラックもたくさん走っていました。

 厚手のベニヤ板を山のように積んだトラックが、向こうからやって来るのが見えました。すると突然、突風が吹き、積み荷のベニヤ板を3枚、吹き飛ばしました。ベニヤ板はジュディスの車めがけて突っ込んできます。1枚目のベニヤがフロントガラスを突き破って、彼女たちを直撃する…と思った瞬間、娘は悲鳴を上げ、思わず膝を抱え込んで頭を伏せました。ジュディスは、「父よ!」と祈るのが精一杯でした。でも、そのたった一言が、ジュディスが愛し、信頼する神に救いを求める、信仰の祈りとなりました。

 その時、車の前に天使が降り立ったのです。その天使は、とてもハンサムで、若いフットポール選手のようでした。ただ、もっと大きく、たくましい体をしていました。天使は、まるで人がウインクする時のように、彼女の目を真っすぐ見つめながらにっこりと微笑みました。その時、この天使との間で、言葉ではない、心と心のコミュニケーションが瞬時になされたのです。

 それから天使は1枚目のベニヤをいともやすやすと払いのけました。次に、まるでバスケットポ一ルのプレーヤーがシュートをさえぎるかのように、2枚目も道路脇にたたき落としました。3枚目は車の屋根の上に落ちてきましたが、それも天使が軽くはたきました。車の屋根は少しへこみましたが、ベニヤ板は道路の端に落ちました。

「今の見た!?」と娘に聞きましたが、娘はまだぶるぶる震えています。

「何を?!」

「天使よ! 今、天使がいたのよ!」

「ううん、見えなかったわ。」と娘が答えました。

「今のは、すごかったわ!」と言って、娘に見たことを話しました。「ベニヤが私達の所に飛んできたでしょう。ママが祈ったら、主は天使を送って下さったの! 神様は何て素晴らしいの! 私達の命を救って下さったのよ!」

−ジユデイス・ロ−ジー

 

第2話

 1985年11月のことでした。私はその時10才だった娘と、自宅から車で1時間半離れた所にある私の両親の家に向かっていました。あたりに夕闇が迫り始めた頃、山の中の4車線の道路に入りましたが、突然、何かがはじけるような音がして、ハンドルが取られました。降りて調べてみるとやはりバンクでした。でも、こんなへんぴな所ではどうしようもありません。1、2キロ前に小さな工芸店があったのを思い出し、そこまで戻れば何とかなるかなと思い、引き返すことにしました。

 車に戻ると、突如、どこからともなく別の車が現れて停まりました。中から感じの良い若い男性(娘によると、彼は上から下まで真っ白の服装でした)が出てきました。私がその人にパンクだと言うと、すぐさまスペアタイヤとジャッキ、それからスパナを取り出し、タイヤの交換を始めたのです。その人は一言もしゃべりませんでした。ただ、ジャッキが外れると危ないから車から離れているようにと言っただけです。そして、そう注意した直後に、実際にジャッキが外れてしまったのでしたが、とにかく迅速に仕事を終えてくれました。

 お礼を言い、お金を差し出したのですが、その人は受け取りませんでした。その人が自分の車に戻って行ったので、私も自分の車に戻りました。ところが、車を出そうとすると、娘が振り向いて、「ママ、あの人もういないわ。」と言いました。消えてしまったのです。見渡す限りどこにも見あたりません。来た時のように、きっと、いなくなったのでした。

−メグ・デイビス

 

第3話

 5月のある土曜日、ドツグ・ショーに行く途中のことでした。メリーランド州のポルティモア北の州間95号線に向かおうと、ポルティモア・ワシントン・パークウェイを走っていました。ところが、ボルティモア湾岸トンネルに差し掛かる狭い直線道路上で突然タイヤがパンクしたのです。路肩は車が1台やっと停められるほどのスペースしかなく、とても緊張しました。車を脇に寄せましたが、私のバンは大型で、しかもジャッキなんてここ20年ほど扱ったことはありません。途方に暮れた私は、白いタオルを窓に挟み、外側にたらして、通りがかりのお巡りさんが気づいて助けてくれるのを待ちました。

 10分ほどたつと、1台のステーションワゴンが私の車の前に停まりました。そして、整った顔立ちの25才ぐらいの男性が車から下りてきて、パンクの修理をしましょうかと言ってくれました。私は、「ご親切にありがとうございます。でも、服が汚れてしまっては困るので、ただ電話のある所まで乗せていって下されば、『AAA』(アメリカ自動車協会、緊急処置等のサービスも行う)を呼ぶので大丈夫です。」と言ったのですが、その人は、ジャッキとスペアタイヤはどこかと聞いてきました。

 白いショートパンツに薄黄色のポロシャツという服装でありながら、ジャッキをはめるのに腹ばいになって車の下にもぐり込むのも、気にしていないようでした。小柄ながらも、難なく仕事を素早く済ませました。でもジャッキを外して立ち上がると、服にはしみ一つついていないではありませんか!

 お礼を言い、微笑みかけながら20ドルを差し出しました。その人は私の頗をじっと見ながら、静かに、「結構です」と言うと、車で行ってしまいました。

 スポーツカジュアルを着て金髪で青い目をした、何の変哲もない普通の青年のようでしたが、どこかちょっと「違う」ところがあるなと、気になって仕方がありませんでした。その夜、家で家族に一部始終を話した後で、こう言いました。

 「たぶん、あの人は私の守護天使なんだわ。」

 危ない目にあっていたかもしれないような状況で、私は途方に暮れていました。だからこそ、守護天使が助けに来てくれたんだと、今では信じています。

−バーバラ・J・アンソニ−

 

第4話

 1976年の夏、ワシントンDCに住む二人の姉妹を訪ねました。義姉のベティーと今年高校を卒業したばかりの彼女の息子、ブラッドリーは、オクラホマ州ロートンに住んでいましたが、二人ともワシントンDCには行ったことがなかったので、一緒に行くよう誘いました。

 州間40号線を東に走ってから、パージニアのブルーリッジ山脈と並行して走る別の幹線道路に入る予定でした。夕食を早めにすませ、引き続き東に向かって走り始めました。

 ところが40号線は、私達が出ようと思っていた所まで行かずに終わってしまいました。そして、あちこちの納屋の裏を通る細い田舎道に変わりました。突然、何の標識もなしに鋭いカーフがあったりで、のろのろ進むしかありませんでしたが、その内、何とか真っすぐな道になり、時速約60キロぐらいまで出せるようになりました。あたりはすっかり暗く、うっそうと残る常緑樹がさらに晴さを増しています。

 ブラッドリーは後ろでうとうとしていました。と、突然ベティーが叫びました。

「危ない!」

 夏だというのに、灰色の長いオーバーを看た老人が、道路の横からぬっと現れたのです。そして、スピードを落とすように手振りで合囲しています。「止まれ」とか「こっちへ来い」といった合図ではありませんでした。

 そして、10メートルくらい近づくと、その人は、ぱっと消えてしまったのです。後ろに退いたようには見えませんでした。一歩も動かなかったのです。ただその場からいなくなった、としか言いようがありません。

 母親の叫び声で目を覚まし、一部始終を見ていたブラッドリーが、「どこに行ったの?」と聞きました。

 後ろを見ながら「消えてしまったわ!」と、ペティーが言いました。私は、車をバックさせて、今の人を捜しに行った方がいいだろうかと考えながら、スピードを落としました。でも、また急カーブになったので、急ブレーキをかけました。そのカーブの先には、何と20匹あまりの鹿が道の真ん中にたむろしているではありませんか。スピードを落とさなかったなら、時速60キロでこの群れに突っ込んでいたことでしょう。ヘッドライトで照らされると、鹿がゆっくりと移動を始めました。

 パージニアであの夜に見た男の人は一体誰だったのか、未だにそれは謎に包まれたままです。

−ジョン・コーステン・カーリー

 

 

第5話

 私達は、アメリカ南部のルイジアナ州に住んでいました。ルイジアナ南部の道路は、沼地の中を走っています。

 数年前のある日の午後、私は、母と車で妹の家に向かう途中でした。とりたてて急ぐ理由もなかったのですが、私達は前を走る大きな車の女性ドライバーに少しいらだっていました。その人は、黒い髪を後ろに丸くまとめ、その様子が何となく私の3年生の時の先生に似ていました。

 その人は、ブレーキをかける必要などない所で、ひっきりなしにブレーキをかけるのです。最初は時速70キロ程出していましたが、スピードはどんどん落ちて行きました。この辺の道路に不慣れなせいかとも思いました。ついに40キロにまで落ちた時には、どうしようかと思いました。すると、今にも止まりそうなスピードで、ゆっくりと右に曲がり、貝殻の道に入っていきました。

 それをちょっと見守ってから前方に視線を戻し、またそちらを見ると、車がないではありませんか。あんなにゆっくりと走っていたにしては、視野から消えるのが早すぎます。

 そのまま進んで行くと、鳥肌が立つような光景に出くわしました。すぐ先のカーブで、18輪大型トレーラーと小型車が衝突していたのです。事故直後らしく、近所の人達が救援に駆けつけていました。その車もトレーラーも溝に落ちていました。

 そこを通過しながら、私も母もショックで一言も話しませんでした。それから、私は我に返って、自分が308号線にいることを思い出しました。308号線はラフーシ沼地の左側を走っています。その沼地の右側には1号線が走っていますが、ちょっと待って下さい、あの女性は右に曲がれば、沼地の中に入ることになり、それは不可能です。この308号線の右側に、貝殻の道は存在しないのです。沼地沿いに家が点々とあるだけです。でも、二人ともこの目で見ました。彼女は絶対に右に曲がったのです。

 私は胸がいっぱいで泣きたい気分になりました。彼女は天使だったのかしら? 私達のスピードを落とさせたのだから。もし、そうしていなかったら、私達はきっとあの事故に巻き込まれていたことでしょう。

−ステファニー・ボードレックス

 

第6話

 30年ほど前になりますが、私はフロリダ州のデイトナビーチにあるサザンベル電話会社で、長距離電話の交換手をしていました。午後2時半から10時半までが勤務時間でしたが、あの夜は10時に仕事を終えました。私の車はとても古く、バッテリーもガタがきています。いつも、国道1号線沿いにある会社の駐車場にとめてありました。

 あの夜は、暖かく静かな夜でした。が、エンジンがスタートしません。ボンネットの中をのぞき、バッテリーの上ぶたを外してみました。それからマッチの火をつけて、それを明かりに中を見ようとしました。いつも水を入れておけばバッテリーが長持ちして、新しいのをの買うことはないと言う人がいたのです。不景気の時代に貴重なお金を使いたくなかったので、そうすることにしました。

 私が中を見ようと身をかがめた瞬間に、一陣の風がマッチを吹き消しました。そよ風も吹いていなかったのにどうして、といぶかしんで近くの木々を見つめましたが、草木は微動だにしていません。それに、だいたいあれは風じゃなかった。あれは、私の肩越しに誰かが口で吹いたのだ、という奇妙な気持ちに襲われながらも、またマッチをすろうとしました。その時、誰かがはっきりした口調で言うのが聞こえました。「やめなさい。」それでマッチをするのをやめました。

 何とか、車を修理工場までもって行き、自分のしようとしたことを修理工に説明すると、「それは危なかった。バッテリー液に火がつけば爆発するところだったから。」と言われました。私は天使が救ってくれたのだと信じています。それ以外に説明のしようがありません。

−ロレイン・バックルズ

 

第7話

 ルイジアナ州シュリブポートに住むマーガレット・バウカムは付き添い看護婦でした。ここ数夜連続で、ある高齢の病人の世話をしていました。彼女の仕事は朝の7時頃に終わるのですが、今朝はこの人の奥さんが夜明け前に起き、今日は早く帰って少し休息をとるようにと言ってくれました。まだ夜霧に包まれたその家を出る時、疲れていて、車のドアのオートロックをし忘れてしまいました。

 あくびをしながら、高速を通るのはやめて下の道を通って行くことにしました。「危ない所を通るけれど、朝4時なら犯罪者だって起きてはいないだろう。」と思ったのです。

 でも、それは甘い考えでした! 眠気と戦いながら、満足に照明もない薄暗い裏通りを走り、信号で停まると、前に停まっている車以外には、通りに人影一つありません。その時、間髪を入れず前の車のドアが全部開き、後部から若い男が3人降りてきました。ゆっくりと、威嚇しながら近づいて来ます。

 心臓がものすごい速さで鼓動しています。ドアのロックはしてありません! そして、オートロックのスイッチがどこだったか、恐怖のあまりどうしても思い出せないのです!

 全てがスローモーションのようです。「まるでビデオか映画のコマ送りを見ているようでした。」と後でマーガレットは話しています。バックするか、そのまま発進して男たちをひいてしまおうか、という大胆なアイデアも頭をよぎりましたが、恐怖のあまり、体が言うことをききません。「神様、助けて…」と口にするのがやっとでした。

 その時突然、真後ろから二つの強力なヘッドライトが照らしてきました。あたかも、彼女の車のぴったり後ろに、大型トレーラーでも停まったかのように。その強烈な白い光は、彼女の車を通り抜け、通り全体を真昼のように照らし出しました。何十メートルも先の店先や駐車場まで明るく照らし出され、全てが光に包まれています。「テレビで見た湾岸戦争の空爆でさえ、こんなに光っていなかった。」とマーガレットは言います。

 でも、この光の正体は一体、何? トレーラーが後ろから走ってくれば、エンジン音やギアをチェンジする音が聞こえたはずです。確かに強力な光が放たれているのに、夜はその静寂を保ったままでした。

 その時、前の車の運転席から、もう一人の男が出てきて彼女の方に向かって来ました。「ああ、神様、助けて!」と、彼女は祈りました。そして、覚悟を決めました。「ここで死ぬんだわ。」

 すると驚いたことに、若い男のすごんだ顔が、驚がくと恐れの表情に変わりました。「いきなり両手を上げて、まるで、光に向かってゆるしを乞うかのような素振りでした。それから、車に逃げ帰ったのです。」 他の連中も車に乗り込むと、車を急発進させ、キキーッというタイヤの音を立てて角を曲がって行ってしまいました。

 マーガレットは、運転席にへなへなと倒れ込みました。助かった、そう思うと、うれし涙があふれます。あっと言う間の出来事でした! あれは夢だったのかしら? いいえ。あのヘッドライトは今も後ろにあります。彼女はゆっくりとアクセルを踏み、角を曲がりました。

 二つのライトも、夜の暗闇を天国のように照らし出しながら、後について行きました。自分が守られているという安心感、きらには自分が祝福されているという思いでいっぱいでした。後ろからは、やはり何の音も聞こえません。

 森の中に入ると、光は静かに彼女の車を離れて左に曲がり、見えなくなりました。我が家はすぐそこでした。

「私があまりにも震えていたので、夫は何かがあったと悟りました。」 それで、危機一髪だった事を話しました。

「どこでトレーラーが曲がっただって?」とボブが聞き返しました。

「森の中よ」と言って、彼女はその時の様子を説明しました。ボブは首を振りました。

「でも、間違いないわ。そこで、左に曲がって行くのを見たのよ。」

 ボブの顔がちょっとこわばっています。

「マーガレット、あそこに曲がり角なんてないんだ。だって他に道なんてないんだから。」

 マーガレットは未だに、あの襲撃者達が何を見たのか分かりません。でも、あの静かで揺るぐことない強力な光が、「我が足のともしび」になってくれた事を忘れることはないでしょう。

 

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私の守護天使

 

−マリリン&ウイリアム・ウエバー夫妻著「A Rustle of Angels」及び、ソフイー・バーナム著「Angel Letters」より編集

 

 2年程前、ティナ・リーの夫デービッドは、ジョージア州の田園地帯にある、我が家の家庭菜園の拡張作業をしていました。ティナもデービッドも野菜作りに精を出し、エンドウ豆やインゲン豆、トマトやジャガイモの収穫で、1年中、野菜に事欠くことがありませんでした。デービッドがトラクターで作業していると、電話が鳴ったので、ティナは家の中に入っていきました。電話は窓際にあり、夫と、家のそばで遊んでいた2歳になるジョシュアが見えます。

 けれども、電話に出た途端、恐ろしい出来事が起こったのです。デービツドがトラクターの下敷きになっているではありませんか。「ジョシュア、そこにいて!」と叫びながら、ジョシュアの横を通りすぎ、夫に駆け寄りました。夫は長靴のゴム底がトラクターに挟まって動けないでいました。キーが回してあってエンジンは止まっています。ティナは、デービッドを急いでトラクターから引きずり出しました。彼は足首をひねっただけでした。

 何が起こったのか尋ねても、デービッドは、ただ首を振るばかりで、見当がつかないと言います。覚えているのは、「あっ、押しっぶされる!」と思った瞬間に、あたかも誰かがそれを押し返したかのように、トラクターがバックしたことだけです。それに、どうしてエンジンが止まったのかも分からないと言いました。たとえ死ななくとも、脚は失うだろうと覚悟していたら、止まったのです。

 その時、ジョシュアが二人の所に走って来ました。

「パパ、今の人、見た?」

「誰のことだい?」とデービッドが聞き返しました。

「男の人」 ジョシュアはまだ目を丸くしています。

「木と同じくらい背が高い人! トラクターがパパの上に乗っかかった時に、その人が後ろに動かしたんだ。そしてね、キーを回したんだ。」

 ティナとデービッドには見えませんでしたが、確かに、この「幼な子の□」から出た事以外に説明のしようがありません。

「私は前から天使を信じていましたし、天使からの慰めも感じていました。今回の事で、守護天使はいつも守ってくれているんだと、ますます信じるようになりました。」 とティナは言っています。

 

第2話

 1990年9月20日の事でした。3歳になる娘が庭に遊びに出ました。私が、パティオのガラス戸越しに見ていると、娘は勝手日から出てドアを閉め、どういうわけか、すぐその場にしゃがみ込んだのです。それから私が目を離すと、突然、何かが崩れるような音がしました。庭で一番大きなニレの木から、大きな枝が落ちてきたのでした。しかも娘のすぐそばに。

 娘に、どうして庭に行って、おもちゃの赤い電動ジープで遊んでいなかったのかたずねると、即座にこう答えました。「ママ、神様があの木の下に行ってはいけません、ここに座っていなさいと言ったから、言う通りにしたの。」

 その「神様」とは、長い金髪を肩の下まで垂らした美しい女の子で、翼があり、空から降りて来たのです。周りは光が明るく輝いていて目が痛かったけど、光に触ったらひんやりしていたから驚いた、と娘は言いました。その天使はある種の装身具を身に付けていて、特にネックレスがとてもまぶしかったそうです。「その人はね、色んな色のをつけてたの。」と娘は言いました。この事があって以来、娘の振る舞いに明らかな変化が起きました。特に顕著なのは、その穏やかさです。また、祈るようになり、決まって食前に感謝の祈りを捧げるのです。そのような習慣は私達の家庭にはなかったことです。また、「レベッカ・ローズ」という名の天使の絵を、ほとんど毎日、何枚も描くようになりました。そして夜は聖書物語をせがむのです。

 さて、それから何ヵ月かが過ぎました。娘は「レベッカ・ローズ」にはもう会えないと言いました。会ってはいけないと言われたのだそうです。娘は、天使がまた会いに来てくれる日を待ちこがれています。と言うのも、天使は、十年後に再会出来ると言ったからだそうです。

 

策3話

 1938年の2月。雨降りの、寒くて陰気な午後でした。私はその時16歳で、ミズーリ州ハイチの鉄道の停車場にいました。4ヶ月以上も家から離れていましたが、この恐慌時に放浪生活は過酷で、家に帰ることにしたのです。

 私は、機関車に水と石炭が積み込まれている間、積み下ろし用プラットホームの倉庫で作業が終わるのを待っていました。

 やがてその長い貨物列車が動き出しましたが、機関車二両に引かれているので、素早く加速していました。

 私は、扉の開いている車両を見つけると、飛び乗ろうと走り出しました。地形からして、列車はちょっと高いところを走っており、ジャンプしたけれども、半分しか体が乗りません。脚の方は扉から宙ぶらりんになり、上半身は床に這いつくばっていました。つかまる所がなかったので、それ以上のぼれなかったのです。汽車はどんどんスピードを上げていきます。私は手を床に伸ばしてなんとか体全体を中に入れようとしました。落ちれば、貨車にひかれて一巻の終わりです。あの時のことは忘れられません。もう終わりだと思った時のことを。

 床で必死にもがきながら、こう言ったのを覚えています。「神様お願い、まだ死にたくない。」

 その時です。頭を上げると、30才ちょっとぐらいの大柄な黒人が私をじっと見下ろして立っていました。お互いに無言のまま、その人は手を差し出し、私の腕をつかんで貨車の中に引き入れてくれたのです。ほんの30秒かそこら、床の上にうつぶせになると、ちゃんと息ができるようになり、力を取り戻しました。それから礼を言おうと立ち上がると、その人はどこにもいないではありませんか。貨車の中は空っぽです。反対側の扉は閉まっているし、その汽車の速さでは、飛び降りれば即死でしょう。でも、私の他には誰もいませんでした。あの人はこつ然と姿を消したのです。

 もし守護天使が存在するなら、私の守護天使は、でっかくてたくましい30代の黒人です。貨車にひかれる寸前の私を救い、お礼の言葉も聞かずに消えてしまったあの人です。

 

CLTP25 "Rescues on the Road" + CLTP26 "Angels Watching over Me"−−Japanese.