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刻々と迫るキャッシュレス社会の到来 パート3

 

手か額か?

 スーパーマーケットのレジにあるスキャナーに手を通すと、支払金額が預金口座から引き出され、支払いが終わる。いともたやすい話だ。「このようなシステムを行うテクノロジーはすでに開発されている…」と、ワシントンを本拠地とし、世界各地に二万七千人の会員がいる「ワールド・フューチヤー・ソサエティー」のティム・ウィラード理事は語っている。しかし、「人の気持ち」はそう簡単にはいかない。

 「体内に何かを埋め込むなどと言うなら、世間からものすごい反発を受けるだろう。臓器移植ぐらいでは、そんなに驚かなくなったが、体に何かを埋め込むとなったら、猛反対は避けられないだろう。「国家の監視」と考え、自分たちの考え方や行動が監視されるのではと恐れるからだ」とウィラードは言う。

 これは、聖書の預言に関する出版物や、クリスチャン関係の雑誌からの引用ではない。USAトゥデイを発行する「ガネット」社の報道の一部だ。その上、このような記事は珍しくもなければ、誇大報道でもない。

 しかし、聖書の預言の研究者たちにとっては、キャッシュレス社会やスマートカード、バイオメトリックスといったアイデアは、聖書の言葉の成就である。突然、20世紀のセキュリティー・システム構想が、二千年前に使徒ヨハネによって書かれた預言と一致してくるのである。

 そして、確かなことは、このテクノロジーは好むと好まざるとにかかわらず、必ず実用化されるということだ。ビザ・インターナショナルの前身会社の元・通信部門取締役、テリー・ギャラノイはこう語る。

 「声高に抗議しても、何の効果もない。事を荒立てれば、結局、自分のファイルに悪い記録を残すだけだ。そんなことになれば、ついに我々の生活がたった一枚のカード、あるいはそれに代わる何らかの身元保証システムに依存する日が到来した時に、その発行を拒否されることになるだろう!」

 さて、この警告の言葉とガネット社の報道を、次の黙示録の記述と照らし合わせてみてほしい。

 「また、小さき者にも、大いなる者にも、富める者にも、貧しさ者にも、自由人にも、奴隷にも、すべての人々に、その右の手あるいは額に刻印を押させ、この刻印のない者はみな、物を買うことも売ることもでさないようにした。この刻印は、その獣の名、または、その名の数字のことである。」(黙示録13章16、17節)

 少し考えてみよう。キャッシュレス社会実現の最大の難関は、スマートカードを持っている人間が正式な所有者であることを、どうやって確認するかであった。しかし、スマートカードはただのカードではない。それが「スマート」なのは、そこにマイクロチップが埋め込まれているからだ。カード自体は、チップを入れる携帯便利なケースにすぎず、私達が見慣れてきた同じプラスチック製のカードに新しいテクノロジーを入れることによって違和感を感じさせないようにしようとする、米国流のセールステクニックなのだ。

 では、カードからマイクロチップを取って、皮膚に埋め込んではどうだろうか? 高性能のバイオメトリック装置は無用になる。カード使用者が正式な所有者かどうか確認する必要もない。持ち主自身がカードとなるのだから!

 このようなシステムがどれだけ現実のものになっているかを直視しょう。そのような不気味なシステムを一般に受け入れさせることが最大の難関となっているが、他の幾つもの事例にあるように、行政計画者や一般市民に、マイクロチップ移植が人類史上最高のアイデアのように思わせる理由が何千と出てきているようだ。

 

あなたのお子さんはどこですか?

  1980年代、何千人もの子供が行方不明になっていると知って、米国民は大さな不安を抱いた。そればかりか、誘拐された山幼い子供たちが、異教の儀式や幼児ポルノ産業に利用されたり、性的いたずらや虐待の標的になっているという、ぞっとするような報道に衝撃を受けた。身代金目当ての誘拐や別居している親による誘拐などを加えるなら、件数はさらに増えるだろう。

 牛乳パックに印刷された行方不明の子供の写真を見たり、テレビで親の悲痛な呼びかけを見る度に、毎日どこかで子供が誘拐され、虐待され、場合によっては殺されもしていることを思い起こさせられる。人々はこのようなショッキングな犯罪の増加をくい止めようと、やっきになって対策を考えた。誘拐された子供や行方不明の子供を探す数多くの方法が考案されたのだ。

 様々なアイデアの中で、専門家たちが最良と判断した解決策は、チップの移植である。これは、すべての提案の内で最も確実だ。最初の発案者の一人は、フロリダの形成外科医、ダニエル・マン博士である。

 「携帯電話と同じテクノロジーを使って装置を開発した同博士は、「子供の耳のうしろに移植された小さな自動誘導装置によって、親は行方不明の子供の居場所を発見できる』と語っている。電子シグナルを発するこの装置は、司法当局の仮釈放中の人物の発見や、さまよい歩くアルツハイマー病患者の捜索の助けになるという。企業や政府機関は、その二センチもない『ミニベル』に関心を寄せている。マン博士は、この装置を電気エネルギーシステムに接続し、特許を取得した。装置は無線あるいは人工衛星で確認できるシグナルを発する。全体的に好評である。」

 これは、切迫する社会問題の、一つに対する解決策となるかもしれないが、同時に、その開発に携わる人々は、「この装置が究極のプライバシー侵害となるのは疑いの余地もない。彼ら〔当局〕は望む時にいつでも私達を見つけられる」と認めている。

 けれども、プラス面はマイナス面を大いに上回っている、つまり子供の安全に貢献していると、当局は反論する。これはかなり強力な根拠であるため、この不気味なテクノロジーの普及を促す一因となっている。

 身の安全のために移植を考慮されているのは、子供だけではない。現在、様々な分野から、より広範囲に渡る年齢層に移植を求める声が出ている。

 たとえば、さまよい歩いて、行方不明になりやすいアルツハイマー病患者の追跡に役立つだろう。悲しいことに、遺体で発見された患者は少なくない。米国内だけで、慢性的にさまよい歩く患者が7万5千人以上いると推定されている。

 

一刑務所のセキュリティー改善

 刑務所の過密化は、米国の社会問題となっている。この問題に村する革新的な解決策は、おとなしい受刑者を在宅朋役させるプログラムだ。この電子「足輪」プログラムは、子供を家庭で守るシステムと同じ原則に基づいている。

 受刑者は、取り外し不可の電子足輪を付け、自宅に受信装置が固定される。受刑者と(足輪)が制限範囲内から出ると、受信装置が電話回線を通じて警察に連絡するのだ。「電子監獄」とか「電子式足輪」と呼ばれるこのプログラムにより、現在、数多くのおとなしい受刑者が自宅で服役している! 受刑者の行動は、足輪に内蔵された送信機によって電子的に監視され、許された範囲内から出るなら警察に連絡される。このような装置によって監視されている受刑者の数は年々増加しており、米国で、1986年ではわずか95人だったのが、1993年ではおおよそ6万5650人になっている。

 このような装置の実用化は、お手上げと思われていた問題に対するほぼ完璧な解決策として歓迎されている。体内に埋め込まれたマイクロプロセッサーを読み取るシステムが普及すれば、パトロール中の警官にとっても鬼に金棒だ。逮捕した容疑者に関する情報が即座に入手でき、それに見合った警戒態勢が取れるからだ。

 

銃規制とチップ

 犯罪増加に伴って、銃規制を求める声がますます高まっている。「USAトゥデイ」紙は、「司法省は、重犯罪者に銃を入手させないために、全国民がスマートカードを所有することを提案しており、それが論争の的となっている」と報じている。司法省は、銃販売店が高性能の指紋照合機を備え付けることも提案している。

 所有者のあらゆる情報を記録するチップの移植は、警察が、銃の購入者を制限する解決策となるかもしれない。

 人々が犯罪記録も含む全経歴を身に付けていれば、あるいはそれが体内に埋め込んであれば、銃販売業者は、購入希望者についての警察の要求事項を即座に確認できるのだ。

 

医療記録へ容易にアクセス

 わが子が病院にかつぎ込まれたが、あなたがその場におらず、手術の承諾ができなかったらどうするだろうか?

 事故の被害者や急病人が会話できない場合、本人の特殊体質や持病などを記した医療手帳を見つけるのは容易とは限らず、不可能な場合も多い。その解決策として考えられるのは、重要な医療記録が記された医療手帳を、救急救命士にとって発見しやすい形で所持していることだ。それには、特定の薬物に対するアレルギー反応や、避けるべき治療法に関する情報も記録されている。

 一刻を争う状況では、チップ移植者なら、適切な治療を受けるチャンスは大きいと言える。救急救命士は、財布やカバン、車の中を探し回る必要はない。本人が医療手帳を家に忘れてくることもなくなる。

 

まず、あなたのペットで実験

 動物での実験成功により、マイクロチップ移植は電子識別のトップに躍り出た。動物に対する使用が普及していった経過について説明しよう。

 EC閣僚理事会は、加盟諸国の畜産農家が所有する家畜全部にマイクロチップを埋め込むことを義務づける法律を可決した。ペットも、マイクロチップによって電子識別されるのだ。実験用動物も例外ではなく、「バイオメディク・データシステム」社は、このような装置を製造している。

 「実験用動物の識別管理において、当社は最も優れた技術を有している。独自の実験用動物電子監視システム〈ELAMS は、埋め込んだ小さなトランスポンダー送受信機とマイクロプロセッサーの最新テクノロジーを使用しており、どの動物も、いかなるコンピュータ・データベースにも接続でき、研究番号を使って動物を識別できる。足にクリップをつける、耳に札をつける、入れ墨をする等、従来の複雑で不正確なシステムと違い、正確に識別でき、絶対確実で、素早く、しかも経済的である。」

 北アメリカのコロラドスプリングやその他数十の都市では、首輪に代わってマイクロチップが犬に埋め込まれている。「ヒユメイン・ソサエティー」では、45ドルで犬の首にチップを埋め込んでいる。保健所の職員に捕獲されても、棒状のスキャナーでチップを読み取ることで、飼い主が確認される。

 このペット追跡テクノロジーが、もはや「任意」ではない国もある。スペインでは、当局がペットを監視している。

 「スペインの大都市では、犬や猫に対して、マイクロチップの移植が義務づけられている。これは、迷子になったペットを飼い主のもとに返したり、ペットの世話係を雇いもせず、きっさと捨ててしまった飼い主を見つけるという、当局の負担を軽くするためである。

 スペイン17州の内4州が現在、チップ移植か入れ墨によって、身元を確認できるようにすることを義務づけている。現在、欧米諸国でそれを法律で定めているのは、スペインだけである。

 「これは一国だけでなく、欧州全体、そして世界中に広がるだろう」と、マドリードで働くスコットランド人獣医、ウィリアム・ハッチンソン博士は語っている。」

 地上にいる動物なら何でも追跡できる、マイクロチップを使った国際システムの開発を私達は目の当たりにしている。しかし、世界中の動物を監視するために開発されたシステムは、実は、世界中の人間を監視するシステム開始に向けての実験にすぎない!

 

右の手か額に

 これは神の言の正確さの驚くべき証明だ。「すべての人々に、その右の手あるいは額に刻印を押させ、この刻印のない者はみな、物を買うことも売ることもできないようにした」という預言が語られて以来、約二千年たった今、キャッシュレス社会が誕生しつつあり、世界中で動物を追跡するためのマイクロチップ移植が急増している。まるで、アンチキリストが世界中の人間に使う監視制度の前ぶれのようだ。一つ、断言できることがある。それは、史上初めて、この驚くべき預言を簡単に成就できるテクノロジーが、今、存在しているということだ。

 

何も不安はない? それは無頓着すぎるのでは?

 クレジットカードを使っていると、月末にはカード会社から請求書が送られてくる。しかし、それだけではない。支払いを確認するため、買ったものの明細や店の名前までも記録されている。このテクノロジーは、ご主人がこっそり買った新しいゴルフクラブはもちろん、それ以上のことを暴いてしまう。

 現在でも、一ヶ月間、カードだけで買い物するなら、カード会社は購入した店や時間をすべてリストアップできる。電子ビジネスしか行われないキャッシュレス社会なら、このような監視追跡能力は劇的に向上するだろう。

 さて、この本の他の箇所で説明した装置について、外国旅行などにどう影響するか考えてみよう。ビジネスがますますグローバル化し、外国への出張は増加の一途をたどっている。特に、欧州共同体諸国がその顕著な例だ。手続きをスピードアップするために、自動通関が開発されている。忙しい旅行者はただ端末機に自分のスマートカードを差し込み、身元確認のために電子装置に素早く指紋を照合させるだけでいいのだ。一瞬にして窓口を通り、データベースにその行動が記録される。

 電子社会では、ささいな情報も一つももらさず、巨大なデータベースに記録される。現金による購入を追跡するのはほぼ不可能に近いものの、電子マネーによる購入は永久に記録が残るので、その情報の悪用の可能性は大いに考えられる。

 カードによる購入は、必ず影が残る。セキュリティー体制が整ったオフィスや店に入るたびに、または健康保険を申請するたびに、テレクラに電話をかけるたびに、あるいは衛星テレビで有料映画を選択するたびに、携帯電話を持って外出するたびに、影が残るのだ。

 これはデータの影である。私達の日常の行動がコンピューターのデータベースにどんどん記録されていくにつれて、この影は長くなる。そして、その影を分析することによって、私達の身元、行き先、知り合い、いつ何をしているかなどが明らかになる。それは、電子ででさた自分の分身のようなもので、それは、容易に融資を受けたり、福祉手当を受けたり、投票や就職をしたり、外国に行ったりするために必要とされる。

 この地球共同体は、監視都市へと急成長しているのだ。

 このような高い危険性があるというのに、カナダ・プライバシー委員会理事、ブルース・フィリップスが言うように、現代社会は、「テクノロジーの催眠術にかかっている」。フィリップスは、最新の報告書で、どんな情報も高く売られていると断言している! 最近の「今週の聖書預言」会議で、ある公証人が全国版専門誌「ザ・ナショナル・ノータリー」のコピーを配ってくれたが、そこには世の中が向かっている方向について、もう恐れはないと書かれていた。「『プライバシーの侵害』に関する議論は時代遅れで、異議を唱える者はまだ一九世紀の遺物のように思われるだろう。」

 このような無神経さにかかわらず、聖書の警告は非常に明確だ。私達は、「すべての人々に…押させ」と記された獣の刻印に関する預言を忘れるべきではない。人に何かをさせようとするなら、強硬策を取らねばならないものだ。

 これこそ、聖書がアンチキリスト体制について告げようとしていることである。これは、世界中のほとんどの人にとって願ってもない話であるものの、刻印を拒む人は、あらゆる社会的行動から疎外されるも同然だ。この体制に属さずして、今まで通りの日常生活を続けていくことは不可能になる。

 さて、アンチキリスト体制の完全な到来は、すぐそこまで来ているのだろうか? 最先端テクノロジーを紹介していくので、各自でその答えを出してほしい。これらのシステムについて説明していくと、それぞれにもっともらしい理由が用意されていて、思わず重大なことを忘れてしまいそうになる。つまり、これらの素晴らしい解決策は、私達の自由と引きかえだということを。

 

警察待望の新兵器 電子追跡装置

 過去10年間、米国内では、自動車泥棒は毎年15%の割合で増加し、現在、年間利益が80億ドル相当という一大ビジネスに成長した。しかも、その内の80%は、ただの車ほしさや素人ドロの犯行ではなく、高度な技術をもったプロの犯行であると、警察は発表している。

 すでに実用化されている盗難車追跡システムは、警察から盛んに奨励され、現在、テレトラック社とロージャック社が、この装置を製造している。取り付けに500ドルから900ドルかかるが、警察や保険会社、車の所有者は、その価値があると言う。両社によれば、システムが取り付けられていた盗難車の約95%は見つかったそうだ。

 以下がその方法だ。ビデオテープあるいは黒板消しぐらいのサイズの発信機が車に隠される。テレトラック社のシステムは、発信機のスイッチを消さないで犯人がエンジンをかけるとシグナルを発し、電子地図でその場所が一目瞭(りょう)然となる。一方、ロージャック社のシステムは、車が盗まれたとわかった時点で、持ち主が発信機を作動させる。どちらの場合も、警察は盗難車を電子的に追跡できる。

 ミッドナイト・コール・ミニストリーズのアルノ・フロースは、終わりの時に起こる出来事とこれらの実験との明確な関係を指摘している。

 「1991年、フランスだけでも27万台の車が盗まれた。犯行を思いとどまらせる装置なら、何でも大歓迎だ。ただし、犯人がコンピューターチップを見つけてそれを取り外してしまえば、何の役にも立たないが…。けれども、取り外し不可能、発見不可能な装置が必ず開発されるだろう。それゆえ、私達は、人間も電子の獣の支配下に置かれるようになる時代が来ることを考えずにはいられない。それは、黙示録13章17節の成就となる。『…この刻印のない者はみな、物を買うことも売ることもできないようにした。この刻印は、その獣の名、または、その名の数字のことである。』」

 

活躍中のチップ

 追跡装置として宣伝されているものは他にもある。イギリスでは、身元確認ができるクリップ式のマイコン・バッジを開発した。これなら、広い敷地内であちこち動き回る従業員も簡単に探し出せる。また、病院内で、医師が患者と頻繁に接触するのを促すためにも、実験的に使用されている。ニューヨークタイムズ紙のレオナルド・スローン記者は、インテリジェント・バッジについての記事を、次のような不気味な冒頭文から始めている。

 「私達の居場所や誰と一緒にいるかなど、『誰か』に『私達』をチェックさせる機器に、新製品が加わりつつある。このアクティブなクリップ式バッジは、身分証明書と同サイズでマイコンつきである。この発信機から出されたシグナルが、中央システムヘと送られ、当人がバッジを付けている限り、職場の建物内やそれ以上の範囲内で居場所が追跡できる。」

 もちろん、現在のテクノロジーの進歩を考えれば、病院関係者の追跡など、さしたることには思えない。たとえば、1991年、湾岸戦争の24時間報道で、全地球位置把握システム(GPS)が世界に紹介された。兵士たちはハンド・サイズのコンピューター装置を携帯し、人工衛星が砂漠にいる兵士の正確な位置を把握していたのだ。このハイテクネットワークを備えた人工衛星のおかげで、米軍部隊は、地図にも載っていない砂丘だらけの砂漠の中を、目的地に向かって正しい進路で進むことができた。「エコノミスト」誌は、このシステムの成功について次のように報じている。

 「今回の成功により、米軍は、軍艦から巡航ミサイルに至るまで、すべてにこの全地球位置把握システムを(大急ぎで装備した)。このテクノロジーは、平和時にも、戦争時と同様に、あるいはそれ以上に応用できるかもしれない。」

 

「道に迷う」は昔の話?

 今まで説明してきたことの多くは、読者の皆さんの生活に即座に影響を与えることはないかもしれない。だからといって、心配は無用だろうか?

 世界人口の大部分がまもなく、これらのシステムのどれかにかかわるのは間違いない。中でも、最も人々の興味を集め、早い時期に世界中で普及する可能性があるのが、「スマート」トラベルシステムであろう。

 方角を暗記したり、紙きれに道順を書く必要もなくなる。(道に迷ったのに、お父さんが頑固に道を聞こうとしないために)家族で言い争いになり、せっかくの休暇が台無しになるというケースも、カーナビを搭載した車には、昔話でしかなくなる。

 このシステムは、数年の内に世界中で実用化されるだろう。この「スマートカー」は、マイクロコンピューターと、ダッシュボードの上に、車の位置ばかりか、地域のアトラクション情報、ホテル、レストラン、特別なイベントを映し出すカラーモニターを備えている。この車の乗り心地を、あるレポーターは次のように報告している。

 「まるで『宇宙家族』(昔のテレビ漫画)の一場面を見ているかのようです。オールズモビル・トロネード(高級大型タイプスポーツ車)に乗車し、目的地を車のコンピューターにセットします。

 発車してしばらくすると、『左に曲がって、ランダーソン通りに入ります』とコンピューターが指示します。運転手が車の指示に従っている限り、道に迷うことはありません。コンピューターが、道順を決めているのです。」

 興味深いことに、これは始まりに過ぎない。都市圏での交通の流れを改善するシステムや、ややもすれば長い車の列ができてしまう高速道路の料金所で速度を落とすことなしに(ましてや一時停止などとんでもない)料金を徴収するシステムが開発されている。

 時速160キロで通過する物体のマイクロチップに記録されたデータを読み取れるスキャナー・システムは、すでに存在する。チップを取り付けた車が料金所を通るたびに、スキャナーがチップから読み取り、自動的に車の持ち主の口座から料金が差し引かれるのだ。このようなシステムは料金徴収のスピード化につながるだけでなく、コストと大気汚染を削減し、(高速道路での一時停止の回数を減らし、ドライバーが車を進めながら小銭を探す危険を減らすことによって)安全性も高めることになる。さらに、料金所の業務も合理化される。

 

「ほら、先週のスピード違反がばれてるよ!」

 このシステムは、公の歳入を増やすというメリットもある。スキャナーで車のスピードを読み取るなら、スピード違反の摘発に大いに活用でき、罰金も容易に徴収できるようになる。すでに北アメリカでは、広範囲に渡って実験的にスキャナーが設置され、違反者は反則キップを郵便で受け取る。すでにヨーロッパの多くの国々が、これを本格的に導入している。

 さらに、ポケットからカードを取り出さずに、スマートカードに組み込まれたマイクロチップを感知するシステムの実験も数多くなされている。無線周波数でカードの内容を読み取るのだ。セキュリティーチェックポイントにある装置が、次々と入ってくる人の身元確認をし、入所を記録する。本人が気づきもしないうちに。

 将来、チップ移植時代になれば、チップをフロントガラスに貼り付ける必要もないだろう。高速道路の料金所を通過するだけで、体に埋め込まれたマイクロチップが瞬時に読み取られる。これなら、車に何か取り付ける必要はもうない。

 これで、交通渋滞は解消され、料金所でも車はスイスイと通れるだろうが、隠れた弊害もある。政府は、いつでもあなたの居どころを正確に把捉できるのだ。独裁政権なら、国民の統制のために使われることは確実だ。聖書預言の見地からすれば、今、アンチキリスト体制がその姿を現わしつつあるのは間違いない。

 

あなたの牛も監視されています

 また、とても興味深い話を紹介しよう。土地が夜逃げするはずもないだろうが、EC(ヨーロッパ共同体)は農地に厳しい監視の目を光らせている。空から見下ろしているECのスパイについて、「ヨーロピアン」紙は以下のように伝えている。

 「不正行為との戦いが激化し、ECは、ヨーロッパの900万の農民を監視するため、スパイ衛星を打ち上げた。これで、全12ヵ国の内、2ヵ国を除くすべてのEC諸国で、農民による、ECからの助成金の不正取得を極めて正確に摘発できる。」

 「この監視衛星によって、ついに、事実上全ての農場を監視できるようになった。従来の、農務省による面倒な抜き打ち検査に取って代わる有力な手段である。」

 「まず、専門委員会がスパイ衛星の収集したデータを調査し、秋の収穫時に一斉に行われる不正取得者摘発キャンペーンに備えて、各国の捜査機関に情報を送る。」

 「ECの専門家グループの第一任務は、全ての農家を番号制にして、各農家の農業生産物の種類を見極めることである。そして、衛星からの綿密なデータをもとに、実際の農地が申請内容と一致しているかどうかが明らかになる。」

 「EC委員会はこのプロジェクトに意欲満々である。すでに、農家毎の作物種類などの記録を一括管理する事業に1億1500万エキュー(ECU)投資している。それは、現代版『ドゥームズデーブック』〔訳注:ウィリアム一世が1086年に作らせた土地台帳〕とも言え、ヨーロッパの全農場と全家畜の基本台帳となるであろう。監視衛星と家畜に埋め込まれたチップによって管理されるようになる。」

 不正防止とは言え、家畜まで一匹残らず登録させようとするのは、いささか奇妙である。が、すべての商業行為や売買が完全にアンチキリストの管理下におくためには、物々交換も例外にはできないことを考えると、納得がゆく。野菜と牛の物々交換は、たとえ電子マネー取り引きは免れても、家畜とキャベツの数まで正確に探知している「空のスパイ」の目をごまかすことはできない。

 

−−パート4へ続く−−