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刻々と迫るキャッシュレス社会の到来 パート4

 

 

ビッグプラザーの監視テクノロジーついに現実に!

 現在のテクノロジーをもってすれば、国民一人一人の行動を簡単に掌握できる。そして、それが可能な政府は、国民を支配できる。今が終わりの時であって、聖書の黙示録で語られている世代であるということを、鼻先で笑う懐疑的な人々がいる。彼らは、今が、「最後の時代」たる条件を初めて満たした時代であることを疑う。

 だが、政府が有している恐るべき力を考えると、事の重大さを思わずにはいられない。政府の行き過ぎ行為を監視する組織も、弱体化するばかりだ。すでに大量の個人情報が、データベース化されているのだから、今さら抗議して何になるのかと多くの人は言う。まもなく、この体制に非協力的な人物の「電子マネー」は無効にされてしまうことだろう。そうなれば、最低限の売買も不可能だ。そして、どんな集会も発見され、スパイが送り込まれ、その正体が知られるようになる。隠れることは不可能だろう。道路でさえ、市民の通行を監視しているのだから。

 VISAの前身企業の元・通信部門取締役テリー・ギャラノイはこう言った。「声高に抗議するのは得策とは言えない。トラブルを起こしたという記録が残るのが関の山だ。そして、カード万能の時代、もしくはそれに代わる何らかの身分照合システムの時代が到来した時に、カードを発行してもらえず、社会から隔絶されることになる。」

 

新世界秩序に、いざオンライン

 さて、驚異的なテクノロジーが次々に登場しても、それが一般大衆向けに世界共通規格でネットワーク化されなくては、来たるべき不法の者、つまりアンチキリストは、世界中の売買を完全に支配することができない。二国間でなされる商取引でさえ、両国のカード技術やコンピューターソフトや管理システムが異なっているなら、アンチキリストの統制は及ばない。

 しかしながら、国際ネットワーク化や産業規格の国際統一化が進んでいる現在では、そのような問題も姿を消しつつある。政府やその他の組織が、情報・サービス・技術を交換するコンピューターネットワークは、着実に拡大している。ネットワークの一元化を推進する者は、コストが下がり、商品発送やサービスの能率が上がるなどのプラス面を必ず強調する。個人のプライバシーに、政府や民間企業が介入できるようになるという否定的な面を取りざたすことはめったにない。

 黙示録十三章には、来たるべき新世界秩序では、あらゆる商取引が監視されるグローバル経済体制が出現すると記されている。ここまで述べてきたように、コンピューター技術がこの体制の中枢となろう。

 ジェフリー・ジグモントは、「オムニ」誌にこう書いている。「コンピューター業界はついに、米国でコンピューターを『一家に一台』という目標を達成しつつあるようだ。巧妙にもコンピューターはテレビそっくりの外見をしているので、みんなだまされてしまうかもしれない。」

 ジグモントはさらに、コンピューターが登場したての頃は、市場アナリストの見通しは浅く、パソコンは家計簿を付け、献立を記録しておくのに役立つくらいの予想しかしていなかったと述べている。それを考えれば、一家に一台という目標到達にはほど遠かったのも無理はない。だが、任天堂は、80年代初め以来、3000万台のゲーム機を販売して、かなりそれに近づいた。そして、人々が余暇の時間にコンピューターに一番望むこと、つまり遊びを提供しているのだ。

 テレビも、双方向の情報の授受を行う「双方向テレビ」に生まれ変わりつつある。開発者たちは、「視聴者が受け身で何もしないテレビを、真の双方向コミュニケーション装置に変え、視聴者が現実の世界とやりとりすることもできるようにする」と言う。

 人々はテレビのある生活にすっかり馴れきっているので、自分の家のテレビにコンピューター技術が組み込まれても、コンピューターやビッグプラザーに対する不安はさほど覚えない。政府は、この技術開発のために補助金さえ出している。

 連邦通信委員会は、テレビの視聴者が、ホームバンキングや様々な支払い、さらにはチャイニーズ・フードからテニスシューズの注文に至るまで行える技術普及への道を開いた。リモコンでメニュー画面を呼び出せば、多種多様のサービスが出てくる。

 テレビ・アンサー社(本社バージニア州)の開発した双方向テレビは、視聴者側のデータを電波で基地局に送る。各基地局は、衛星を通じて本社とリンクしている。年内には25の主要都市でこのシステムが実施される予定だ。

 

統一は見た目以上に進んでいる

 世界中の多数の国が、自国の社会的・経済的・軍事的問題の解決に、最新テクノロジーを使おうとしている。そして、そのようなテクノロジーに精通すればするほど、その使用能力も範囲も拡大されていく。だから、国内及び地域内のシステムが、グローバル・ネットワークに組み込まれる日がそう遠くないのは明らかだ。技術開発の進歩は国によって異なるものの、諸国が「オンライン化」される日は近いかもしれない。

 残念ながら、その悲しい結果について考える人はほとんどいない。統一世界政府が間もなく設立されるという聖書の警告を心に留める人など、なおさらだ。「科学」や「進歩した人類の知能」という旗じるしの下に、各国政府は、聖書が克明に警告した体制の実現に向けて突進している。

 

国際インフラの構築

 言うまでもなく、土台となるべき国際経済秩序が存在しなければ、国際電子経済ネットワークの構築はできない。しかし、もろもろの多国籍企業や、世界銀行、G7、GATT(関税及び貿易に関する一般協定)、国際通貨基金(IMF)の誕生とともに、経済は確実にグローバル化時代を迎えた。ニューヨークの株価の暴落が、東京、ロンドン、ボンに直ちに影響を及ぼしたことだけからも、経済的相互関係が深まっていることが分かる。

 BCCI(バンク・オヴ・クレジット・アンド・コマース・インターナショナル)の不正取引事件をきっかけとして、銀行業務に対して、国際的な監視体制を強化する動きが強まっている。これについて、ロイター・ニュースサービスは次のように報じている。

 「BCCIは、先週ニューヨーク市で、詐欺、横領及びマネーロンダリング(資金洗浄)の容疑で起訴されている。70ヵ国以上に支店網がある同グループが綿密な検査を免れていた理由として、同グループ全体の業務を監督する責任を負う公的機関がどの国にも存在していなかった点が指摘されている。

 連邦預金保険会社のウィリアム・シードマン会長は、このBCCI事件は、各国が協調して金融機関を規制する必要性を浮き彫りにしているとして、『多国籍金融機関を監督するだけの能力を備えた、国際レべルの監視体制が必要だ』と語った。」

 そのような国際監督機講が設置されれば、金融機関の業務を規制・監視できるようになるばかりではなく、顧客の口座情報も寸時に入手できるようになる。

 おわかりだろうか? BCCIが断罪されたのは、まさにこの国際監督機構の設立にはずみをつけるためだった。それに、不祥事を起こしたのは金融機関でありながら、それをきっかけとして、金融機関が権力を握る国際「スーパーパンク」の新設が進められるというのも、おかしな話ではないだろうか?

 ハイテク化し、様々な組織や機講をネットワーク化するおもな目的として、犯罪防止が挙げられている。ジョセフ・バッタリアの以下の説明も、その点を明らかにしている。

 「自由経済体制の弱体化も、米国政府が徐々に進めている数多くの方策の一つである。手始めに、1万ドル以上の現金を動かした者の住所氏名と社会保障番号を、すべての金融機関や企業がIRS (米国国税局)に報告することを義務づける、いわゆる『マネーロンダリング対策』法を定めている。これらの法律は、麻薬密売組織撲滅という名目の下で制定された。マネーロンダリング対策法は、抑圧的で市民の自由を制限する法律だが、麻薬犯罪や『マネーロンダリング』が大々的に報道されていたことから、政府は、この法を可決させることができたのだ。」

 米国の銀行協会と弁護士会の主催で、マネーロンダリング取締り会議が開催され、幾つかの法執行機関の代表者も出席したとバッタリアは言う。「そのような組織が集まって、『新世界秩序』の金融関係の法執行部門を横成している。」

 マカルバニー・インフォメーション・アドバイザー誌もまた、現代の電子テクノロジーによって全ての取引が監視可能になる日がまもなく到来すると、以下のように予想している。

 「金融犯罪取締ネットワーク(FINCEN)は、『現在、全国民の資産情報のほぼすべてが入手可能になった』と言う。将来、税法違反も違法マネーロンダリングとみなされるだろう。そのことやあの会議で討論されたその他の措置によって、米国民の金銭面での自由とプライバシーは消滅するだろう。」

 マカルバニー誌によれば、他国も次々に米国にならうことになる。犯罪対策という名目で、全く先例のない様々な国際法が成立したり、提出されている。

 「まず、国連でマネーロンダリングに関する条約が結ばれた。それは銀行の秘密主義を違法化しようとするものであった。(この国連条約に米国も調印している。国外でのマネーロンダリングを違法行為と定め、資産没収の権限を当局に付与し、銀行の秘密主義を認める法律を廃止させる事を目的とする。証拠提出や、証言を取ることや、容疑者の外国への引き渡しなどに関する保護を弱めるための条約である)それから、納税者を悩ますことになる協力体制を確立する税務上の条約が、経済協力開発機構(OECD)加盟国の中の12ヵ国によって批准(ひすい)された。

 紛争及びテロ行為研究所(CIAと密接なつながりを持つ)は、世界中で行われているマネーロンダリングの総額は、実際には、一般に推定されている5億ドルの2、3倍に及ぶと報告している。その報告書は米国以外の大半の国の法規制の甘さを非難し、特に、スイス、オーストリア、香港、カリブ海沿岸諸国の銀行の秘密主義は今すぐに破棄されるべきだと主張している。」

 この報告がなされた頃、「USAトゥデー」紙は、「スイス政府は犯罪取引取締りのために、大半の無記名預金を廃止している。スイス連邦銀行理事会は、麻薬密売組織や権力者の裏金の洗浄を防ぐために、全ての預金者に身分証明を義務づけるようになるであろう」と報じた。

 これらはほんの数例にすぎないが、いかなる金融のプライバシーも無効にする世界統一システムが、秘密裏に徐々に確立されてきているのがよく分かる。しかし、経済のグローバル化はかなり公にされてきている。最近、クリントン政権がNAFTA(北米自由貿易協定)を全力で押し進めていることからも、同政権の立場は明らかである。

 大統領は、「経済のグローバル化は、これからも続いていく。止めてはならない。この道を避けては通れない。我が国の周りに壁を築いてはならない。我々は世界を指導していかねばならない。後退するのではなく、競争に出なくてはならない」と述べた。

 イスラエルのアッバ・エバン元外相は、G7諸国(西側諸国でも最も裕福な7ヵ国)は、実行力は備えているが、「彼らは未だに、共に考えることをしない。団結すれば、驚異的な力を発揮できるのに、その会議は何の達成もないように見える。一国ではできないがG7諸国が合体すれば、人類全体に変化を及ぼす巨大な力となりうる。新国家とも言えるような、恒久的な組織を設置するべきだ。現在の機構では何もできない。それをするには、賢人たる現代の王達の知恵と指導者の資質が要求されるだろう。舞台裏で出番を待っている人々がいるかもしれないが、今は誰も舞台に立っていないようだ」と言っている。

 

不覚容な原理主義者達をマークする

 ここではっきりさせておきたいことがある。終わりの時になると、統一世界政府が設立されるばかりか、この政府に非協力的な者は日常生活さえ営めなくなると、聖書に記されている。つまり神に仕える者は誰でも、この新世界秩序から敵視されるようになると言うことだ。

 我々の取材チームは、ワシントンDCで開催された「ソルーションズ・フオー・グローバル・フロンティア」カード技術会議(1993年)に出席したが、とても興味深かつた。ちょうどその時、あのウェコでの事件が起きていた。教団の建物が炎に包まれていく場面が、会場のあちらこちらに設置してあったテレビに映し出され、出席者と共にそれを見ていた。

 この惨劇を見ていたマイクロチップ研究者は、彼らの電子身分照合システムを使えば容易に宗教カルトのメンバー達を監視できると言った。ヨーロッパのある指導者は、あからさまに、ヨーロッパはこのような気違い米国人クリスチャンは締め出し続ける、と我々に言った。彼にとっては、デビツド・コレシュはクリスチャンの一人にすぎないのだ。それから間もなく、「ザ・ヨーロビアン」 紙に次のような記事が載った。

 「ストラスプール(フランス)…少なくとも80人のメンバーが焼死したウェコ事件を踏まえて、欧州会議では、『宗教カルト団体名簿』が承認される模様である。また、26ヵ国の代表からなる欧州会議閣僚委員会に提出された報告書には、新宗教カルトグループの動向を懸念していることが記されている。各国政府は、監視と情報収集を行う独立した機関を設け、その情報を『一般大衆に広く行き渡らせる』よう要請された。」

 同時期にフランスでは、「家族及び個人を守る国民連合(ADFI)」が同じような「名簿録」を発行している。その 「カルトブラックリスト」には、「フルゴスペル・ビジネスマンズ・フェローシップ・インターナショナル」や「アセンプリーズ・オブ・ゴッド」までもが含まれている。

 敵は、キリスト教徒なら誰でも、ウェコやギアナのカルト・メンバーと同類であると世界中の人々に思い込ませることに成功しつつある。ウェコでの惨事の後で、USAトゥデー」紙が報じた「カルト」の特徴はこうである。

 「世の終末が近づいているという聖書の預言を信じているようなグループ…つまり、1967年にイスラエルがエルサレムを占領した事、核戦争の脅威、経済のグローバル化傾向など、一見何の関係もないような出来事をとらえて、聖書の預言の成就と見るグループ。終末は近く、イエス・キリストが間もなく再臨すると信じる。」

 電子身分照合システムの研究開発分野、マイクロチップ、スマートカードなどの研究分野の草分け達が、自分たちの技術によって「危険な狂信人物」を見分けることができる、と考えるのは偶然ではない。彼らは世界を守っていると思っているが、それも、聖書が預言した通りに事が進んでいる証拠になっている。聖書が、「あなたがたを殺す者がみな、それによって自分たちは神に仕えているのだと思う時が来るであろう」(ヨハネ16章2節)と警告している通りである。明日の世界の中心地であるヨーロッパで、たった今、聖書の語っていることが起こりつつある。私達は、終わりにかなり近づいているのではないだろうか?

 新世界秩序は、高度で複雑な統治体制を要するであろう。「大いなるしるしと奇跡とを行う」ことができる例の人物をもってしてもだ。諸国民、機器、商品そして資金の動きを把握するには、今まで述べてきたような精巧なシステムを要する。そのようなシステムによってこそ、来たるべき世界支配者が世界政府と世界経済体制を操るのが可能になるのだ。宗教は統一されて、新世界秩序に組み込まれるようになる。

 

アンチキリストはいかにして実行に移すか?

 アンチキリストは、何億もの人々に、彼の刻印や彼の数字を受け入れるよう、いかにして説得するのだろうか。それは、一般に、昔からクリスチャン以外の人々にも不吉なしるしだった。映画「オーメン」を見たことがあるなら、「666」は獣の番号であることをご存じのはずだ。また、前にロックミユージックに関心があった人も、この預言について聞いたことがあるはずだ。

 聖書で預言されたこの刻印や数字はかなり知られている。では、アンチキリストはどうやって、その刻印や数字を受けるように大衆を説得するのか。「665」でも何でも、「666」以外の数字を使うだけの知恵があってよいのではないか。

 考えられるシナリオの一つはこうだ。アンチキリストは、大っぴらに神と御言葉と神の宮を冒とくするようになる。彼は、いわゆる大いなる「奇跡」を派手にやり、聖なるものを侮ってやまない横暴きわまる人物である。彼はこの「強み」を使って、人々を欺き、次のような考えを人々に受け入れさせようとするかもしれない。

 すなわち、アンチキリストは、人々が宗教的神話と陰湿で偏屈な伝統に長い間だまされ、縛られてきたと言うのである。彼は偽善的にこう言うかも知れない。

 「この平和と調和の新世界にあって、我々はそのような頑迷な迷信を野放しにはできない。万人が結束して、新世界秩序を謳歌(おうか)すべきである。迷信によって惑わされ、精神的な進化が妨げられるべきではない。そのような『くだらぬ言い伝え』などに屈しないことを証明するために、我々は無能なるキリスト教の挑戦を受けて立とうではないか。故に我々は、この狂信者達が誤って不吉なものとしたものを、我々自身の、また、新世界秩序のシンボルとして用いることにしよう。『666』こそ我々の数字である!」

 

統一金融制度

 統一世界体制に欠かせないのが、世界的経済体制である。改めて言うが、現代はまさにそれにぴったりの時代である。ハーバード大学のリチャード・クーパー法律学教授は、自ら「革命的講想」と呼ぶ提言をしている。「…世界共通の金融政策と、その政策を決定する統合発券銀行を設立して、全世界の産業民主国に通用する統一通貨制度を実施すること…独立国家にはまず無理な話ではなかろうか? だから、金融政策の決定権は何らかの超国家組織に委ねられる必要が生じてくる。」

 1988年、英国の「エコノミスト」誌は、統一世界経済体制の到来を伝える長い特集記事を掲載した。記事では、国際統一通貨制の実施はまだまだ先の話としながらも、以下のように述べている。「国際統一通貨制は、便利さにおいて、現在の国家ごとの通貨制度にまさるであろう。将来においては、現行の通貨制度こそ、20世紀の経済混乱の古くさい原因であったと思えることであろう。」

 さらに、その記事では、問題は、各国政府が、「国際経済の安定化という目標を、国内政策よりも優先させる態勢が全く整っていない」ことにあり、「あと数回、為替レートが大変動し、あと何回か株価が大暴落し、景気の悪化があと1、2回あれば、政治家達も本腰を入れて取り組まざるをえなくなるだろう」とまで言及している。

 連邦準備制度理事会のアラン・グリーンスパン議長の将来の見通しははっきりしている。「外国からの対米投資を懸念してはいない。経済が国境を越えて融合するのは、むしろ好ましい傾向だ。」

 世界の指導者達は、経済が統合され、中央集権化された世界政府が登場し、一人の指導者が人類を二千年代へと導くことを予告し、大いに期待している。聖書の預言の成就となるこれらの出来事は、聞く耳を持つ者には、まさに警告である。終わりの時を説く預言者達がはっきりと言っているように、「終末は近い」。この現実から目をそらすことは、ただ目隠しをして、現実がただ過ぎ去ってくれるのを期待するようなものだ。

 

新世界秩序

 世界平和を保証するために国家は連合するべきだと、世界中の指導者達が唱えている。ミハイル・ゴルバチョフとジョージ・ブッシュは、著書や演説を通して、「新世界秩序」という表現を我々の意識の中に浸透させた。今日では、ビル・クリントン、ポリス・エリツィンとへルムート・コールが同じ目標を推進している。この新しい統合国家は、世界に平和をもたらす目的で形成されつつある。しかし、人間には真の平和を達成することはできまい。人が神を演じる試みは必ずや失敗するからだ。平和と兄弟愛を希求するのは称賛に値するが、「平和の君」なるイエスを礎(いしずえ)にすることなしには、平和の実現は不可能である。

 旧約聖書のバベルの塔の時代(創世記11章1〜9節参照)のごとく、現代でも、堕落した人間が、自らをかたどった世界を目指している。人間の知恵を至上のものとし、人間を王とする王国を築こうとしているのだ。自分の運命は自分で決めるという、時代を越えた欲求は、今も人々の心をとらえている。しかし、人がいかに大言壮語しようとも、結局その夢は見果てぬ夢に終わるだろう。ドイツのコール首相は、「『ヨーロッパ合衆国』が平和秩序の中核を形成するようになり…いにしえに預言されたように、人々が安全に住まい、もはや誰も脅かされることのない時代」について語っている。

 コールが引用したのは、王の中の王、主の中の主であるイエスが統治する至福千年期についての預言である。だがコールは、救世主などいなくても人類の力だけでそのような時代を迎えられると信じている。こう考えるのは、コールだけではない。現代では、そのような考えが主流となりつつある。

 これからの数十年間に人類は何を成し遂げることを目標とすべきかという、「タイム」誌の質問に、ある政治学者はこう答えた。「共同体意識の復活を、人類社会の主なプロジェクトとすべきだ。…共同体のために個人の権利をある程度、放棄することも必要になろう。共同体を目指しながら、なおかつ人権を不可侵とするような文化は存在し得ない。いずれかが犠牲になるからだ。」

 そのような社会構築にいかに高尚な目的があろうとも、それが実現すれば、聖書の預言の警告が成就することになる。しかし、日毎に人々の声は強まっている。道を示してくれる指導者を求める人々の声が。

 

世界最高指導者

 これまで、黙示録13章に焦点を当てて、獣の刻印のテクノロジーについて述べてきた。この13章には、一見平和の使者に見えるが、聖書が「獣」と呼ぶ人物について詳述されている。

 

 「全地の人々は驚きおそれて、…人々はその獣を拝んで言った、『だれが、この獣に匹敵し得ようか。だれが、これと戦うことができようか』…地に住む者で、小羊のいのちの書に、その名をしるされていない者はみな、この獣を拝むであろう。」(黙示録13章3〜8節)

 大衆は、遠い昔から、いわゆる 「救世主」的人物を求めてきた。だが、権力者や知識人さえもが世界最高指導者の必要性を主張し始めたのは、最近のことである。

 米国きっての名ニュースキャスターと呼ばれ、引退してもなおその人気は衰えないウォルター・クロンカイトは、このように総括している。「今は、指導者不在の時代である」と。歴史家アーノルド・トゥインビー博士は次のように書いている。

 「テクノロジーの進歩は、殺人兵器を人類にどんどん押しつけ、同時に、経済面での国家間の依存度をますます高めてきた。それによって、人類は今までにない苦難の時代を迎えているので、世界に団結と平和をもたらしてくれるシーザー的人物が出現すれば、その人物を神のようにあがめるほどの下地ができあがっている。」

 だが、北大西洋条約機構(NATO)のヘンリー・スパーク元事務総長の次の言葉が、「平和と権力の人」への期待を何よりもよく代弁している。「我々が必要としているのは、全世界の人々からの忠誠心を集め、我々がはまってしまったこの経済的泥沼から引き上げてくれる人物である。そういう人物がいれば、神であろうと、悪魔であろうと、かまわず受け入れるだろう。」

(編集者注:この人物、アンチキリストの登場によって、「大患難期」と呼ばれる、世甲史上最も暗い時代を迎えます。しかし、聖書はまた、「自分の神を知る民は、堅く立って大いなる事を行ないます。民のうらの賢い人々は、多くの人を悟りに至らせます。兄弟たらは、小羊[イエス]の血と彼らのあかしの言葉とによって、彼[アンチキリスト]にうら勝ら、死に至るまでもそのいのちを惜しまなかった」[ダニエル書11章32、33節、黙示録12章12説]と約束しています。献身的なクリスチャンにとっては、伝道と勝利の期間となるでしょう。そして、イエスが雲に乗り、天から力と偉大なる栄光を携えて下って来られる時に、ついに彼らはこの困難な状況から救い出され、素晴らしい新世界の幕明けを迎えることになります。そこでは、「獅子は小羊と共にやどり、水が海をおおっているように、主を知る知識が地に満らる」のです。[イザヤ書13章」6、9節])